日本を代表する山岳観光地の北アルプス・上高地のあるべき姿を描くとともに、課題解決の方向性や行動計画を盛り込んだ「上高地ビジョン」案がまとまった。国の各機関、県、松本市、地元町会や旅館組合、山小屋団体など約30の関係団体でつくる「中部山岳国立公園上高地連絡協議会」が2年がかりでまとめ、2月24日に松本市内で開いた5回目の会合で了承した。事務局の環境省長野自然環境事務所は「上高地に関係するあらゆる団体が主体となって取り組む協働型管理運営のプログラムを定めた画期的な内容だ」としている。
◆共通の目標
3千メートル級の穂高連峰と梓川が美しい山岳景観を紡ぎ出す上高地には、年間130万人から150万人の観光客・登山客が訪れるが、一方で上流からの土砂堆積による河床上昇、サルなど野生動物の人慣れ、外来植物の侵入、交通渋滞、山岳遭難の増加など課題も多く抱えている。
ビジョン案は、これらの課題解決に向けて50〜100年先の目指すべき姿を基本戦略に定め、自然景観や生物多様性の保全による「世界に誇る山岳公園としての価値の継承」や、滞在・体験型利用など多様な受け入れ環境の整備による「品格のある、災害に強い山岳公園づくり」、関係するあらゆる団体が担い手となる「地域が一丸となった協働型管理体制の構築」の3つの基本的視点から共通の目標を描いた。
おおむね10年以内に重点的に取り組む目標として基本方針を定める一方、重点プログラムとして、梓川河床上昇対策▽野生動物対策▽登山道維持整備▽山岳トイレ整備・維持管理▽交通アクセスの改善▽冬季利用の適正化▽外国人旅行者の受け入れ環境整備−など20項目を設定。これをもとにおおむね5年以内に各団体が取り組む行動計画をまとめ、具体的な施策に取り組むことなどを盛り込んだ。
◆ゾーニング概念
また、上高地の管理運営にあたっては、雄大な自然を観賞して楽しむ「散策エリア」(田代橋−ビジターセンター、穂高橋−河童橋)、自然を探勝ながら接する「自然探勝エリア」(大正池−田代橋、小梨平−明神、河童橋−明神池)、山麓を歩きながら自然を体験する「トレッキングエリア」(明神−徳沢−横尾)、登山で原生的な自然を体験する「登山エリア」(山岳地帯)の4つのエリアを定めたゾーニングの概念を導入。登山ブームの中で安全な利用を促すとともに、関係団体がそれぞれのエリアの利用形態や利用者特性に応じた管理運営を行うために活用していく。
■協働型管理運営
ビジョン案は平成24年3月から策定作業に入り、実施主体となる関係機関の役割や目指すべき姿などについて議論してきた。環境省長野自然環境事務所によると、全国の国立公園でこうした総合的な協働型管理運営プログラムがあるのは尾瀬国立公園だけという。
とりまとめに当たった東京農工大大学院の亀山章名誉教授は「長期的な視野に立ち、利害が異なるこれだけの関係機関全てが一緒になって上高地のあるべき姿を真剣に考え、課題解決への道筋を共有し、行動していくための役割分担を決めた意義は大きい。日本の貴重な財産を守っていこうという思いが一つになった」とその意義を強調する。
ビジョン案がまとまったことを受け、協議会はパブリックコメントを経て、5月か6月中の決定を目指している。パブリックコメントは、3月中にも環境省長野自然環境事務所のホームページから募集を開始する。
Posted by jun at 2014年03月03日 15:13 in 外来生物問題, 自然環境関連