「近畿の水がめ」として知られる琵琶湖。公害問題が深刻だった昭和40年代と比べれば、水質は格段に向上した。だが依然、赤潮やアオコが発生し、湖底にはヘドロが蓄積。さらに近年は微生物では分解できない「難分解性有機物」と呼ばれる謎の有機物が増加している。不安材料は多いが、一方で直径千分の1ミリ以下の極めて小さな気泡を発生させて水質浄化を図るユニークな実証実験も始まった。(本間英士)
水質悪化が社会問題化した40年代以降、滋賀県は微生物を使った高度下水処理施設を導入したため、普及率は全国1位の84・3%。このおかげで、琵琶湖では、肉眼で水面から見ることができる深さを示す「水の透明度」が大幅に向上した。54年度は琵琶湖大橋の北側部分の北湖で4・4メートル、南側部分の南湖で1・7メートルだったが、平成21年度にはそれぞれ6・1メートル、2・7メートルになり、透明度が増した。
滋賀県琵琶湖再生課の担当者は「水質の悪化で激減した名産のセタシジミが近年増えてきた」と話す。
ほかにも、水質改善を示すデータは多い。
植物プランクトンが引き起こす赤潮は、約30年前では年間延べ88水域で発生していたが、21年度では5水域で発生しただけだった。また工業・家庭排水の流入によって藻類が異常に増えるアオコも6年度は延べ57水域で発生したが、21年度は6水域にとどまった。
■主要有機物減少でも悪化
だが、別のことを意味する統計もある。
有機物による汚濁状況を示す代表的指標の一つ「化学的酸素要求量(COD)」は、数値が高いほど水質が悪い。昭和59年度の調査では南湖で1リットルあたり2・6ミリグラム、北湖で1・9ミリグラムだったが、平成21年度ではそれぞれ3・4ミリグラム、2・7ミリグラムと上昇。南湖では最悪の数値となった。
窒素やリンなどの主要有機物は減少しているのに、なぜ数値が悪化したのか。県が“犯人”とみているのが「難分解性有機物」と呼ばれる謎の有機物だ。微生物でも分解できず、最後の最後まで水の中に残る「異物」。対処法も分かっていない。
さらに過去に発生したアオコや赤潮の影響で、湖底に沈んだプランクトンの死骸は、ヘドロとして蓄積している。数値データはないが、膨大な量に達するとみられている。
■半永久的に作動する優れもの
こうした中、脚光を浴びるのが、直径千分の1ミリ以下の極めて小さな気泡「ナノバブル」を発生させる装置だ。
立命館大生命科学部の今中忠行教授(生物工学)らの研究チームが昨年12月に開発。湖底でナノバブルを発生させ、気泡に含まれる酸素を、ヘドロを分解する微生物に効率良く運び、成長を促進する。
装置は本体を水上に浮かべ、そこから回転翼がついた部分を水中に沈めてナノバブルを噴射。太陽光発電パネルとバッテリーが備え付けてあり、半永久的に作動するという優れものだ。
今中教授は昨年末から装置の実証実験を開始。県などと協力し、早ければ来年にも装置を琵琶湖上に浮かべる予定だ。今中教授は「琵琶湖は独自の生態系を持っている。次世代にきちんとした水を飲んでもらうためにも、水質改善は緊急の課題だ」と話している。
Posted by jun at 2011年01月30日 18:39 in 自然環境関連, 内水面行政関連