世界遺産登録されている奈良市の春日山原始林で、ナラ枯れや外来種の侵食が進んでいる。「50年後には『普通の森林』になる」と危機感を募らせた奈良県は、外来種の針葉樹「ナギ」の試験駆除を始めるほか、民間とタッグを組んで保全活動団体を来月にも設立。春日大社の神山として伐採や立ち入りが制限されてきた原始林に定期的なパトロールを入れ、積極的な保全に乗り出す。
「このままだと原始林は荒廃していく。100年後も原始林を守るためには、保全活動専門の団体を作り、被害の拡大を防がなければいけない」。県・奈良公園室の中西康博室長は危機感をあらわにする。
春日山原始林は若草山に隣接。春日大社の聖域として千年以上も伐採が禁じられ、国の特別天然記念物にも指定されている貴重な森林だ。約250ヘクタールの広大な土地に、シイやカシ類などの広葉樹が自生する。
しかし、近年、原始林の存続が危ぶまれる状況が広がる。県は昨秋、原始林の奥で樹木4本がナラ枯れの被害に遭っていることを確認。今年2月には、被害は27本にまで拡大した。数年後にナラ枯れ被害のピークが訪れると予想される。
奈良公園で増え続けるシカが原始林に入り、広葉樹の種子や若木を食べる「鹿害」も発生。県は4月に文化庁から許可を受け、外来種の試験的な駆除に着手するほか、シカを食い止める防護柵の設置も進める。
この一方で、被害の早期発見につなげようと、県は民間の団体とタッグを組み、原始林をパトロールする「春日山原始林を未来へつなぐ会」を6月中旬をめどに設立することを決めた。従来の県の見回りでは「追いつかない」(担当者)恐れが出てきたためで、「官民一体で被害を食い止めたい」とする。
会は定期的にパトロールし、外来種の侵入状況、シカの防護策の効果も確認。迅速な対応につなげる。パトロールの“実動部隊”は原始林の保全活動に積極的なNPOなど3団体に協力を呼びかけ、了承を得た。
原始林は普段立ち入りが禁止されており、パトロールは参加者にとって「貴重な体験」にもなる。「ゆくゆくは、奈良に宿泊するようなパトロール計画を作って観光パッケージ化し、原始林の魅力を広めたい」(中西室長)と、県の構想は膨らんでいる。
会の活動を通じ、林業に関心を持つ若者を増やし、原始林の周囲に植林されているヒノキの樹皮の檜皮(ひわだ)をはぎ取る職人の技術を継承するなど、人材育成も目標に掲げる。県は「まずは多くの人に原始林や森林の保全について興味を持ってほしい」としている。
【用語解説】ナラ枯れ
体長5ミリほどの昆虫「カシノナガキクイムシ」が樹木に穴を開け、病原性の「ナラ菌」を持ち込むことで発生する。感染すると、樹木は枯死するほか、昆虫は別の樹木に移動するため、被害は拡散していく。
Posted by jun at 2014年05月27日 08:24 in 外来生物問題, 自然環境関連