◇絶滅危惧種のホトケドジョウなど、生息地保全・復元に活路
農業用水路と田んぼの間に設ける小型の魚道が、小さな魚の遡上(そじょう)や降下に役立つことが、県水産技術センター内水面試験場(相模原市大島)の勝呂尚之・主任研究員らの研究で分かった。自然農法で冬場にも水をはる田んぼが徐々に増えつつある中、絶滅危(き)惧(ぐ)種のホトケドジョウやメダカなどの生息地保全・復元につながる成果。小魚が行き来できるこうした魚道が春にも、海老名市の水田に設置される見通しだ。
水田や水深の浅い用水路は水温が高く、プランクトンもわいて栄養が豊富。冬も水をたたえた以前の田んぼは、春には小魚の産卵場となっていた。だが、乾田化のほ場整備と農業用水路を3面コンクリート化する水路改修で、田んぼと用水路は稲作の端境期に遮断された。田んぼに水が引き込まれる春から夏にも、深く掘り下げた用水路との間には大きな段差があり、小魚やカワニナなど貝類は移動できなくなった。
メダカやタナゴ類などの生息地の復元には、小魚が用水路と田んぼを行き来する魚道が必要だ。勝呂主任研究員は厚手のベニヤ板を使い、幅30センチ、高さ20センチ、長さ150センチの「水田魚道」3種類を製作した。魚の生態を考慮して段差の高低や形状、水深を変えて砂やごみがたまらないように工夫。環境省レッドデータブックで絶滅危惧種のホトケドジョウに適した魚道を宇都宮大と共同研究してきた。
また独自に、試験場内の人工河川「生態試験池」に2種類の魚道を傾斜10度にして3カ所設置。同じく絶滅危惧種のナマズ科のギバチや国の天然記念物ミヤコタナゴやギンブナなど小魚の遡上状況を調べてきた。
これらの結果、ホトケドジョウは流速があまり強くなければ、比較的水深があり流量の多い「千鳥X型」と名付けた魚道の遡上率が高いことが判明。生態試験池の試験でも同型魚道の遡上率はかなり良いことが分かった。
ギバチなどの生息地復元には、多自然型に用水路を改修するなどの生息環境の改善が必要だが、勝呂主任研究員は「小型魚道が魚や貝類の移動に有効なことが実証された。今後はこの成果を実現できる場所の確保が課題」と話している。【高橋和夫、写真も】2月17日朝刊