水産物の偽装が横行、安全性にも問題あり、新たな報告書
レストランでスズキを注文すれば、スズキが食べられると誰もが思うだろう。しかし、何か別のものが出てくる可能性が意外と高いことが、新たな報告書で示唆された。
3月7日、水産物の不正表示を近年調査している海洋保護の非営利団体「オセアナ(Oceana)」は、米国における水産物の偽装に関する新たな報告書を公開した。
調査した449匹の魚のうち不正表示されていたものは、なんと20パーセントにものぼった。いくつか例を挙げれば、シーバスを注文すると、輸入魚であるバラマンディやティラピア、メロが出てくることや、アラスカ産のオヒョウの代わりにカラスガレイ、フロリダ産のスナッパー(フエダイの仲間)の代わりにヒメダイが提供されることがよくあるという。
オセアナは、2016年にも水産物の偽装が世界的にまん延しているという報告書を公開し、話題になった。その後、米海洋大気局(NOAA)は水産物輸入監視制度(SIMP)を立ち上げ、不正に販売されたり、違法に調達されたりする危険性が高いと考えられる13種の追跡を行っている。
今回の調査では、SIMPで監視している13種は除外された。
「偽装の危険が高いとされる種以外でも、その可能性があることを強調したかったのです」と報告書の著者の1人、オセアナの上級研究員キンバリー・ワーナー氏は話す。
この問題がどれほど広範囲に及んでいるかの概要をつかむため、24の異なる州とワシントンD.C.で魚の調査を実施。レストランや水産物市場、大型食料品店の魚のDNAを研究所で分析した。
その結果、シーバスとスナッパーの不正表示がそれぞれ55パーセントと42パーセントで、最も多かった(米国食品医薬品局(FDA)は、シーバスを20種以上、スナッパーを50種以上の魚の総称としているにもかかわらず)。また、レストランで注文した魚の方が、市場や食料品店で購入した魚よりも偽装される可能性が高いことが明らかになった。さらに、より安価な輸入品を地元で獲れた魚として販売したり、養殖の魚を天然ものとして市場に出したりするなど、偽装の手口も判明した。
「今回わかったのは、まだまだ問題があるということです」とワーナー氏は言う。「魚介類を食べる人すべてが懸念すべきことです」
偽名の陰に潜む諸問題
オセアナが2013年に実施した、より多くの種に対する調査では、不正表示の割合は33%と今回より高かった。オセアナは、不正表示を調べている多くの組織の中の1つに過ぎない。
また、2018年12月、ニューヨーク州司法長官は、ニューヨークのスーパーマーケットにおける偽装率が、「不安になる」ほど高いという報告書を発表した。調査した魚の4分の1で、不正表示が見つかったのである。より安く、あまり好まれない魚が、より人気のある魚の名前で売られている場合が多かった。特に懸念すべきは、一部の代用魚には比較的高濃度の水銀が含まれていたり、持続可能性の低い漁法で捕まえたものだったりしたという調査結果だ。
2018年9月、バージニア州のカニ販売業者は、外国産のカニを大西洋産のワタリガニ(アオガニ)と偽って売ろうとしたという罪を認めた。地元の報道によれば、ハリス・ティーターなどの大型食品スーパーマーケットで、不正に販売されたカニの身は180トンを超えるという。
2017年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者が学術誌「Conservation Biology」に発表した論文では、ロサンゼルスのレストランで出された寿司ネタの約半分が、実際には違う魚だったと明らかになった。
近年、海洋生態学者のエリン・スペンサー氏は、ナショナル ジオグラフィック協会の助成を受け、レッドスナッパーの不正表示が、米国南東部の州でどれほど広がっているかを調査した。ノースカロライナ州からフロリダ州までの水産物市場、食料品店、寿司屋で販売されたものを調べた結果、大半の表示が正しくないことがわかった。その一部は、混同や誤解が原因なのかもしれないと同氏は指摘する。
「例えば、米国食品医薬品局(FDA)の規定では、『レッドスナッパー』と呼べるのはフエダイの1種(Lutjanus campechanus)だけですが、赤いフエダイは他にもたくさんいます」と同氏は話す。さらに、フエダイ以外でも、特に調理した場合には、似たような種は多いという。
また同氏は、レッドスナッパーが、商業的に販売されているほか、趣味の釣りの対象でもあり、誰もが欲しがる種になっていることにも注目している。同氏はオセアナの調査には関わっていないが、その調査結果は自身の調査結果と一致していると言う。
より価値の低いもので代用
どんな魚が食卓に上っているのかわからないということは、健康上のリスクになるかもしれない、とワーナー氏は述べる。
例えば、アジアで養殖されたナマズは、化学物質や取り扱いに関して、米国産ナマズと同レベルの規制がかけられているわけではない。
「健康上の未知のリスクにさらされているのです」と同氏は付け加える。
米国で消費される水産物の90%超は輸入されている。水産物が偽装されていると、地元の漁師を支えようとして、実は外国から輸入した魚を消費している場合もある。例えば、五大湖でよく獲れる魚であるウォールアイの代わりに、ヨーロッパやアジアで一般的に見られるパイクパーチを消費者に提供していたケースもあったことが調査で明らかになった。
「持続可能な水産物を求める大きな動きがあります。消費者として、十分な情報を得た上で判断しようとしているのです」とスペンサー氏は話す。「しかし、魚が表示どおりのものでなければ、うまくいきようがありません」
魚の不正表示の理由を定量化するのは難しい、とワーナー氏は指摘する。表示に関する法令の混同、地方名の使用、魚の誤認などがすべて不正表示の原因となり得る。
「ただし、ほとんどの場合は、より価値の低いもので代用しているのです。調査で何件も何件も見つかりました」と同氏は話す。
地元の旬の魚を学ぼう
米国のSIMPによる追跡は、国境で終わる。つまり、一度米国内に輸入されてしまえば、ほとんど監視されない。不正表示は、サプライチェーンの至る所で行われているが、どこで行われているかを正確に突き止めるための情報は、まだ調査中だとワーナー氏は言う。
今回の報告書で、オセアナはこう提言している。「国産品も輸入品も、すべての水産物を漁船や養殖場から食卓まで追跡しなければならない」
かつて、ヨーロッパでは、全水産物の3分の1近くで不正表示が行われていた。しかし、表示に関する法令を厳格化したことや、消費者の意識が高まったことにより、不正率はわずか4%にまで低下した。米国の多くの団体や企業が、サプライチェーンの端から端までを追跡する同様のシステムを構築しようとしている。
スペンサー氏は、不正表示された魚介類を食べたくない消費者に対して、魚の産地についてもっと学ぶことを推奨している。「時間をかけて、地元の旬の魚を学ぶことです」
文=SARAH GIBBENS/訳=牧野建志
+Yahoo!ニュース-雑誌-ナショナル ジオグラフィック日本版
Posted by jun at 2019年03月14日 08:56 in その他のニュース, 魚&水棲生物