絶滅危惧種の淡水魚「ニッポンバラタナゴ」の保護に取り組む八尾市のNPO法人などの活動が、成果を挙げている。生息地のため池の水を抜いて入れ替える農村の伝統的手法の導入が奏功し、繁殖させる技術を確立。ニッポンバラタナゴの生息を持続させるため、生息地域全体の環境整備に動きだしている。
大阪府と奈良県の境にある高安山(標高487メートル)のふもとに位置する八尾市の高安地区。多くのため池があり、ニッポンバラタナゴの数少ない生息地の一つだ。NPO法人「ニッポンバラタナゴ高安研究会」は1999年、土砂に埋もれていたため池を保護池として造成し、ニッポンバラタナゴを放流した。
■全国最大の個体群
保護池には水をポンプでくみ上げ、ろ過する装置を設置。ニッポンバラタナゴの産卵率が向上する効果はあったが、池底にたまったヘドロを取り除けず、ニッポンバラタナゴが卵を産み付ける二枚貝のドブガイを増やすことができなかった。
そこで着目したのが、農村の伝統的なため池管理方法である「ドビ流し」だ。農閑期に池底の栓を抜き、有機物を含んだ泥水を田畑に放流。水を入れ替え、ため池の生態系に好影響をもたらしてきた。
高安地区にある大阪経済法科大学花岡キャンパス(八尾市楽音寺)の「ふれあい池」で2006年、同大学の学生環境保全活動グループなどと共同で初めてドビ流しを実施。ニッポンバラタナゴを別の池に移し、水を抜いた。
06年に300匹だったニッポンバラタナゴは10年に約2万2200匹、11年に3万8500匹に増加。12年からは水を抜いた池底に栄養分が豊富な腐葉土を投入し、ドブガイの増殖に効果を上げている。
研究会の代表理事を務める同大学教授の加納義彦さん(61)は「ふれあい池は全国最大のニッポンバラタナゴ個体群。繁殖の技術は確立できた」と強調。ドビ流しによる保護活動は11年、日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録され、ふれあい池は13年の「全国学校・園庭ビオトープコンクール」で環境大臣賞を受賞した。
■持続可能な形に
ただ、ドビ流しは多大な労力が必要で、研究会が管理する保護池7カ所のうち、定期的に実施できるのはふれあい池1カ所にとどまる。加納さんは「ニッポンバラタナゴの生息を持続可能な形にするには、昔のようにため池が農業に活用される必要がある」と指摘する。
池に水が流れ込む森林の整備や休耕田の活用など高安地域全体の自然環境を保全する必要があり、研究会と大学、環境省、八尾市、環境団体などは14日、自然再生推進法に基づく「高安自然再生協議会」を設立した。1年をめどに全体構想を取りまとめることにしている。
ニッポンバラタナゴ コイ科で、体長約4センチ。繁殖期にオスの体がバラ色に色づく。近縁種のタイリクバラタナゴとの交雑やブラックバスなど外来魚による捕食が進んだため激減。生息地は大阪府東部と奈良、香川両県、九州北部に限られ、環境省のレッドデータブックでごく近い将来、絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧IA類」となっている。
Posted by jun at 2014年01月22日 13:35 in 外来生物問題, 魚&水棲生物, 自然環境関連