◇横浜、藤沢、相模原で採集
丹沢山系周辺に生息する希少種のチョウでタテハチョウ科のコムラサキがここ数年、横浜市や藤沢市、相模原市などの都市部で相次いで見つかっている。丹沢周辺でもほとんど見かけなくなったコムラサキが市街地まで生息域を広げたとは考えられず、人為的に放たれた可能性が大きいことを含め、専門家の間で論議を呼んでいる。【高橋和夫】
コムラサキは中型のチョウで、雄は前翅(ぜんし)と後翅(こうし)がともに光が当たると鮮やかな紫色に変わる。幼虫が柳の葉を食べることから、河川流域や森林の周縁域に生息する傾向にある。丹沢山系の山麓(さんろく)や相模川水系の津久井地域でしか生息が確認されず、県レッドデータブックで絶滅危惧種に指定された。
ところが、06年から横浜市や川崎市、藤沢市で発見されるようになった。11年には海老名市や相模原市の中心市街地でも見つかり、個体が採集された。これらの確認報告は神奈川昆虫談話会の「神奈川虫報」など、専門家や愛好家組織の会報に掲載されてきた。
首都圏の都市部ではここ数年、かつて暖帯域でしか見られなかった昆虫や、高原にいるはずの外来生物がはびこる生態系の異変が起きている。都市部で相次ぐコムラサキの発見例も、異変の一つとされてきた。
コムラサキの採集数がまだ少なく、進入経路や生息域の分布状況も解明されていない。専門家らの間では、飼育された後、人為的に放された可能性が大きいとの見方が有力とされている。ただ、確証はなく、「もともと生息していた地域で個体数が回復している可能性もあり得る」と指摘する愛好家もいる。
都市部での生態系の変化を追跡している相模原市の県立上溝南高校教頭、田口正男さんは10年6月と11年8、9月、中心市街地にある同市中央区の富士見公園で1匹を見つけ採集した。田口さんは「近年、都市空間に進出した昆虫として注目される。都市の自然界ではあり得ないことが多く起きており、生息状況と分布域を確認する必要がある」と話している。2月24日朝刊