■管理条約発効なら1000億円特需
船舶のバランスを保つために利用されるバラスト水処理装置の開発に、プラントメーカーがしのぎを削っている。日本のあちこちで外来生物による生態系被害が起きており、その一因が、海外から生物も一緒に持ち込むバラスト水と指摘されているためだ。国際海事機関(IMO)もバラスト水規制の強化に乗り出し、バラスト水管理条約が発効されれば、船舶への処理装置の搭載が段階的に義務化される。そうなれば年間1000億円規模の「バラスト水規制特需が発生する」(業界関係者)とみられている。
≪深刻な生態系被害≫
バラスト水には採水海域のプランクトン、菌類、泥、砂などが含まれている。航海後、船舶は採水した国とは異なる国の港湾で排出する。このため海水と一緒に生態系の異なる外来生物なども排出され、繁殖して対象海域の生態系に重大な影響を及ぼす。
世界的に知られた事例としては、米国5大湖周辺で、欧州から入ってきたゼブラ貝が爆発的に繁殖し、沿岸環境を激変させた。
このため2004年にはバラスト水を規制するバラスト水管理条約がIMOで採択されている。
こうしたバラスト水による生物の移動を防止するため、さまざまな処理方式が開発されている。
JFEエンジニアリングが開発した装置は、バラスト水をフィルター機構で濾過(ろか)した後、薬剤に加え、瞬間的・局所的に高い圧力がかかる「キャビテーション」と呼ばれる現象を利用して処理する仕組みだ。排水したバラスト水が環境に悪影響を及ぼすことがなく、構造がシンプルなことも特徴。
日立プラントテクノロジーと三菱重工業が共同開発したシステムは、凝集技術と磁気分離技術を組み合わせ、バラスト水中の微生物などを除去していく方式。バラスト水に凝集剤と磁性粉を同時添加し、プランクトンなどを1ミリ程度の大きさで磁気を帯びた固まりに取り込み、この後に磁気ディスクに吸着させて除去処理していく。短時間に効率的に処理できるのが特徴。IMOの定めた装置ガイドラインの基本認証を4月に取得し、実際の船舶を使った試験を始めており、09年7月の実用化をめざす。
≪スウェーデン先行≫
バラスト水の処理装置には海外勢も注目する。スウェーデンの大手機械メーカー、アルファ・ラバルは、光触媒を活用したバラスト水処理装置を開発した。二酸化チタンの触媒を配した装置内にバラスト水を導いて紫外線を照射する。その際に発生した「OHラジカル」と呼ばれる活性酸素の一種を使って、微生物などを処理する仕組みだ。薬剤を使用しないため、環境に負荷をかけることがないのが売り物。すでにIMOの装置ガイドラインの基本認証をプラントメーカーの中でも先行して取得。条約発効に先だって、船舶に処理装置を備えようという各国の船主からの受注にもこぎつけている。
外航海運会社などにとって、バラスト水の処理は避けて通れないテーマ。このため、どの装置がもっとも優れているかを見比べている状況のようだ。(佐藤哲夫)
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【用語解説】バラスト水管理条約
2004年2月にIMO本会議で採択された国際条約。正式名称は「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約」。外航船の建造日、ラストタンクの容量に応じバラスト水の排出基準などが示されている。17年にはすべての外航船に同基準が適用される見込み。
Posted by jun at 2008年05月26日 12:54 in 外来生物問題