「淀川は川ではない。琵琶湖・淀川水系全体から見ると“水たまり”です」−。県琵琶湖環境科学研究センター(大津市)の西野麻知子・総合解析部門長が編著の「とりもどせ! 琵琶湖・淀川の原風景」(A5判300ページ)が出版された。西野さんは「琵琶湖の自然と生態系を守るには、琵琶湖と淀川水系を切り離しては不十分。水系全体を一体に考えなくてはいけない」と主張している。
「原風景」は4章構成。第1章は「生物多様性からみた琵琶湖・淀川水系」。歴史的な変遷を概観し、多くの在来生物が生存の基盤を失いつつある状況をみる。第2章「琵琶湖・淀川水系の植物」は、淀川水系のはんらん原に特有の貴重植物と分布の特性、ヨシの遺伝的多様性の現状と保全について紹介した。第3章「琵琶湖・淀川水系の魚貝類」は、この水系を特徴づける淡水魚の由来と現状について紹介し、今後の保全・回復の方向性についても述べた。
さらに、自然の営みを取り戻すには人間の側からの働き掛けが不可欠とし、第4章「とりもどせ! 琵琶湖・淀川の原風景」では、ヨシの保全、外来魚が侵入しにくい環境構造、琵琶湖と田んぼを結ぶ取り組みなど、市民や行政が進める自然再生の取り組みと課題を紹介した。
西野さんによると、琵琶湖・淀川水系の在来生物の豊かさを支えてきた要因の一つは、かつて琵琶湖・淀川水系に広がっていたはんらん原や低湿地。桂川、宇治川、木津川の3川が京都府南部で合流、淀川となる地点から大阪湾に注ぎ込む地点の標高差は10メートルしかなく、河川のはんらんが起こると一帯が湿原のようになったという。
西野さんは「100年前の明治時代には琵琶湖周辺には100ほどの内湖があり、下流にも(干拓された)巨椋池や湿地帯が広がっていた。だが、内湖などの干拓や湖岸改変、河川改修、ダム建設などによる地形改変に加え、水位操作で本来の生物多様性が脅かされている」と話す。
また、地形の変化が在来生物減少の大きな原因になっており、在来生物が多く残っている地域は地形の変化が少ないことも分かったという。「自然環境の保全・再生は、本来の自然(原風景)とは何かをあらためて問い直す作業でもある」としている。
2940円。問い合わせは彦根市鳥居本町のサンライズ出版=電0749(22)0627=へ。(増村光俊)