2009年01月24日

外来魚再放流禁止問題ようやく解決 長野

 平成15年に当時の田中康夫知事が実施を“棚上げ”にした長野県内での外来魚再放流(リリース)禁止は、紆余(うよ)曲折の末ようやく解決した。公共水域でのリリースは禁止となったが、解除規定もあり、バス釣りが観光資源の野尻湖(信濃町)では禁止が解除される。5年間にわたって宙ぶらりんとなっていた問題解決に安堵(あんど)する関係者も多いが、一方で禁止による効果など本質的な部分にまで議論を深められることはなかった。(高砂利章)

 在来の生態系への影響が懸念されるブラックバスなど外来魚について、平成17年に制定された特定外来生物法で他水域への移植を禁じているが、その場で生きたまま水に返すリリースは禁じられていない。

 独自にリリースを禁止している都道府県も10数自治体ある。長野県でも15年4月に県内水面漁場管理委員会(漁場管)が禁止を指示したが、当時の田中知事は「有効性が明確でない」として実施を延期。漁場管で改めて検討を重ねた結果、地元漁協から申請があった場合は解除ができる形でのリリース禁止が昨年6月から実施されている。

 県外から多くの釣り人が訪れ、バス釣りによる経済効果が「年間3億円」とされる野尻湖では、地元漁協が解除条件となっている流出防止策を湖からの流れ出しに施し、今春のシーズンスタートとともにリリースが認められる。網やスクリーン設置に約350万円かかったが、「リリース禁止は死活問題だった」と石田和夫組合長(48)。組合が16年に行ったアンケートでは、リリース禁止となれば「野尻湖にもう来ない」と答えた釣り人が4割、「来る回数が減る」が4割もいたからだ。

 漁協では外来魚を駆除して在来種のみで湖を活用する策も考えたが、「広く水深のある湖では駆除が非常に難しく、行政の支援を受けても根絶やしは不可能。税金の無駄遣いとなる可能性の方が高い。ならば地域活性化のために有効利用させていただいた方がいいと考えた」という。同じくバス釣り客で賑わう木崎湖(大町市)も、解除申請を検討している。

 「部分除外を含むリリース禁止」という結論に至るまでには、各方面の専門家が揃った漁場管で2年間にわたる議論が交わされた。「リリース禁止で本当に外来魚が減るのか?」というテーマが取り上げられたこともあった。例えリリースしても針にかかった魚の何割かは死ぬ。ならばリリース禁止で釣り人離れを招くと、結局は禁止前より外来魚は増えるのでという懸念だ。しかしこうした本質的な議論は深められることなく、結論のみが急がれた。

 禁止決定から間もなく、県民からの意見をネット上で募るコーナーに、小学生の子を持つ親から悩みが寄せられた。「リリース禁止をどう教えたらいいか分からない。『悪い魚だから殺すのは仕方が無い』と教えればいいのか」。外来魚の食用普及が進まない現状では、リリース禁止とは釣った魚を殺して捨てることを意味する。ただファッションとしてリリースをしたい釣り人もいる一方、無意味な殺生に抵抗を感じている釣り人も多い。「ブームが終焉するなか今回のリリース禁止がバス釣り離れにとどめを刺した状態」(県内釣具店)という。

 しかしここに大きな矛盾が生じる。リリース禁止の本来的な目的である駆除効果は、釣り人にたくさん来てもらわなければ発揮できない。なのに禁止の結果、釣り人は来なくなった。

 リリース禁止が釣り人を水から遠ざける目的だった時代もある。平成11年に実施した新潟県では「他水域への移植を防ぐためにバスを釣って欲しくなかった」(新潟県内水面漁連)。しかし特定外来生物法が施行された今、他の水域への移植は違法。こうしたなか、何のためのリリース禁止なのか、という議論は行われず、矛盾に満ちた結論だけが残った。

+Yahoo!ニュース-長野-産経新聞

Posted by jun at 2009年01月24日 14:55 in ブラックバス問題

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