日本遺産に認定された集落内を流れる水路の景観を観光資源としてPRしようと、滋賀県東近江市伊庭町でこのほど伝統的ないけすが復元された。湖魚をふんだんに使った料理メニューも考案し、水と共に生きる文化を五感で発信していく。
かつて伊庭町の集落内は縦横に水路が流れ、住民は田船を生活の足にしていた。民家の前には木でいけすが造られ、水路や近くの伊庭内湖で捕れた魚を保管する「天然の冷蔵庫」として使われていたという。
約40年前に多くの水路は埋め立てられ道路になったが、一部が住民の要望で残され、現在も数軒にいけすが残るほか、畑で収穫した野菜を洗うなど日常的に利用されている。昨年4月には「琵琶湖とその水辺景観」の一部として文化庁の日本遺産に認定され、市や市観光協会、地元住民らでつくる地域協議会が、食文化の紹介を通じた遺産のPRに取り組んでいる。
仕出し料理店「魚定」の前に伝統的な木製のいけす(幅1・2メートル、長さ3メートル)を復元し、店で提供するコイを泳がせている。さらに料理メニュー「『探水(たんすい)・馳走(ちそう)』水郷伊庭の漁萬善(りょうまんぜん)」(仮称)を考案。コイの筒煮やみそ鍋のほか、フナの造りやホンモロコの白焼き、ナマズの焼き物など、多彩な湖魚を味わえる内容になっている。
来年3月には一般対象のモニターツアーを予定しており、今後は季節などに応じたさまざまなメニューの提供も検討している。
店主の井上龍男さん(61)は「ナマズも1週間ほどいけすで泳がせると泥臭さがなくなる。ぜひ食べに来てもらい、湖魚の魅力を知ってもらいたい」と言い、メニューを監修した県文化財保護協会普及専門員の大沼芳幸さん(62)は「伊庭の人々が大切にした、琵琶湖と共に生きるという精神的な豊かさを、食を通して来訪者に伝えたい」と話している。