千曲川の初夏の風物詩としても知られる「ウグイ」の安定供給や生息数の回復を目指し、県水産試験場佐久支場(佐久市)が始めた取り組みが今年で2年目を迎え、順調に成果をあげている。全国でも珍しい人工的な方法で、稚魚が孵化(ふか)する割合は約2倍に上昇したという。漁協関係者らの期待は膨らんでいる。(三宅真太郎)
千曲川に隣接する養殖池で、体長15センチほどのウグイの親魚が悠々と泳ぎ回っている。慣れた手つきの職員が次々と網ですくい上げ、雌雄を選別している。産卵は今月中旬から本格化しており、作業は活況を呈している。
佐久支場では、放流や養殖用として年間50万尾(1グラム換算)を目標にウグイの稚魚を育てている。だが、千曲川で採取した卵を育てる方法では、生息数そのものが減少しているため、目標の達成がままならない状況となっていた。
佐久漁業協同組合の管内だと、最盛期の卵の採取量は1シーズンで300〜500キロに上ったが、最近では約100キロに減少したという。
そこで佐久支場は、生息数などの回復に向け、平成24年に新たな人工採卵の研究を開始。27年に確立し、28年から本格的に稚魚の出荷に乗り出した。出荷される稚魚は業者が養殖用に購入し、漁協が河川に放流することもある。
新たな採卵法は、自然に近い産卵場所を人工的に作り、親魚の産卵を誘発するもので、川底の砂利に産卵するウグイの習性を上手に生かした。養殖池の底に3〜5センチ大の小石を積み上げ、そこに水を勢いよく流し込んで千曲川の川底を再現している。
この人工池に雌雄のウグイを入れてから24時間後に回収する。産卵行動が誘発された雌の腹は手で押すだけで、卵が勢いよく出てくるという。卵に精子をかけて受精させれば、3日ほどで孵化し、秋には体長5センチの稚魚に成長する。
川から卵を採取する従来の採卵法では、ゴミが含まれていたり、卵に衝撃が加わったりして、孵化率は約48%と半分以下だった。だが、人工的に産卵環境を整えたことで約80%まで増大した。
農林水産省の統計によると、27年の県内における「ウグイ・オイカワ」の漁獲量は7トン。10年前の46トンに比べると、約7分の1に減少している。カワウやブラックバスによる食害が主要因とみられている。
佐久支場では、初めて人工採卵を取り入れた28年度には、約847万粒の卵を採取し、19万尾(4グラム換算)の稚魚を出荷した。今年度も同規模の出荷を目指しており、ウグイの安定供給や生息数回復への期待は大きい。
山本聡支場長は「ウグイは県民に長く愛されてきた魚です。自然本来の姿を取り戻すことにつながればいい」と話している。
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【用語解説】ウグイ
コイ科に属する川魚。中南信では「赤魚」、東北信では「ハヤ」とも呼ばれる。ウグイの産卵場所を川の中に人工的に作り、網などで一網打尽に捕まえる「つけば漁」は、江戸時代から続く伝統的な漁法。4〜6月にかけて、ウグイを空揚げや塩焼きなどにして提供する「つけば小屋」が千曲川沿いに並ぶ光景は、信州の初夏の風物詩として知られる。
Posted by jun at 2017年05月26日 11:54 in 外来生物問題, 魚&水棲生物, 自然環境関連