2015年11月10日

ミドリガメ、本格的駆除へ――私たちに身近な生物多様性(15)[坂本 優]

 環境省は、来年度からミドリガメの本格的駆除を実施すべく、今年度、いくつかの地域でモデル事業を実施するという。効率的な捕獲方法や処分方法などが検討、検証される。ミドリガメの大半はアメリカから輸入されたアカミミガメ(ミシシッピアカミミガメ)だ。多くは甲羅の長さがほんの数cmの幼体の頃にペットショップなどで売られるが、成長すると大きなものは30cm近くになる。かつて、「アマゾンの緑ガメ」と称して売られたカメもこの仲間だ。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)

 アカミミガメをはじめとするミドリガメたちは日本中で野生化しており、大都市の公園や寺社の池などでも普通に観察できる。一方、固有種のニホンイシガメなどは、すっかりその数を減らしている。

 典型的な侵略的外来種として、公園の池や農業用のため池の掻い掘りの際など、これまでも駆除の対象となってきた。ところが、外来生物法にいう「特定外来生物」としての指定はなされていない。理由は、その膨大な取引数、飼育数だ。

 「特定外来生物」に指定された場合、原則、取引や飼育は禁止されることになる。年間十万匹単位の取引数、百万匹単位の飼育数からみて、これらを一挙に禁止した場合、現状に加えて、更に膨大な数が自然界に新たに放たれるであろうことが容易に推測される。そのため指定に踏み切れないと言われている。

 ミドリガメ――アカミミガメについては、私自身も自然界に放してしまう可能性は充分にあった。以前、このコラムでイシガメについて書いた際にも触れたが、かつて、お菓子の景品として「アマゾンの緑ガメ」が当たる懸賞があり何回か応募した。当選していたならば、何年か後に間違いなく自然界に「放生」していただろう。

 当時、私の周囲では、カメは子ども時代に飼う生きもので、飼い続ける生きものではなかった。周囲の小さな子どもに譲るか、川や池に放すものだった。

 大人たちは、成長してカメに対する興味がだんだん薄れていく子どもに対して、「長いこと楽しませてくれたのだから、もう、逃がしてあげなさい。」「お酒をかけて川に放してあげると、恩返しをしてくれるそうだよ。」といった話をして、カメとの別れをうながした。

 当時のペットのカメは、大概、イシガメかクサガメだったから、その両種間や亜種レベルの遺伝子攪乱はあったのだろうが、外来種の問題など今のように意識されることはなかった。私は、周りの友人に比べ、かなり遅くまで飼っていたが、あるとき、人生のささやかな通過儀礼のようにイシガメを近所の川に放したことを記憶している。

 巨大化して飼いきれなくなっただけでなく、そのようにしてミドリガメと別れた少年少女も多かったのではないか。そう思うと、都内の水辺で見かける、何十年かの齢を重ねているだろう巨大なアカミミガメにも、ふと愛おしさを感じることがある。

 もとより、野生化したアカミミガメが、駆除の対象となることについては、私自身、異論はない。しかし、駆除されるアカミミガメ自体は、新しい環境のなかで彼ら自身、必死に生き延びてきただけだ。

 ありふれたことだが、ペットは、自然界に放したり、捨てたり、逃がしてしまうことのないよう、責任をもって、最後まで管理しなければならない。そしてカメの場合、その寿命から考えて、飼い主としても一生かけてつきあう覚悟が必要だろう。

 アカミミガメほどのレベルで広く定着してしまった生きものを一挙に駆逐することは困難だ。既に生態系の一部に組み込まれている地域も少なくないだろう。アカミミガメの駆除自体によっても、生態系のバランスが崩れ得る。バランスを維持しようにも、カメは雑種化しやすいことから、イシガメやクサガメと併存させながら徐々に置き換えていくことも簡単ではない。本格的駆除を前に多くの課題が残る。


坂本 優(さかもと・まさる):カルピス株式会社 人事・総務部
東京大学卒業後、1979年味の素入社。本社にて法務・総務業務、工場・支社にて総務業務を担当。2011年カルピスへ出向。法務グループリーダーとして法務・商標・コンプライアンスを担当。2012年、同社転籍。2013年定年以降も、雇用延長制度により法務業務を継続中。学生時代、「動物の科学研究会」に参加、味の素東海事業所在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設するなど、生きものを通した環境問題にも通じる。(趣味ラグビー 関東ラグビー協会理事)

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Posted by jun at 2015年11月10日 08:47 in 外来生物問題

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