生態系に重大な影響を及ぼす恐れがあるとして、駆除の対象となっていた特定外来生物「タイワンザル」について、和歌山県は昨年末に根絶の完了を宣言した。同県を含む紀伊半島はニホンザルの生息地として知られており、タイワンザルとの交雑が進むとニホンザルの種を保てなくなるため、県は平成14年に「捕獲作戦」をスタートした。ところが、敵も“さる者”で、巧みに逃げ回るサルの前に作戦は難航。両者の根比べは15年もの時を要することになった。(永原慎吾)
長年、和歌山県を苦しめてきたタイワンザル。その名の通り、台湾原産の外来種でニホンザルより尻尾が長いのが特徴だ。県内では、昭和30年代に和歌山市南東部から海南市北東部に広がる大池地域に定着したとされる。和歌山市内の私立動物園が閉園した際に逃げ出したサルがそのまま野生化したとの説がある。
このタイワンザルをめぐる問題が表面化したのは平成10年。県内でサルによる農産物の被害が相次ぎ、県がニホンザルの分布調査を実施したところ、タイワンザルの生息が確認され、さらにニホンザルとの交雑が進んでいることが判明。大池地域に定着している数は、170〜200頭と推計された。「このままでは紀伊半島のニホンザルがいなくなってしまう」。危機感を抱いた県は捕獲して安楽死させる方針を決定した。ところが、動物保護の面で県内外から反対意見が寄せられるなどして物議を醸し、県は最終的に県民約千人にアンケートを実施。安楽死に6割強が賛成したことから、14年に捕獲作戦をスタートさせた。
作戦は、ミカンなどの餌が入った巨大なオリにサルを誘い込んで一網打尽にするという内容で、当初は3年での根絶完了を予定していたという。だが、作戦の初期には捕獲されていたサルたちも次第に警戒するようになり、おびき出すためオリ周辺にまいていたエサだけを食べられてしまうケースも出てきた。「まさにサルとの根比べ、知恵比べだった」。県自然環境室の担当者はこう振り返る。サルは雌を中心に群れを形成することから、雌に電波発信機を装着して群れの動きを探るなど、あの手この手で捕獲を続けた。
こうした取り組みの結果、県は24年4月までに366頭を駆除。その後は新たなサルの出現は確認できず、5年のモニタリング期間を経て、昨年12月下旬にようやく、タイワンザルの根絶完了を宣言した。駆除のために約5千万円の費用もかかったという。タイワンザルのようなケースを防ぐため、県では30年度までに県内に生息する外来種を調査し、リストを作成する方針。同室の担当者は「まずはどのような外来種がいるのか、しっかりと把握したい。紀伊半島の生態系を後世に残していくために、あらゆる方策を尽くしていく」と強調している。
Posted by jun at 2018年01月23日 09:44 in 外来生物問題