2006年01月26日

生態系レジームシフト:琵琶湖で発生の可能性探る−−県環境科学研究センター /滋賀

 ◇琵琶湖で「説明のつかないことが起きている」
 ◇酸素濃度…?水温…?湖底のエビ…?
 県琵琶湖・環境科学研究センター(大津市)は来年度、気候の影響などにより海洋などで生態系の一部が急激に変化する現象「生態系レジームシフト(構造変化)」の、琵琶湖での発生可能性を探る調査・研究に乗り出す。湖沼でレジームシフトの研究を行うのは極めて異例。琵琶湖北湖の深水層で80年代後半に起きた水温などの変化、当時の生態系の状態などのデータを精査して分析、過去のレジームシフトの有無を検証する他、現在の琵琶湖の状態の観測などから、今後の発生予測を行うという。【服部正法】

 レジームシフトは、太平洋で80年代に大量に捕れていたマイワシが、気象の影響などで激減し、代わりにサンマが増えた例などが指摘される。
 琵琶湖での研究は、同センターの石川可奈子研究員、熊谷道夫・上席総括研究員らが担当する。琵琶湖は年に1回、冬期に湖水の冷却や雪解け水の流入によって、新鮮な酸素を含んだ水が湖底に流れる「深呼吸」現象で酸素濃度などを「回復」している。熊谷さんらの研究では、琵琶湖北湖の水深90メートルで、04年冬の酸素濃度回復がそれ以前の2年と比べて8割程度にとどまるなど、近年は回復が不十分に。また他の研究では、水温が60年代〜90年代末で約1.5度も上がるなど、水温上昇も問題視されてきた。いずれの問題でも、地球温暖化が、要因の一つとして指摘されている。
 湖底に住む底生生物の変化も顕著で、低酸素状態で現れる微生物類の発見も近年相次いだ。4、5年前までは潜水ロボット「淡探」による調査で、湖底に多くいたアナンデールヨコエビが05年にとりわけ急減。一方でヨコエビを食べるイサザの急増が確認されないなど、琵琶湖で「説明がつかないことが起きている」(熊谷さん)現状から、レジームシフト研究を企画した。
 熊谷さんらは、現在の前段階として▽深水層の酸素濃度▽水温▽窒素濃度――などに一定の変化傾向があったようにも思われる80年代半ばから90年ごろにレジームシフトが起きていたかどうかを観測データ分析などで調査。さらに「淡探」などを用い、広範囲に現状の水質や生物データを収集・解析し、今後のレジームシフトの可能性を探る。
 石川研究員は「琵琶湖の水質は『横ばい』とされてはいるが、生態系の(変化の)問題は出てきており、今後どうなるのか不安がぬぐえない。将来を考えていく研究が必要。これまで強化してきた観測のハード面、ツールを生かしていきたい」と意欲を語る。

(毎日新聞)

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Posted by DODGE at 2006年01月26日 10:05 in 自然環境関連

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