2006年06月25日

上海ガニ規制泡食う業者 かさむ出費 東北の養殖場

 中華料理の高級食材として人気がある上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)が、生態系に被害を与える「特定外来生物」として環境省の指定を受けたことで、東北の養殖業者が事業の継続に苦慮している。輸入するにしても、養殖するにしても許可が必要になり、カニが逃げ出さないように厳重な管理が求められる。「上海ガニを町の特産品に」と意気込んでいた現場には将来性への不安が広がっている。

 環境省が上海ガニを特定外来生物に指定したのは今年2月。上海ガニの国内での繁殖は確認されていないが、「生態系への影響や在来種との交配が懸念される」というのがその理由で、稚ガニは動きが速く管理の徹底が必要だという。

 養殖場は全国で十数カ所あるが、本年度東北で養殖の許可申請を出したのは7団体だった。

 福島県いわき市川部町の住民約30人でつくる「川部カニ牧場」は、環境省の指導を受け、8アールの養殖池のフェンスを60センチから1メートルに改修、吸排水口には二重の網を施した。100万円の出費は会員で折半。中国からの稚ガニ買い付けも遅れ、例年4月に行う放流もできないでいる。

 事業は1998年、休耕田を利用し新たな観光資源を探ろうと始まった。昨年末、加工品販売にこぎつけ、在来のモクズガニと合わせたセット商品(3900円)を300個販売した。だが、今回の規制強化によって規模拡大ができない事態に追い込まれた。小野則之会長(51)は「やっと商業ベースに乗ってきたのに、先行き不透明になった」と困惑を隠せない。

 山形県山辺町の農家7人でつくる「湧水(ゆうすい)の里生産組合」は、1ヘクタールの養殖池のフェンスが雪で破損したこともあり、補修に50万円を要した。借金と規制のダブルパンチに、組合員の日詰勉さん(65)は「過去の投資分を環境省が補償してくれるなら(事業継続を)あきらめようという話もあった」と明かす。しかし、過疎と高齢化が進む町で、稲作に代わる産業として振興を図ってきた経緯があり、「今後も可能性を探りたい」(日詰さん)と話す。

 一方、福島県浪江町の町民15人でつくる「浪江町特産品開発研究会」は上海ガニの試験養殖をやめ、在来のモクズガニに絞る方針を決めた。研究会代表の小黒敬三さん(50)は「管理に手間がかかるなら無理はしない」と語る。

 全国の生産者は連携を強めようと今年1月、養殖組合を結成し、勉強会を開いてきた。現在参加は8団体前後。小野さんは「元気を出していこうということになった。消費者の理解も得たい」と現場の思いを代弁する。

[上海ガニ] 国内の淡水に広く成育するモクズガニの近縁種。モクズガニが成育に3―5年かかるのに対し、中国で品種改良された上海ガニは1年で出荷が可能。甘く深みのあるかにみそに人気があり、高級料理店では蒸しガニ1匹4000円の値が付くことも。
(河北新報)

+Yahoo!ニュース-東北-河北新報

Posted by DODGE at 2006年06月25日 20:23 in 魚&水棲生物

mark-aa.jpg