例年以上に寒かった冬が終わり、4月に入って春らしい陽気が続いている。茨城県大子町では3日、関東地方で今年初めてとなる25度以上の夏日を記録。春を飛び越え、一気に初夏のような一日となった。
厳しい冬の終わりを喜んでいるのは、昨年、日本中を騒がせたあの生き物も同じだろう。南米原産で、強い毒を持つ「ヒアリ」だ。6月に兵庫県尼崎市で日本国内で初めて存在が確認されると、またたく間に愛知、大阪、東京などで発見が相次いだ。
ヒアリは、刺されると火傷のような強烈な痛みがあることから、英語名で「fire ant」、漢字で「火蟻」と名付けられた。刺されたことで人間が死ぬことはまれだが、攻撃的な習性から、発見当初はメディアでは「殺人アリ」とも呼ばれた。
これまでに数千匹のヒアリが見つかっている。ただ、ヒアリは寒さに弱いため、昨年11月22日を最後に日本国内では確認されていない。また、発見されたのも輸送船が運んだコンテナの中や港近くの地面だけで、すべて駆除された。いわゆる「水際作戦」が成功し、ヒアリの日本定着は寸前のところで防がれた形だ。
では、ヒアリは日本国内から完全に消えたのかというと、決してそうではない。環境省の外来生物対策室の担当者はこう話す。
「昨年12月以降は国内でヒアリの存在は確認されていませんが、冬は活動量が少なくなるので見つかっていないだけで、国内で生き延びた可能性も否定できません。また、夏が近づいてきたことで、今年も海外から日本に上陸する可能性は高い。そのことを前提に対策をしています」
ヒアリ騒動はまだ収束していなかった。それもそのはず、昨年日本で発見されたヒアリは、すべて中国の船に載せられたコンテナに潜み、上陸したと考えられているからだ。中国南部では、すでにヒアリが定着している。環境省も、再度の侵入を警戒し、中国との定期的なコンテナ航路がある68の港湾すべてで、現在もモニタリング調査を続けている。
厳戒態勢を続けるのは、ヒアリが人間に危害を与えるだけではなく、社会的なインフラへのダメージも懸念されているからだ。ヒアリは、公園や河川敷にアリ塚をつくるため、巣が発見されるとその場所は使用禁止にせざるをえない。夏場だと、花火大会や夏祭りが開かれる場所でアリ塚が発見されると、開催中止に追い込まるだろう。また、ヒアリは通信ケーブルや電気設備を破壊する習性があり、全米で700億円以上の被害があるという。
生殖能力の高さも警戒されている。ヒアリの女王アリは、1日で2千個の卵を産む能力がある。さらに、巣(コロニー)が成熟すると、次の生息地域を求めて生殖能力のある女王アリとオスアリが、羽を使って一緒に飛び立つ「結婚飛行」をする。移動範囲は2キロ程度とされるが、風に乗ってもっと遠くに移動することもある。攻撃力が強いので、日本の在来種が駆逐される危険もある。
一方、市街地や住宅地で見つかっていないことは、不幸中の幸いだった。
「昨年、ヒアリについての問い合わせは電話で数千件ありましたが、実際に確認されたのは1件で、それもやはり輸入コンテナの中で発見されたものでした。現在の段階では、港湾エリア以外でヒアリを必要以上に恐れることはありません」(同)
もちろん、冬を生き延びたヒアリが、夏が近づくにつれ出現する可能性もある。
「日本では、関東から西の地方だと、ヒアリが定着できる可能性があると言われています。特に、都会だと自動販売機の中のような暖かい場所もあり、そういった場所だと冬を越せるかもしれません。ヒアリは赤茶色なので、黒いアリは無視して大丈夫ですが、赤茶色の怪しいアリがいた場合は、殺虫スプレーなどで対処してください」(同)
環境省では、ヒアリ相談ダイヤル(0570-046-110)を設けている。万が一、ヒアリのようなアリを見つけたら連絡を。特に、アリ塚状の巣を発見した場合は、自分自身で対処せず、すぐに専門機関に相談してほしい。(AERA dot.編集部・西岡千史)
Posted by jun at 2018年04月04日 12:02 in 外来生物問題