2006年01月04日

<新属の魚>カンボジアの湖で捕獲、市場で発見

 カンボジアにある巨大な淡水湖「トンレサップ湖」に、スズキ目ネズッポ科の新属の魚が生息していることを、鹿児島大総合研究博物館の本村浩之助教授らの研究グループが発見した。日本では「メゴチ」などと総称される魚の一種で地元の市場で売られていた。生物の分類上、「種」の一つ上の「属」にあたる生物の発見は珍しく、3月発行のドイツの魚類専門誌に発表される。

 本村助教授によると、この魚は昨年5月、トンレサップ湖に近いシエムレアプ市の市場で見つかった。トンレサップ湖北部で捕獲されたもので、体長は2.5〜3.4センチ。顔のとげなどからネズッポ科ではあるものの、(1)背びれ、尻びれが退化している(2)頭部の感覚器の位置などが、これまで発見された魚のものと異なる(3)えらぶたの形状が特異――などの特徴から、新属の魚と分類したという。
 この魚は、こうした特徴からほとんど泳がず、湖底の泥の中で生息していると推定される。また、現在、トンレサップ湖とつながっているメコン川ではこの魚は確認されていない。本村助教授は「生物が新たな属として、分化するには数万年かかる。そのため、湖が出来た5500年前にメコン川から流れてきたものが生き残ったことも考えられる」としている。
 日本魚類学会副会長で、東京大海洋研究所の西田睦教授(魚類進化学)は「未確認のものが多い魚類でも、新しい属が見つかるのは世界的にも年間一けた程度。淡水に住んでいるというのも興味深い」と話している。【佐藤岳幸】
 ■ことば(トンレサップ湖) カンボジア西部にある淡水湖。約5500年前、海面の上昇により、メコン川の水が低地に流れ込んでできたとされる。乾期には3000平方キロメートル程度の大きさだが、雨期になりメコン川の水位が上昇すると、その水が逆流し、急速に拡大。最大で約1万5000平方キロメートルと琵琶湖の20倍以上にもなる。淡水魚の種類も豊富で、140種類以上が生息している。
(毎日新聞)

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Posted by jun at 2006年01月04日 17:47 in 魚&水棲生物

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