2009年06月17日

よみがえれ、諏訪湖 漁獲再生に全力 長野

 漁獲量の激減に主力産品だったワカサギ卵の不調−。長野県の中心にある諏訪湖で今、漁業が崩壊しつつある。大きな赤字を抱えた地元の漁協では、民間企業の出身者を組合長にすえた。かつての湖水を取り戻し、釣り人を呼び込むため、新しいけど懐かしい湖の姿を取り戻す取り組みをスタートさせた。(高砂利章)

 昭和55年に215トンあったワカサギ漁獲量は13トン、61トンだったコイは1・7トン、13トンあったフナがゼロ。昭和45年には計60トン近くあったシジミなど貝類も今は漁獲量ゼロ−これが諏訪湖漁業の現状である。

 また、この6年で主力産品となっているワカサギ卵が出荷できないという異常事態が3回発生した。産卵のために流入河川を遡上(そじょう)するワカサギが激減したためだ。

 漁獲量激減やワカサギ採卵事業の不調で、諏訪湖漁協の財政状況は急速に悪化。5期連続の赤字が続き、昨年初めの決算期には累積赤字は約7600万円にまで膨らんだ。

 大きな改革がなければ黒字転換は不可能という判断から、「民間企業の感覚」を期待され組合長に就任したのが藤森貫治さん(64)。父親は諏訪湖で漁師をしていたが、本人は製薬会社の総務・管理部門で定年まで勤めた。

 新組合長は就任後間もなく、理事会の諮問機関として会計のプロなどを含む経営改革委員会を設置。その答申をもとに、職員削減などで経費削減を図る一方、湖産魚類の販売展開で増収につなげ、平成20年2月から21年1月までの第61期決算は、純利益550万円と6期ぶりの黒字決算とした。

 今期事業としては新たにワカサギを使った新商品開発、江戸時代は諏訪湖周辺で食べられていたフナずしの復活、地元ホテルとの連携で諏訪湖産魚類を使った料理コース展開などに取り組むが、このような漁協内の短期的な財政改善に加えて取り組みを深めているのが、諏訪湖を昔の姿に取り戻す再生事業だ。

 なぜ、漁獲高がここまで落ち込んだのか。水質が改善された今、漁協が注目するのは諏訪湖の底。“暴れ天竜”と呼ばれた天竜川の首根っこを押さえコントロールを容易にするため昭和63年に現在の形が完成した釜口水門(岡谷市)。漁協の分析では、現水門の稼働に伴い湖底付近で水の動きがなくなり、無酸素化。貝も虫も住まない“死の水底”と化しているという。

 諏訪湖漁協などは昨年末、上下2段ある水門ゲートのうち下段から放水すれば、湖底に流れが生まれ無酸素状態が改善されるとして、下段ゲートによる放水を要望したが、水門を管理する県建設事務所は「コンピューターでシミュレーションを行ったが、湖水の動きに大きな変化はない」と拒否。漁協では現在、パイプで湖底に空気を送るなど、別の方策も視野に入れて湖底の無酸素状態改善に取り組む。

 観光面での動きもある。これまで諏訪湖は、古くから続く伝統的漁業を営む漁師を守るため、釣り人のリール使用が原則禁止という全国的にまれな湖だった。湖にはルアー釣りのターゲットとして人気のブラックバスも数多く生息し漁協は駆除を行っているが、リールが使えないため若い釣り人の姿はほとんど見えなかった。

 しかし、地元釣り人からの要望を受けて現在、漁業とぶつからない場所を限定してリール釣りを解禁し、収入につなげる方策を漁協内で検討している。

 「治水と漁業、観光の3つのバランスが取れた湖」(吉澤忍・漁協代表幹事)−。諏訪湖が目指すその将来像は、国内の内水面すべてにとっても大きな示唆に富む。

 高度成長期以降、湖や河川ではダムや水門建設、護岸工事など治水面の事情や水力利用が優先された結果、サケやアユは川をのぼらなくなり、固有の魚類は激減、漁業は大きく衰退した。治水がある程度進んだ今もう一度、漁業が輝きを取り戻し、釣り人ら観光客を魅了する魚が住む水域を必要としているのは諏訪湖だけではないはずだ。

+Yahoo!ニュース-長野-産経新聞

Posted by jun at 2009年06月17日 13:04 in ブラックバス問題, 内水面行政関連

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