県水産技術センター忍野支所で人工増殖によって育てられた「クニマス」が、かつては唯一の生息湖だった田沢湖がある秋田県仙北市に7日、里帰りとなった。仙北市では10日から特別企画展「クニマスと共に−過去から未来に−」開催を予定しており、クニマスの生体展示を通して田沢湖の歴史を再考し、湖の生物環境再生を目指すきっかけにする。
田沢湖に里帰りしたクニマスは同支所が富士河口湖町の西湖で採取した親魚から昨年1月採卵、授精作業を行い、その後孵化して体長約15センチに育った約700匹の中の10匹。
西湖では平成22年に京都大の中坊徹次教授らの研究でクニマスの生息が確認された。発電力増強を理由に強酸性水を流入したことで昭和15年、田沢湖で固有淡水魚だったクニマスは絶滅したが、種保存のため10年に西湖に10万粒の卵が移植され、自然繁殖を繰り返した。このため西湖から仙北市にクニマスが里帰りするのは78年ぶり。
仙北市で開かれる特別企画展は田沢湖畔の田沢湖ハーブガーデンハートハーブを会場に24日まで続けられ、生きたクニマスとともに西湖で採取したクニマス成魚の標本を公開する。クニマスの絶滅、発見、保全に関するパネルも展示し、開催期間中には中坊教授や大沼克彦県立大曲高教諭らの記念講演が予定される。
クニマスの生体を借り受けに同支所を訪れた仙北市企画政策課の高橋信次参事は「約70年ぶりの里帰りになる。早く田沢湖の人たちに見せたい。多くの人が見てくれるだろう。山梨県には感謝する。クニマス公開を通して田沢湖の歴史に関心を持ってもらえたらいい」と話し、クニマス公開で田沢湖の魚類生息環境を取り戻すきっかけづくりを目指す考えだ。
同支所では7日朝、研究員がクニマスを地下水で満たしたポリ袋に入れ、酸素を補充し発泡スチロールの箱に収め、水温上昇を避けるため保冷剤を入れるなど作業を手際よくこなした。クニマスは車で約9時間かけ仙北市に運ばれた。
Posted by jun at 2013年03月13日 17:47 in 魚&水棲生物