セアカゴケグモ、ツマアカスズメバチ、アルゼンチンアリ…。日本列島に侵入する外来生物が増え続けている。こうした“招かれざる客”は、人体や生態系に悪影響を及ぼすとされ、環境省は「特定外来生物」に指定して駆除に乗り出している。ただ、いくら駆除しても別の場所で見つかり、まるでいたちごっこのように生息域を広げている。幼児や高齢者などはかまれたり刺されたりすると、重症化する恐れがある。有害な外来生物の侵入をすべて食い止めることはほぼ不可能なため、専門家は「見つけたらすぐに通報や駆除ができるよう、外来生物に関する知識を持ってほしい」と警鐘を鳴らしている。
■侵入ルート特定できず
環境省によると、国内に入ってくる外来生物には飼育や実験などのために輸入したアライグマやヌートリア、マングースなどのような哺乳類と、海外からの輸入品に付着してきたクモやアリのような昆虫などの無脊椎動物の2通りがある。貿易の自由化に伴い、外来生物の侵入は急増したが、具体的にどのようなルートで入ってきたのかは「特定できない」(環境省外来生物対策室)という。
平成7年に大阪府内で国内初の生息が確認され、大きなニュースとなったセアカゴケグモは、今年に入って、千葉や埼玉、神奈川の各県で発見された。9月には東京都三鷹市や江東区で相次いで見つかり、自治体が駆除や周辺の捜索、注意喚起などの対応に追われた。セアカゴケグモは豪州が原産とされる。体長が雄(3〜4ミリ)の4倍ほどある雌だけが背中に赤い模様があり、「α−ラトロトキシン」という神経毒を持っている。かまれると頭痛や筋肉痛、けいれん、発熱、不眠などが数週間続き、重症化するケースもある。
■輸入品に紛れ込み
大阪では臨海地域で見つかったため、海外からの輸入品のコンテナなどに紛れ込んでいた可能性が高い。その後、日本列島で幅広く確認されるようになった。空港や港湾に入った荷物が各地に運ばれる過程で生息域が拡大したとみられる。屋外の物置や庭石の間などに巣をつくり、冬でも自動販売機やエアコンの室外機など温かい場所の近くで生きながらえてきたようだ。
セアカゴケグモは積極的に人を攻撃する習性はないため、必要以上に恐れることはないが素手で触るのは危険だ。重症化することは少ないが、2年ほど前には福岡市の介護施設で入所者の女性=当時(86)=が足の指をかまれ、全身の痛みを訴えるなどの症状が出たケースもある。
■在来種が激減
環境省は昆虫や爬虫類、哺乳類など計112種類について、在来の生物を捕食したり、生態系に悪影響を及したりする可能性がある「特定外来生物」に指定し、水際での徹底駆除を目指している。
6月には外来生物法を改正し、有害な外来生物が付着したり混ざったりしている輸入品を検査した上で、必要な場合は消毒や廃棄させる権限を強化した。物流の発達により、有害な外来生物が全国各地に予期せぬ形で広がり、国や自治体は手を焼いているのが実情だ。
対策を講じているにもかかわらず、最近になって生息が確認された外来生物もある。体長2センチ足らずで胴が黒く腹部が赤いツマアカスズメバチは、平成24年に長崎県対馬市で初めて生息が確認され、翌年には56の巣が見つかった。在来のミツバチを襲ったり巣を荒らしたりするため、養蜂業者は特に気をもんでいる。
東南アジアなどが原産とされるが、今や生息域は欧州にまで拡大。日本には韓国を経由し、輸入される木材や植木などに紛れ込んで入ったとみられる。
韓国ではツマアカスズメバチの影響で、在来のスズメバチが激減。また、2〜3週間でミツバチ300群のうち6分の1が消滅したとの報告もあり、環境省は特定外来生物への指定を急ぐ。
わずかに入っただけでも繁殖して個体数が増え、生息域が一気に拡大してしまうことから、環境省や対馬市は駆除を急いでいる。さらに高い木の上に巣をつくる習性があり回収が難しいため、手を焼いているのが現状だ。攻撃性が非常に高く、スズメバチの一種のため、刺されると命に関わる危険もある。環境省は「在来種のスズメバチと同じように巣に近づかないように注意してほしい」と呼びかける。
■コンクリートの割れ目に営巣
南米原産のアルゼンチンアリも問題となっている。毒性は確認されていないが非常にどう猛で、列をなして家屋に入ったり在来種を襲ったりする。農作物にも被害を与えるため、こちらも人や生態系への影響が心配されている。国内では20年以上前に広島で初めて見つかり、東日本へと生息域を広げている。在来種のアリと異なり、地中ではなくシートの下やコンクリートの割れ目などに営巣する。冬でも活動し繁殖力が強いとされる。
■北米で年間100人の死亡報告
現在のところ、国内では生息が確認されていないが、いつ入ってきてもおかしくない外来生物として、環境省が警戒を強めているものもいる。南米を原産地とするヒアリだ。かまれればじんましんや呼吸困難を引き起こし最悪の場合には死に至るという強い毒を持っており、北米では年間で約100人が亡くなったとの報告もある。すでに中国や台湾などには生息しており、環境省はすでに特定外来生物に指定し、水際での“入国阻止”に余念がない。赤や茶の褐色で、体長は1・4〜4ミリ。直径約1メートル、高さ約40センチの塚のような巣をつくる特徴がある。
■都市開発も影響
こうした外来生物にはどう対応すればいいのだろうか。国立環境研究所の五箇公一主席研究員(49)は「すべてを水際で食い止めるのは不可能」と指摘する。環境省では空港や港湾で目視による外来生物の監視を行っているが、輸入品に紛れ込んだものをすべて根絶できるわけではない。五箇氏は「国民一人一人が外来生物に関する知識を身に付け、見つけたらすぐに駆除できるようにしておくしかない」と話す。また、外来生物増加の要因として、急速な都市化を挙げる。冷暖房などによる都市部の人間の生活環境は、外来生物にとっても適応しやすい環境であることから、外来生物がその勢力を広げる手助けになっている。
「今しっかり対策をとっておかなければ日本人の生活はますます危機にさらされる。国家として万全の体制をとれるようにすべきだ」。五箇氏はそう訴えている。
Posted by jun at 2014年11月12日 16:10 in 外来生物問題