東京都と神奈川県の境を流れる多摩川で今年、アユの産卵数が激減している。川崎河川漁協が産卵場を確認したところ、昨年の10分の1以下だった。今年激増したブラックバスやカワウがアユを捕食していることが原因とみられる。かつては水質汚染がひどく、「死の川」とも呼ばれた多摩川だが、下水処理場の整備とともに水質が向上。国土交通省京浜河川事務所によると、今春のアユの遡上数は観測史上最高の約196万匹だっただけに、関係者のショックは大きい。(油原聡子)
「ここにもない…」
12月上旬。多摩川の浅瀬で、川崎河川漁協の山崎充哲(みつあき)さん(51)が川底の砂利を網ですくいあげた。じっくり観察したが、昨年は砂利にびっしり産み付けられていたアユの卵が見つからない。
山崎さんらは、アユの産卵期の10月中旬から12月上旬にかけてほぼ毎日、川崎市内の多摩川の産卵場3カ所を見回った。しかし、昨年は10センチ四方当たり600個あった卵が今年は50個もないという。
原因として考えられるのがブラックバス。外来魚が200種以上見つかり、「タマゾン川」と揶揄される多摩川だが、毎年台風や豪雨で外来種が流され、繁殖が抑えられていた。
しかし昨年は台風や豪雨が少なく、流されずに残ったブラックバスが繁殖し激増。昨年はあまり見かけなかったブラックバスの一種、コクチバスは4月〜10月に4370匹が駆除されたという。
ブラックバスは環境省の特定外来生物に指定されており、各地で在来種への被害が報告されている。多摩川で捕獲したコクチバス7匹の腹を割いて確認したところ、4匹からアユなどの在来種が見つかった。
これに追い打ちをかけるのがカワウだ。好物はアユで1日に500グラム捕食するとされる。多摩川が豊かな川に戻った結果、魚を狙うカワウも増加。多い時には2千羽以上が確認され、高圧線が埋め尽くされるほど。花火で追い払っても、すぐに戻ってくるという。
アユには母川回帰の習性がないといい、来年の遡上への影響は未知数だが、今年も外来種が流されるほどの台風や豪雨はなかった。川崎河川漁協の井口文夫組合長(78)は「来春、ブラックバスが繁殖する前に手を打たないと在来種が全滅するのではないか」と危惧している。
Posted by jun at 2010年12月12日 21:45 in 外来生物問題, 魚&水棲生物, 自然環境関連