◇毒針ないがチクリとかむ 子供や高齢者は注意 専門家、外来種増加の警告
南米原産の「アルゼンチンアリ」が国内で生息範囲を広げている。府内でも08年に初めて発見。毒はないものの、日本のアリを駆逐し、生態系を破壊する可能性もあるという。アルゼンチンアリに続き、別の有毒アリが上陸する恐れもあるといい、専門家は「ミリメートルの侵略者」を外来種増加の警告とみている。【広瀬登】
■伏見区で発見
「アルゼンチンアリではないか」
京都市衛生公害研究所(中京区)に害虫防除業者から相談があったのは同年12月だった。当初、「簡単には見つからないはず」と担当者は疑心暗鬼だったが、提出されたアリを図鑑や標本と比較しながら顕微鏡で観察すると、腹部や大あごの歯の特徴などから、アルゼンチンアリと判断された。
担当者が伏見区の宇治川近くの発見場所に赴くと、アルゼンチンアリは道路上の花壇のすき間を忙しそうに出入りしていた。近くにある公園のごみ箱の下にも巣が確認された。
アルゼンチンアリの「京都侵攻」が現実になった瞬間だった。
■冬でも活動
アルゼンチンアリは体長約2・5ミリ。淡い黒褐色で、ちょこまかとすばしこく歩く。アリといえば、イソップ童話の「アリとキリギリス」で知られるように、冬は活動が鈍り、冬眠するイメージがある。しかし、気温5〜35度で活動するアルゼンチンアリは、冬でもよく動きまわるのが特徴だ。
「冬の寒い時期に多くのアリが列をなして足早に歩いているようなら、アルゼンチンアリの可能性がある」。同研究所は、こう注意を呼びかける。
■広がる生息域
環境省などによると、国内でアルゼンチンアリが初めて発見されたのは93年、広島県廿日市市だった。その後、兵庫県で99年で見つかったのを皮切りに、山口県、愛知県、神奈川県、岐阜県、大阪府でも相次いで確認された。
広島市の広島港や神戸市のポートアイランド地区など海辺で見つかるケースが多い。海外から材木などとともに日本に到来し、人間や荷物、鉢植えなどに付着して、じわじわと生息範囲を広げているとみられる。同省は05年、被害を防止すべき特定外来生物に指定。06年には防除対象地域が広島、山口両県から全国に広げられた。
■生態系を破壊
同研究所によると、アルゼンチンアリに毒針はないが、人家に容易に侵入、食べ物にたかるだけでなく、人をチクリとかむ。肌の弱い子供や高齢者は注意が必要だ。廿日市市によると、就寝中に体をはいずり回り、睡眠不足になるケースもあったという。
また、ルリアリなど国内のアリを駆逐し、生態系を壊す可能性もあるとされる。「アルゼンチンアリが繁殖している所では、これまでいたアリを見なくなった」との声も。フランスの一地方では、従来のアリが一掃され、米カリフォルニア州では、27種いた在来種のうち16種が駆逐されたという。
■困難な駆除
アルゼンチンアリの巣には、複数の女王アリがすみ、卵を産むので繁殖能力が高い。このため、一匹一匹に殺虫剤はよく効くものの、すべてを駆除するのは難しい。同研究所は「アルゼンチンアリはすき間を好む。家の壁やブロック塀のすき間、鉢やプランターと地面の間など巣となる場所をなくしてほしい」と呼びかけている。
アリの生態に詳しい兵庫県立人と自然の博物館の橋本佳明主任研究員は「アルゼンチンアリの生息域はまだ限られており、今すぐ日本のアリがいなくなることはない。しかし、今後、毒を持つヒアリなどが日本に上陸する恐れもある。アルゼンチンアリを警告と受け止め、外来生物への問題意識を持ってもらいたい」と話している。1月10日朝刊