◇「名勝を指定時の姿に」
◇保存管理計画運用指針策定−−100年先見据え
八戸市は11月、国の名勝に指定されている種差海岸の「保存管理計画運用指針」を策定した。1937年に国名勝指定を受けて以来、種差海岸は地域住民の生活の変化や植林などで徐々に姿を変え、人間が手をかけなければ景観は保てない状態にある。運用指針は、名勝指定時の種差海岸の姿を後世に引き継ぐための対策を示している。【喜浦遊】
種差海岸は、八戸市鮫地区から南浜地区にまたがる約12キロの海岸線で、天然の芝生地や白い砂浜、さまざまな形の岩が並ぶ岩場など多様な景観が広がっている。国は37年、名勝の指定理由に「奇岩、砂浜、芝草原、野花、ウミネコ」を挙げ、それらが織りなす景観の美しさや動植物の生息地としての価値の高さを評価。詩人・草野心平や佐藤春夫、画家の東山魁夷(かいい)ら多くの文人や芸術家も当時の海岸の姿を作品に残している。
しかし、その景観は植物の自然増殖や地域の生業の変化など人為的な要因で指定時から大きく変化している。今回の運用指針で市は、32年と現在の海岸の写真を10地点で比較した。市が草刈り業務を民間に委託し、積極的に管理している芝生地はほぼ指定時の景観が保たれているが、その他のほとんどの海岸線は、草原の減少に伴う低木や外来植物などの自然増殖が目立つ。
特に50年代に防砂や防風を目的に植林されたクロマツの増殖は顕著だ。深久保と大須賀浜に植えた当時は「大部分は根付かずに枯れる」とみられていたが、今ではそれ以外の場所にも広く増殖し、かつては開けていた海岸線の展望を遮っている。
運用指針は海岸の自然的景観について、「クロマツの自然増殖を大きな要因として、いたるところで変化している。地域の植生を健全な状態で維持しなければ、いずれ種差海岸の文化財としての価値に影響が出ることが懸念される」と指摘。今後の対策として、植物の分布を把握し、地域住民や農・漁業者の暮らしへの影響を考慮しながら、除間伐などの積極的な駆除方法を検討するとしている。
市教委文化財課は「名勝指定時の姿に戻すことが運用指針の究極の理想」と言う。しかし、長い時間をかけて変化した景観は地域に定着し、現在の風景を「種差海岸」と認識する市民もいる。市関係者は「今すぐに指定時の姿に戻すことは不可能で、指針は100年先の海岸を見据えている。種差の現状を市民に理解してもらい、どんな種差海岸を自分の子供や孫に残したいかを考えるきっかけにしてほしい」としている。12月8日朝刊