イノシシなどの野生動物による農作物被害の増加を受け、小田原市は対策を強化する。従来の追い払いに加えてニホンザルの個体数を減らす捕獲に乗り出し、イノシシ用わなの免許取得試験を秋から開催する。市環境保護課は「野生動物との共生を目指したいが、農業を諦めてしまうほど被害は深刻」と説明している。
県と市の調査によると、市内の農作物被害の実態はこうだ。
2012年度の被害額は、サル約180万円(被害面積約0・5ヘクタール)、イノシシ約1800万円(同約12・6ヘクタール)、ハクビシン約610万円(同約2・9ヘクタール)。11年度はサル約220万円(同約1・6ヘクタール)、イノシシ約630万円(同約5・4ヘクタール)、ハクビシン約150万円(同約1・4ヘクタール)。サル以外はこの1年で3〜4倍の急増ぶり。
サルの場合、農作物の食い荒らし以外の被害もある。12年度は市街地に出没しての威嚇が216件、車のドアミラーなど屋外の物品損傷59件、民家侵入6件など。児童1人が体を触られる被害も初めてあった。これらの件数は11年度に比べて2倍超になった。
こうした野生動物による被害は申告による集計で、申告しないケースを含めて「実態はもっと多い」と関係者は口をそろえる。
■人恐れず悪質化
従来の対策は電動エアガンや花火を使った人里からの追い払い。市は地元猟友会に365日体制で委託。JAの組合員は9地域で独自の追い払い隊を組織している。しかし、群れは山中に戻っておらず、いたちごっこの面もあり効果には限界があるという。
そこで市は風祭と板橋、箱根町湯本、南足柄市南部が行動域のサルの群れ「S群」(22頭)に対し、「人を恐れずに行為は極めて悪質」な雄3頭を特定、県の捕獲許可を得て箱わなを6月に設置した。
また、根府川や江之浦、湯河原町などで生息するH群(45頭)は、農園のミカンを食べて個体数が増えたため、群れの全体数を減らすことを目的にした初の捕獲に近く踏み切る。
■自衛策呼び掛け
一方、農地に侵入するイノシシは、市が許可して12年度に100頭を捕獲した。年間2頭ほど子を産み繁殖力は高く、ハンターの確保難もあって銃器による捕獲が追い付かないのが現状だ。
市は、農家の自衛策としてわなを積極的に利用してもらおうと、免許取得試験を9月から市内でも開催できるようにした。市内では大がかりな防護柵の設置はまだ少なく、餌となる廃棄農作物や隠れ場所になる茂みなどの誘引環境の除去も引き続き呼び掛けていく。
外来種のハクビシンも市街地を含めてほぼ市内全域で生息。ここ数年は100頭前後を小型のわなで捕獲しているが、「農作業小屋が出産場所になっている」(市農政課)ことなどから、増加傾向という。
農家の高齢化や後継者不足で増える耕作放棄地が、野生動物を人里に近づける一因になってきた。農作物被害の拡大がさらなる耕作放棄地を生み出す悪循環に陥る懸念も、関係者の間に高まっている。
保護一辺倒から人と野生動物の「緊張感ある共生」のかたちをどうつくっていくのか、地域全体の取り組みが問われている。
Posted by jun at 2013年07月07日 15:51 in 外来生物問題, 自然環境関連