ここ数年、外来生物という言葉をよく耳にするようになりました。もともと国内にいなかったのに人間の活動によって外国から入り、自然の中に根付いた生物のことを指します。ルアー釣りの対象魚として人気のブラックバスやブルーギルをはじめとして、定着してしまった外来生物は2000種を超え、この状態は“外来生物による侵略”ともいわれています。
長い時間をかけてできあがった国内の生態系に外来生物が侵略してくると、もともといた在来生物を食べたり餌を奪うなどしてバランスが崩れてしまうことがあります。また、近縁の在来生物との交雑で雑種が生まれ、遺伝的独自性が壊れる可能性も生まれます。
中には、畑を荒らしたり、漁業の対象となる生物を食べたりする外来生物もいますし、その繁殖によって漁業・農業の作業のじゃまになるものもいます。
最近、問題になっているのが中国やタイが原産の特定外来生物である「カワヒバリガイ」(イガイ科)です。
3センチほどの黒い二枚貝で、地中海料理などで使われるムール貝の仲間ですが食用にはなりません。国内では平成4年に初めて琵琶湖で見つかりました。その後、岐阜・三重両県を流れる長良川や、群馬県富岡市の大塩湖など、各地で続々と見つかっています。
カワヒバリガイは非常に繁殖力が強く、かたまった場所に大量発生することで知られています。幼生は水中で浮遊生活を続け、やがて付着糸を出して河川や湖沼の浅瀬の石などにくっついて小さな貝となり、成長していきます。貝同士も付着糸で互いにくっつきあい、かたまりを作ります。
琵琶湖では、周辺住民の飲み水にするための導水管内にカワヒバリガイが大量に付着し、水の通りが悪くなってしまいました。また、貝のフンや死骸(しがい)から雑菌が流れ込むため、消毒にも薬剤が余分に必要になりました。有効な退治手段は見つかっておらず、いったん大発生すると人間がコントロールするのは困難といわれています。
そんなカワヒバリガイが、日本で2番目に大きな湖、霞ケ浦でも急繁殖していることが、農環研の調査でわかりました。
研究チームは、18年6〜9月、霞ケ浦湖岸の水深1メートルより浅い場所で、護岸や石を目視や手探りすることによってカワヒバリガイの生息状況を調べました。その結果、調査ポイント90地点中、41地点でカワヒバリガイの生息が確認されました。発見地点は霞ケ浦南部に集中しており、発見数などから霞ケ浦西部から生息範囲を拡大しつつあるものと考えられます。
また、個体の大きさなどから、霞ケ浦では少なくとも16年ごろから生息していたことが確認されました。
カワヒバリガイがいったいどのようにして霞ケ浦に入ってきたのか、その経路はまだわかっていません。けれど、今後は見つけしだい、人の手で丹念に除去する作業を続けなくてはなりません。農環研では、「利水施設への影響も懸念されるため、慎重に監視を続ける必要がある」と話しています。
■メモ
特定外来生物 海外起源の外来生物のうち、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害をおよぼすおそれのあるもの。外来生物法に基づき8月30日現在で83種が指定され、飼育、栽培、保管および運搬が禁じられている。
カワヒバリガイ 中国南部やタイなど東アジアから東南アジアにかけて広く分布するイガイ科の二枚貝。2年ほどで2〜3センチの成貝となる。毒はないが食用にはならない。どのように日本に入ってきたかは不明だが魚類や貝類の輸入時に卵が付着していたのではないかといわれている。
◇研究所から
▽概要
さまざまな分野の研究者が、農業を支える環境についての調査・研究を行っています。食品と環境の安全確保のために、環境や作物中での有害化学物質や重金属の動きや、外来生物や遺伝子組み換え生物の環境影響などの研究が行われ、豊かな農業・農村環境のために、生物多様性の維持、地球温暖化の影響予測と対策などの研究が行われています。さらに基盤的な研究として、微量物質の分析手法や環境計測技術の開発、長期モニタリング、農業環境インベントリーの構築と活用などの研究が行われています。
▽自慢
農業環境インベントリーセンターには、国内外の土壌の断面標本約250点、昆虫標本約120万点、微生物標本や菌株約1万2000点、肥料標本、明治期の銅山周辺の煙害調査資料などが収集・保存されています。農業環境インベントリー展示館は一般の方の見学が可能です。
▽データ
名称:独立行政法人農業環境技術研究所
所在地:つくば市観音台3の1の3
設立:明治26年4月
Posted by jun at 2007年08月31日 12:57 in 魚&水棲生物, 自然環境関連