大阪を流れる淀川に生息し天然記念物に指定されている魚「イタセンパラ」。国内では淀川を含む3つのエリアで生息しているが、淀川は外来魚の影響などで野生絶滅に近い状態まで追い込まれた。そんな中、大阪府寝屋川市の府立環境農林水産総合研究所水生生物センターが保存していたイタセンパラを放流したところ、新たな子孫の繁殖が確認されている。そのセンターでこのほど、イタセンパラとふれあう体験教室が開かれ、子どもたちが生態や環境保全の大切さなどを学んだ。多くのイタセンパラが優雅に泳ぎ回る貴重な動画とともにリポートする。
淀川のシンボルフィッシュを守る
イタセンパラはコイ科タナゴ亜科に属する淡水魚で、琵琶湖・淀川水系、濃尾平野、富山平野の3エリアでしか生息していない。1974年天然記念物、95年国内希少野生動植物種に指定。府内では淀川のワンドに生息し、かれんな姿などから「淀川のシンボルフィッシュ」と呼ばれて親しまれてきた。
しかし、城北ワンドでは近年、イタセンパラの稚魚をえさにする外来魚の影響などで、野生絶滅に近い状態まで追い込まれた。そこで、同センターが保存していたイタセンパラを放流したところ、新たな子孫の繁殖が確認され、野生復帰をはたしている。
同センターは水辺の生物多様性を守る調査研究の一環として、センター内に人工的なビオトープ池を設置。イタセンパラをはじめとする淀川水系に生息する水生生物の保存繁殖に取り組む。体験教室では研究員による屋内水槽展示室での解説のほか、子どもたちがビオトープ池に入って、水の中の生きもの採集調査に挑戦した。
繁殖期を迎えオスはスミレ色の婚姻色
「イタセンパラ、おった!」――池のあちこちで、泥んこになった子どもたちの歓声が響く。駆け寄った研究員とともに網の中を探ると、元気にとびはねるイタセンパラが姿を現す。中には一度に数匹のイタセンパラを採集する子どももいる。
城北ワンドでイタセンパラを守る市民活動に、親子で参加しているという小6男児は、イタセンパラのファン。「イタセンパラは障害物に寄り添って隠れているから、障害物に沿って網を当てるとたくさん採れる」と教えてくれた。
子どもたちが捕まえたイタセンパラは、次々と水辺の水槽に集められる。天然記念物が大量に泳ぎ回る光景は壮観だ。池の中で保存繁殖されているイタセンパラを、まとめて間近に観察できる機会はきわめて珍しい。
秋はイタセンパラの繁殖期で、オスは体をスミレ色の婚姻色に染めてメスを引き寄せる。淡いスミレ色のオスと、卵を抱えて少し丸みのある銀色のメス。好対照が美しい。
多様な生物がいる身近な水辺に目を向けて
池の周囲には緑が広がり、ビオトープになっているため、さまざまな生きものたちが共生している。子どもたちが力を合わせて地引網を体験した後、イタセンパラを含めて、この日採集された魚や昆虫などをすべて並べて展示し、野外学習会が開かれた。
研究員がそれぞれの生物の生態などを紹介。「貴重なイタセンパラを守っていくためにも、いろいろな生きものたちが暮らしている身近な水辺に目を向けてください」と呼びかけた。
帰り際、小5男児は「イタセンパラやメダカがたくさん採れて楽しかった」と笑顔を浮かべる。40代の父親は「50年先、100年先まで、イタセンパラが生息できる環境を守っていかなければいけませんね」と表情を引き締めていた。
詳しくは大阪府立環境農林水産総合研究所水生生物センターの公式サイトで。
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)