沖縄と奄美諸島にだけ分布するオキナワキノボリトカゲが、宮崎県日南市と鹿児島県指宿市で繁殖している。木材や観葉植物の搬出に紛れて広まり、九州でも温暖な地域で生き延びたとみられる。沖縄では生息数が減少し絶滅が危惧(きぐ)されているが、専門家は「九州在来トカゲ類の生態系に悪影響を及ぼす深刻な事態」と警鐘を鳴らす。
日本爬虫(はちゅう)両棲(りょうせい)類学会は8日の総会で、国や県に迅速で効果的な対応の実施や再発防止の徹底を求め要望書を決議した。
オキナワキノボリトカゲは、1980年代以降に個体数が減少し、レッドデータおきなわに記載された。環境省レッドリストでも絶滅の危険が増大している種(絶滅危惧2類)に分類される。爬虫類に詳しい兵庫県立大学の太田英利教授(生物地理学)によると、キノボリトカゲは地上と樹上で昆虫などの餌を探して食べる。そのため繁殖が拡大すれば、九州在来のトカゲ類が昆虫を食べられなくなり、在来の生態系に悪影響を及ぼす恐れがある。
太田教授は「木材や観葉植物に紛れて入り込み、暖流で暖かい日南市の海岸沿いや、温泉のわく指宿市で冬を越せたのではないか」と話し「今後温暖化が進めば、全国的な問題になる」と懸念した。
日南市は本年度中に生息調査や防除など対応策の提言を盛り込んだ報告書をまとめる予定。同市市民部協同課生活環境係の岡部憲治さんは「何十年も前から目撃情報はあった。夏場の調査では市内の山中を1時間歩くと数十匹は見る。100、200匹どころではない」と推測した。
05年施行の外来生物法は、マングースなど海外起源の外来種で生態系や人命に被害を及ぼす恐れのある生物を特定外来生物に指定し運搬規制や防除を行うが、キノボリトカゲは在来種で防除対象にならない。太田教授は「法律の欠陥だ。生態系は本土と琉球列島では異なり国外と同じ。『国内外来生物』に対応できていない」と指摘した。(慶田城七瀬)