「生態系を乱すものとしては特定外来生物のブルーギルやオオクチバスといった魚類が有名ですが、実は、水草類も河川に大きな被害を与えているんですよ」。とりわけ淀川での被害が顕著なのが、平成18年に特定外来生物に指定されたボタンウキクサだ。南米などの熱帯に広く分布し、日本には戦後、観賞用で持ち込まれた。見た目は水に浮かぶかわいいサニーレタスのようで「ウォーターレタス」とも呼ばれる。
「繁殖力が旺盛で、すぐに水面を覆い尽くすので、日本固有の在来種の成長を妨げます。また水門の近くで大量繁殖すると、水路をふさぐこともありますね。ブルーの美しい花を咲かせる南米原産のホテイアオイもすぐに大量繁殖し、水上輸送の妨げになることから『青い悪魔』と呼ばれているんですよ」。淀川でも、水質や生態系などを守るため、こうした問題ある水草の除去が欠かせない、と訴える。
9年間、国土交通省淀川河川事務所の河川環境課に勤務。淀川の生き物の状況や生態系の変化をつぶさに観察してきたが、今年3月に定年退職を迎えた。
名古屋出身の田村さんは、高校卒業後、一旦、地元の工作機械メーカーに就職するが、米国の生物学者、レイチェル・カーソンが1962(昭和37)年に出版した「沈黙の春」に心を打たれ、環境分野に関心を持つように。
「農薬などの化学物質の危険性を鳥たちの生態を通して訴えた世界的な大ベストセラーでしたが、農薬で生き物が死ぬということは、農薬を使った農作物や、それを食べた人間にも影響があるということに衝撃を受けました。それを突き詰めて考えると、人間にとって一番重要なものは『水』だと分かったんです」
田村さんは大学に入り直して、「試験管洗いでも何でもいいから水環境を良くする仕事に就きたい」と地元の国土交通省中部地方建設局(現中部地方整備局)に就職した。平成15年4月から9年間は国土交通省淀川河川事務所の「河川水辺の国勢調査」を担当した。
淀川河川事務所では、水質調査地点は流域の21カ所。調査は13カ所で毎月、残り8カ所では約3カ月のペースで行っている。有機物による水の汚れを示すBOD(生物化学的酸素要求量)を測定。微生物が一定時間中に水中の有機物(汚物)を分解する際に消費する溶存酸素の量を計るもの。水質調査を始めた昭和53年以降、値は下がり続け、淀川の水はきれいになっているという。
3月末で淀川河川事務所を退所した田村さんは「この30年、水環境の向上に貢献したいとこの仕事に就きましたが、同僚や周囲の人たちなどとも、同じ思いを共有できて幸せでした」。
今後もボランティア活動などで淀川に関わるという田村さん。
「ピンク色の卵のかたまりで知られ、イネを食い荒らすスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の話などは興味深く聞いてくれますね。そうしたことをきっかけに、淀川の自然の大切さや水質保全に気付いてもらえれば」と期待する。(岡田敏一)
【メモ】河川水辺の国勢調査
河川を管理している国土交通省と全国の地方自治体が、河川の適切な整備と管理のために、河川環境に関する基礎的な情報を収集する目的で平成2年から続けている。調査項目は「魚介類」「植物」「鳥類」といった6項目の生物調査と、河川の水際部の状況などを調べる「河川調査」や「河川空間利用実態調査」がある。生物調査は約5年で各項目が一巡するように、川(水系)ごとに毎年、調査項目を変えて実施している。
Posted by jun at 2012年04月24日 13:16 in 外来生物問題, 自然環境関連