ナショナルトラスト運動の先駆けとなった和歌山県田辺市の天神崎で近年、外来種や南方系の生物が急増している。観察会で使う湿地にはオオアカウキクサの雑種やアメリカザリガニが侵入、磯際では南方系のカキやフジツボが数を増やしている。観察会の案内をしている「天神崎の自然を大切にする会」の関係者は、在来生物への影響や生態系の変化を心配している。
同会の弓場武夫理事(48)によると、オオアカウキクサの雑種は、2007年10月ごろには散在している程度だったが、1年後には湿地の水面を覆い尽くすほどになった。水鳥が運んできたと考えられ、在来種のオオアカウキクサより繁殖のスピードが速いという。弓場さんは「湿地は観察会の目玉だが、水面を覆うことで水中に光が入らず植物が減り、それを食べている生物も減る可能性がある」と話している。
植物に詳しい日高高校の理科教諭、土永知子さん(49)によると、オオアカウキクサの雑種は、肥料として改良されたものとみられ、外来種のアメリカオオアカウキクサに似ているという。
アメリカザリガニは、外来生物法で要注意外来生物に指定されており、天神崎の湿地では昨年初めて発見された。いまは幼体から成体までの個体が見つかっており、確実に繁殖しているという。アメリカザリガニは田辺市本宮町の「皆地いきものふれあいの里」の湿地でも繁殖しており、水生生物に影響を与えている。
磯際で増えているのは、南方系のミナミクロフジツボやオハグロガキなど。ミナミクロフジツボは琉球列島以南でよく見られ、天神崎では15年ほど前から増え始めた。約20年前と比べ、最も多い場所では密度が100倍以上になっているという。オハグロガキはここ5年ほどで増え、最も多い場所では、約10年前より約40倍に密度が高まっているという。天神崎の自然を大切にする会の米本憲市常務理事(52)は「以前と比べて水温が低い冬の日が少ないのか、個体が冬に死ななくなっている」と話している。
県水産試験場は、田辺市目良で水深3メートルほどの海底に水温計を設置している。1955年から64年までの10年間の年間平均水温は、18・9〜21・1度で推移していたが、96年以降の10年間は20〜22・4度と上昇している。