滋賀県の公式ウェブサイト上に、気になるコンテンツを見つけた。「亀ちゃんの外来魚回収ブログ」−。どうやら琵琶湖岸に設置されている「外来魚回収ボックス」に収容された、ブラックバスやブルーギルなどの魚を集める職員が執筆しているらしい。「亀ちゃん3兄弟は元気に回収に励んでいます」「夏は悪臭に悪戦苦闘」「台風でボックスが吹き飛ばされたところもありました」など、回収時の苦労をけなげにつづっている。「亀ちゃん」ってどんな人なのだろうか。回収の様子をのぞいた。(加藤園子)
日差しの強いある日の朝8時。県庁の駐車場に、亀ちゃん“たち”がいた。回収担当職員3人のうち、この日いたのは「亀山亀次」「亀山亀三」を名乗る2人。倉庫からポリバケツ7個を出して軽トラックに乗せると、準備完了。早速、湖岸に向けて走り出した。
最初に着いたのは、大津港(大津市浜大津)の回収ボックス。蓋を開けると…。「ぐ」。ブログにあった通り、確かに悪臭が鼻を突く。まるで生ごみ。中には、約50センチの大きなブラックバスがいる。小さなブルーギルもたくさん。
「回収は月・水・金曜の週3日。月曜日は土・日曜分が加わるから大量なんだ」と、亀次さんが魚をポリ袋にまとめて重さを量ると、亀三さんは箱の中を新しいポリ袋に取り替える。手際の良さに感心しつつ、次の設置場所へ。
湖岸のおまつり広場で作業をしていると、「おーい」と明るい声。振り返ると、お年寄りの男性がスーパーの袋にブルーギルを詰めて持ってきた。男性は約10年前に「迷人会」というグループを釣り仲間3人で結成し、釣った外来魚を亀ちゃんたちに渡しているのだとか。亀三さんは「回収作業は大変だけど、協力してくれる人がいるので元気が出る」と、うれしそうだ。
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別の場所のボックスをみると、魚だけでなく紙パック飲料のごみが入っていた。ごみは、亀ちゃんたちがその都度分別しなければならない。亀次さんは「弁当殻が入っていることも多い。中には紙おむつを捨てる親や、犬のフンを入れる飼い主もいる」と、肩を落とす。ボックスが壊されていることもあり、「一生懸命やっているのに、心ないことをされると最悪や」と亀三さん。
亀ちゃんたちは、壊れたボックスの管理も任されている。昨年秋に台風18号が襲来した際は、あちこちでボックスが壊れ、修理に追われて大変だった。
2人はこの日、大津港から反時計回りに瀬田唐橋、琵琶湖大橋を渡って南湖を1周。46カ所に設置されたボックスから、計213・2キロ分の外来魚を回収した。途中で、それぞれの地域の廃棄物処理施設へ集めた魚を持ち込み、午後5時ごろ県庁に戻った。
この日は、亀ちゃん3兄弟のもう一人「亀山亀助」さんも出勤して別行動を取っており、北湖の湖岸22カ所にあるボックスから計23・6キロ分を回収していた。
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県は、琵琶湖の生態系を守るため、釣った外来魚を湖などに戻す行為を条例で禁じている。このため、湖岸の釣りスポットなどに、釣った外来魚の回収ボックスを設置。そこへ外来魚を入れるよう、釣り客らに協力を求めている。
また、外来魚の生息数を減らすため、県漁連に対して外来魚1キロ当たり300〜350円の捕獲経費を補助したり、水中に電気を流し外来魚を気絶させて捕獲する「電気ショッカーボート」を出したりして、駆除を促進している。
昨年度の外来魚駆除量は172・4トンで、このうちボックスの回収量は約1割の14・2トン。決して多くはないが、県琵琶湖政策課は「生態系回復のため、あらゆる手段で駆除を進めることが重要」と、力を込める。
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ところが、亀ちゃんたちによると、自分たちが回収している目の前で釣った外来魚を湖に放す釣り客もいる。ボックスに入れるよう声はかけるが、大物は自分だけでなく他の釣り客も釣れるよう湖へ戻すのが、スポーツフィッシングの感覚らしい。
「車のナンバーを見ると、外来魚を湖にリリースするのは県外客が多い」と亀ちゃんたち。「地元の人たちは協力的だが、多くの人は外来魚がどれだけ生態系を乱しているか分かっていない。固有種と、それを獲る漁師の生活を守るためにも、琵琶湖のルールを守ってほしい」とこぼす。
亀ちゃんのブログについて県琵琶湖政策課に尋ねると、「外来魚駆除の取り組みに関心を持ってもらおうと、ブログ開設を提案したんです」とのこと。当時、回収作業に当たる人たちを取りまとめていた同課の担当者が「亀甲」という名字だったため、そこから回収作業員の愛称を「亀ちゃん」にしたそうだ。
ただ、残念ながら「書くことが毎回同じになっちゃうから」(亀次さん)と、今年度から更新を休んでいる。ともあれ、亀ちゃんたちはこれからも、湖の再生を思い描いてひたすら湖岸を奔走し、外来魚がいなくなるまで回収を続ける。
Posted by jun at 2014年08月19日 12:44 in 外来生物問題