◇生態系保全にボランティア
富士山、立山と並ぶ日本三名山の一つ、白山国立公園が今年11月、国立公園指定50周年を迎える。公園区域は石川、富山、福井、岐阜の4県にまたがり、一帯にはブナなどの貴重な原生林が残るほか、イヌワシなどの天然記念物も生息する。また、日本には石川県以西に白山(2702メートル)より高い山はなく、白山を植生の西限とする高山植物も多い。歴史と、自然環境が抱える課題を取材した。【松井豊】
◆修験道の聖地、山岳信仰の霊山
好天に恵まれた日には、日本海の海上からも頂きを眺めることができる。冬から春にかけて、白い雪をすっぽりとかぶった山影が青空に浮かぶ姿に「心が安らぐ」と語る地元の人は多い。
その威容から、白山は古代から霊峰としてあがめられてきた。717年には越前の僧泰澄(たいちょう)大師により開山したとされる。以後、修験道の一大聖地となり、登拝者が増えた。平安時代には加賀(石川)、越前(福井)、美濃(岐阜)から、三つの登山道「禅定道」が開かれた。禅定道は今でも、登山道の一部として使われており、往時をしのぶことができる。
◆高山植物が咲き誇る「お花畑」
夏の白山登山の楽しみの一つは、標高2100メートル以上の地点に上ると出合う、クロユリやハクサンコザクラなどが群生する「お花畑」だ。
石川県白山自然保護センター(白山市)の野上達也専門研究員によると、白山には約250種類の高山植物が生育するが、種類でいえば立山や北アルプスの白馬岳(しろうまだけ)の方が多い。ただし、白山には同種の植物が1カ所に大量に群生して花を咲かせる場所が多く、こうした場所は「お花畑」と呼ばれ、人気を集めている。見ごろは夏山登山のピークの7月中旬から8月中旬。
一方、オオバコなどの外来植物の種子が登山者の靴などに付着して持ち込まれ、生態系への影響が危惧されている。同センターではボランティアを募って、外来植物の除去作業に取り組んでいる。白山の自然を守るには、手つかずのまま保存することだけではなく、今や積極的に人が介入することが求められているのだ。
◆噴火の可能性がある「活火山」
白山は夏から秋にかけ、多くの登山客でにぎわうが、一般にあまり知られていないことがある。それは、白山が今も噴火の可能性が指摘される活火山ということだ。
気象庁によると、「活火山」の定義は、過去1万年の間に噴火した火山。現在、日本には東日本を中心に110の活火山がある。
江戸時代の古文書「荘厳講執事帳」には、「白山が音をだすことがおびただしくなり、しまいに数えられないくらいになり近国まで鳴り響いた。6月18日から6月20日まで、越前の国中に葦毛(あしげ)の馬の毛のようなものが降った」(1659年)など、噴火を裏付ける記録がある。
また、地質調査の結果、約2200年前の噴火では、白山の最高峰・御前峰から岐阜県側への約7キロの間に溶岩などが到達していたことが分かっている。
同センターの東野外志男研究主幹は「表立って分かるほどの噴火の兆候はみられないが、将来、火山活動が再開する可能性がある。決して死火山ではない」と警鐘を鳴らす。6月4日朝刊