ハワイ州カウアイ島のコブクビスッポンは在来種ではない。ならば、駆除すべきなのだろうか。
コブクビスッポンは1850年代以降、中国から移入された。スープの材料としてサトウキビ農家が持ち込んだのだ。現在、このスッポンは中国では絶滅の危険があり、カウアイ島では侵略的、すなわち望ましくない影響を及ぼす非在来種と考えられている。しかし、保護論者は元の生息地では狩猟に遭う危険が大きいと考えており、捕獲して中国に返すのはほとんど意味がない。
これは頭の痛い問題だ。在来種の魚を食べてしまう可能性のあるコブクビスッポンをカウアイ島から駆除し、固有の生態系を守るべきなのか。その場合、コブクビスッポンは絶滅の危険にさらされる。ならば、ハワイで彼らを生かしておくべきなのだろうか。
世界の変化がますます速くなる中、この種の複雑な問題が生態系のあちこちで見られるようになっている。それを受けて現れているのが、侵略的外来種を必ずしも条件反射的に敵視しない新たな考え方だ。モンタナ州ミズーラで16日まで開かれていた北米保全生物学会(North America Congress for Conservation Biology)のシンポジウムでも、その傾向が見て取れた。筆者はジャーナリストとして参加したが、中立のオブザーバーではない。私はこれまで、私たちを取り巻く外来種の動植物に対し、もっと柔軟なアプローチをする時が来ていると主張してきた。
◆あふれる外来種
気候変動により、誰が侵略者なのかという判断すら難しくなっている。
シンポジウムに出席していた研究者たちは自問していた。地球温暖化が進み、動植物は生存可能な気候条件を求めて、高緯度の地や標高の高い場所へ既に移動している時代に、「在来」をどう定義すればよいのか。新たな生息地に落ち着いた動植物を「侵略的」と見なすべきなのか。名称が何であれ、保護論者たちはこうした外来種を移入先の環境から排除しようとはしないだろう。もし排除すれば、我々が実現しつつある将来の温暖な気候に動植物が適応する機会を妨害することになる。
その上、むしろ人間に好かれている外来種もいる。人間が作る作物は大抵の場合その土地にとって外来種だが、野生の外来種でも有益な関係を在来種との間に築き、「良いことをしている」ものさえある。
カリフォルニア大学デービス校のエドウィン・グロスホルツ(Edwin Grosholz)氏は前記のシンポジウムで、そうした関係の一例を挙げた。カリフォルニア州の浜辺には、絶滅の危機に瀕するカリフォルニア・クラッパー・レイル(学名Rallus longirostris obsoletus)というオニクイナの亜種が生息している。ふっくらとした海辺の鳥で、下向きの曲がったくちばしを持ち、空中より地上で過ごすことが多い。外来種であるイネ科の多年草、スパルティナの繁茂地が彼らにとって重要な生息場所となっている。スパルティナは密集して群落を作り、他の海辺の鳥がすめなくなるため、刈り取ったり薬で枯らしたりする対策が取られたが、それによってクラッパー・レイルの数が急減したという。
最も奇妙なのは、コブクビスッポンのように侵略的外来種自身が絶滅の危機にあるという不可解なケースだ。ロードアイランド州プロビデンス、ブラウン大学の生態学者でシンポジウムの共催者でもあるダブ・サックス(Dov Sax)氏は、新たな場所に導入された哺乳類のうち15%、鳥類の10%が元の生息地で脅威にさらされていると報告した。
◆「在来」は絶対的な価値ではない
このように見てくると、在来というのは環境に関する一つの価値でしかなく、絶滅の防止や生物多様性の保全ほど重要ではないと言える。私たちは外来種を放っておいたり、あるいは(覚悟のいることだが)外来種を意図的に導入したりすることで、最も効果的に生物多様性を維持できる場合もあるのだ。
これまでのところ、まだ多くのケースで「種の保全」は元々の生息地での繁殖を助け、在来種を植えて外来種を駆除することを意味している。そのような対策が現実に可能かつ重要であれば実行してもよいし、やるべきだ。
しかし、今以上に複雑で困難な事例がこれから出てくるだろう。気候が変わり、人間が移動させた種は新たな地に定着している。そんな中、私たちは絶滅が危惧される種と、生態系の歴史的継続性にとって何が必要かを考え、両者の中間に解決策を探らねばならない事態がますます増えると予想される。
Emma Marris in Missoula, Montana for National Geographic News
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Posted by jun at 2014年07月30日 13:45 in 外来生物問題, 自然環境関連