2013年12月19日

ロシアからアメリカに進撃した“史上最強”の転がる雑草

 西部劇などで、無人の路上や空き地を、一陣の風とともにコロコロと転がっていく枯れ草を目にしたことがあるだろうか。タンブルウィード、すなわち「回転草」と呼ばれるこの雑草は、米国の西部ではよく目にする植物だ。

 分類上はオカヒジキ属の一種で、ハリヒジキとも呼ばれる。食用の、緑色でシャキシャキした食感の「オカヒジキ」とは近縁だ。もともとはユーラシア大陸の植物で、ウラル山脈の東に広がる草原地帯に生えていた。

転がりながら25万個の種をまき散らす

 だが、外来種としてよその土地にいったん持ち込まれると、この草は驚異的な繁殖力を示し、分布域を広げていった。冬が来て枯れると茎がもろくなり、風のひと吹きで根元から折れる。あとは風に吹かれて転がり続けるうちに、トゲだらけの茶色い塊と化し、時に民家を埋もれさせ、牧場では激しい火災の元になる。文字通りの厄介者だ。
 小型車ほどの大きな塊になるものもあり、何キロも移動する間に最大25万個もの種を至るところにまき散らす。その種は、次の侵略に向けて地中で待機するのだ。

 この雑草には葉らしきものが見当たらないが、実際には苞(ほう)と呼ばれる小さなとがったうろこ状の葉をつけている。そして、苞と茎の間のくぼみの中に咲く、やっと見えるくらいに小さい花が、種を実らせる。
 一つひとつの種の内部には、らせん状の胚が潜み、昼間の気温が0℃を超えればすぐに発芽しようと準備している。周囲にごくわずかでも水分があれば、回転草は成長を始め、最大で地下2メートルの深さまで根を張る。

 晩秋になると、十分に成長した回転草は大量の種をつける。そこへ晩秋の西部に特有の強風が吹きつけると、回転草は根元から折れ、地面を転げ回って種をまき散らす。豊かな土壌でもやせた土地でも、湿った場所でも乾燥地でも、粘土質でも砂地でも、土壌がアルカリ性でも酸性でも、この雑草はチャンスを逃さない。すきやシャベル、牛のひづめで地面が耕され、緩んでさえいれば回転草は発芽する。

 その広がりを食い止めようと、米農務省の科学者はロシアやウズベキスタン、トルコの研究者の協力を得て、ダニ、ゾウムシ、ガ、菌類など、もともとの生息地で回転草を食べていた生物を使った実験を何年も続けている。天敵を活用したこのような「生物的防除」の仕組みを導入すれば、「広い地域でこの雑草の数を無害なレベルにまで減らす効果が期待できます」と、研究者の一人リンカーン・スミスは強調した。

 もっとも米政府はまだ、これらの天敵を野外に放つことは許可していない。このような政府の慎重な姿勢は、間違ってはいないだろう。
 ただ、もっと早く適切な手段を講じていれば、回転草の広がりを阻止できたのではないか、という思いはある。今のところ、連中の真の敵は私たち人間だけだ。

(ナショナル ジオグラフィック12月号特集「米国西部にはびこる厄介者 転がる雑草」より)

+Yahoo!ニュース-雑誌-ナショナル ジオグラフィック日本版

Posted by jun at 2013年12月19日 12:34 in 外来生物問題

mark-aa.jpg