淀川水系4ダムを盛り込んだ国土交通省近畿地方整備局の河川整備計画案に対し、京都府の山田啓二、滋賀県の嘉田由紀子、大阪府の橋下徹の3知事は11日、和歌山市内で記者会見し、大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について「河川整備計画に位置づける必要はない」と、国に事実上の「建設中止」を求め、計画反対の共同意見を発表した。3知事は「現実の立場から一刻も早く安全を確保するアプローチを取った」と強調した。
■共同意見発表 建設困難に
共同意見には、三重県の野呂昭彦知事も名を連ねた。河川法に基づく知事意見で、府県を超えて流域の知事が国のダム計画に反対するのは初めて。法的拘束力はないが、多額の費用負担を担う地元府県が反対したことで、40年来の同ダム建設は、困難な見通しとなった。
会見で、山田知事は「整備局案とは内容が違うが、安全を目指すことでは変わらない。現実的な路線を取った」と説明。橋下知事は「地方の長が住民が何に怒り、何に喜ぶかいろんなことを考えながら判断した。国ではなく地域に責任を持つ首長が決めるべきもの」と述べた。
大戸川ダム計画に伴う県道の付け替えなど周辺事業は、3府県が費用負担することを前提に、国に継続を求めた。地元の嘉田知事は「(下流の)両知事に地域生活に多大な影響が生じていることを考慮していただいた」と述べた。
天ケ瀬ダム(宇治市)再開発は、琵琶湖の洪水被害の軽減に役立つとし、宇治川下流の堤防強化などを条件に同意した。具体的計画が示されていない丹生ダム(滋賀県余呉町)は「意見を述べることが不可能」として留保した。
■正式意見聞く
木下誠也近畿地方整備局長の話 今回の共通認識の内容について具体的に聞き、今後提出される正式な意見や、兵庫県、奈良県知事の意見も聞いて、淀川水系河川整備計画を策定したい。
■画期的な府県合意
【解説】 京都、滋賀、大阪の3府県知事が大戸川ダム中止で合意に至った背景には、まず計画を重視する国交省と、現実の課題に直面している府県知事の「安全に対するアプローチの違い」(山田啓二京都府知事)がある。
近畿地方整備局の説明では、大戸川ダムを整備すれば、淀川の安全度を落とすことなく桂川改修に着手でき、大戸川の治水安全度も一気に上がるとしていた。だがダムは整備に多くの時間と費用がかかる。「ダムができるまで何十年も桂川の改修などを待たなくてはいけない」(山田知事)という国の計画ではなく、危険な所から優先的に手当てする現実的な方策を各知事は選択したのだ。
合意文書では、上中流を整備する上で、「下流の治水レベルを考慮しつつ」という文言が随所に見える。これまで国の役割だった上下流バランスの確保を、3府県知事が上下流の対立を乗り越えて行ったことに、今回の合意は画期的意味がある。
一方、大戸川ダム予定地周辺の付け替え道路整備や、ダム以外の多角的な治水策の模索など、各知事は新たな課題を背負ったことも事実だ。中央主権型から、地方分権型の地域整備へ。総合行政を担う各知事の力量がこれから問われる。