2019年08月08日

生態系を破壊する外来アライグマ、温暖化とともに北上 研究

どこでも暮らせるアライグマ、生息適地はもっと広がる
 アライグマは北米原産の哺乳類だが、すでに世界のあちこちに暮らしている。環境への適応力が高く、食欲が旺盛なこの動物は、世界各地に持ち込まれて野生化しているのだ。新たな研究によると、気候変動によってその生息可能域はさらに広がるという。

今回、学術誌「Scientific Reports」に発表された研究では、まず、現状の生息域からアライグマに適した気候条件を抽出。そのうえで、地球温暖化によって生息に適したエリアがどのように変化していくかを推定した。

 そこからわかったのは、アライグマは世界のかなり広い地域で生息可能ということ、そして、生息に適したエリアはかなり北まで拡大しそうだと、今回の論文の筆頭著者で、パリにあるフランス国立自然史博物館の研究員ビビアン・ルッペ氏は述べる。

 ヨーロッパや中央アジア、東アジアの多くの場所で、アライグマはすでに外来種として広がっている。温暖化によって生息域が拡大すれば、在来の生態系に対しさらに大きな被害をもたらすかもしれない。ただし、どのような被害が生じるのかについては、まだよくわかっていない。

 アライグマ(学名:Procyon lotor)の生息にもっとも適した場所は、川のそばだ。ドイツ語とイタリア語でも、日本語と同じく「洗うクマ」という意味の名 で呼ばれている。

 アライグマが初めてドイツに持ちこまれたのは、1930年代のこと。その後、西はスペイン、南はイタリア、東はポーランドまでヨーロッパ各地に広がった。日本では、1960年代以降に全国的に広がり、現在では47都道府県のうち少なくとも42都道府県で生息が確認されている。イランとアゼルバイジャンにも、多くのアライグマが生息している。

 日本でアライグマが問題になった一因は、1970年代のテレビアニメ『あらいぐまラスカル』だ。かわいらしいキャラクターが人気となり、一時期は年間1500匹が持ちこまれた。のちにこれは禁止されたが、すでに遅すぎた。アライグマはペットには向いておらず、自然に放されたものも多かった。

北上する生息可能域

 今回のシミュレーションを実施するに当たって、研究チームが採用した気候変動シナリオは、RCP 8.5と呼ばれる「最悪のシナリオ」。これは、代表的濃度経路(RCP)シナリオのうち、今後も石油の大量使用が続く場合を想定したもので、今のままではこうなってしまう可能性が高い。

「RCP 8.5は一番極端なシナリオですが、残念ながら一番現実的で可能性が高いシナリオでもあります」とルッペ氏は言う。

 ルッペ氏によると、アライグマの生息可能域が北に広がることでもっとも懸念されるのは、北方林と呼ばれる森林地帯への影響だ。「この地域の生態系は特殊で脆弱です」と言う。外来種の捕食動物がやってくることで、この北方林に被害が出る可能性がある。

 ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラーであり、カナダ、ヨーク大学で動物の行動を研究しているスザンヌ・マクドナルド教授(本研究とは無関係)は、ヨーロッパとアジアの北方林が特に心配だと述べる。そこでは、アライグマの生息可能域がかなり北まで広がる可能性があるという。

「現在保たれている微妙なバランスがアライグマによって完全に崩されてしまう可能性があります」とマクドナルド氏は言う。「日本などでは、すでにそれが起きています」

 その原因は、小型無脊椎動物、カエル、鳥の卵、鳥、小さな哺乳類など、アライグマが何でも食べることにある。

 アライグマがヨーロッパの生態系に与えている影響については、まだよくわかっていない。しかし、ポーランドのブロツラフ大学の研究員であるアグニエシュカ・ペレック=マチジアク氏は、「アライグマは、在来の動物相にとって大きな脅威になっている可能性があります」と言う。

都市ではゴミが主食

 アライグマは都市生活に特によく適応する。よくゴミをあさっていることから、トラッシュ・パンダと呼ばれることもある。

 その一例として、マクドナルド氏は「トロントでは、毎夜裏庭でアライグマを見かけます。たまに見かけるのではなく、毎日必ず見るのです」と述べた。特に懸念されるのは、狂犬病などの病気を媒介する可能性があることだ。「心配で夜も眠れなくなります」

 なお、今回の研究に使われたモデルには、獲物や捕食者の有無などの生態学的な変数は含まれていない。そのため、ルッペ氏はアライグマが生息できる場所を確実に言い当てるものではないとしている。

 とはいえ、アライグマは何でも食べるので、気候条件さえ合えば、どこでも生きていける可能性は高い。

 一方で、アライグマは外来種として広がり続けているにもかかわらず、その危険性は過小評価されている。「アライグマはかわいらしく見えますが、ずる賢い動物でもあります」とマクドナルド氏は言う。

「予備知識も対応策もないままアライグマを持ちこむと、あらゆるものが破壊されてしまうことになるのです」

文=DOUGLAS MAIN/訳=鈴木和博

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Posted by jun at 2019年08月08日 10:36 in 外来生物問題

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