嘉田県政2期目初となる当初予算案は、市町の抵抗を押し切って実施する一時預かり保育の無料券配布など、知事の意思が随所に反映された予算となった。重点配分したのは(1)育児(2)就労支援(3)地域医療(4)温暖化対策(5)琵琶湖再生(6)産業支援(7)魅力発信(8)防犯防災−−の8点。県は今回、初めて予算の編成過程での評価を公表したが、担当部長段階でゼロ評価となりながら最後の知事査定で「復活」したものもあり、ギリギリまで折衝した様子がうかがえる。
◇育児、就労支援に独自色
独自色を出した育児や就労支援の分野では、育児不安解消が狙いの一時預かり無料券などのほか、育児による離職率が高い女性の再就労支援の取り組みも新たに打ち出した。
総務省の調査では、県内では出産・育児のある30代女性の離職率が急増する一方、無職者の半数以上が就職を希望している。新年度予算では母親が仕事と育児を両立できる環境作りのため、10月をめどに近江八幡市の県立男女共同参画センター内に「滋賀マザーズジョブステーション」(仮称)を開設=計3069万円。全国2例目というハローワークや就職活動中の託児室も併設した施設で、職場から最寄りの保育所も紹介する。合わせて男性の育児休業取得奨励金=300万円=も新設した。
また放課後児童クラブの利用率が低く、子どもの小学校進学を機に離職する人も多いことから、クラブなどの設置促進に計23億4831万円を計上。母親向け以外の就労支援では、国の若者向け相談窓口と一体化し、ニート向けのカウンセリングにあたる臨床心理士を独自に配置する「おうみ若者未来サポートセンター」(仮称)=計770万円=や、若年性認知症患者の社会復帰支援=157万円=も始める。【稲生陽】
◇水質汚濁、貧酸素化解明も
琵琶湖の再生分野では、外来魚対策や策定30周年となる「びわ湖の日」(7月1日)関連事業に加え、水質汚濁や湖底の貧酸素化影響の解明などにも予算をつけた。
琵琶湖の外来魚は05年以降、毎年100トンずつ減っているとされるが、その多くはブルーギル。今回は肉食で在来種に被害の大きいブラックバス(オオクチバス)の親魚を狙って、湖岸に産卵する4〜7月の繁殖期に電気ショッカーボートで一網打尽を目指す=2000万円。またタモ網による稚魚捕獲なども含め、外来魚ゼロ作戦として計1億131万円を積み上げる。
知事査定で復活した湖底の低酸素化影響調査=954万円=では、老朽化で引退する自律式潜水ロボット「淡探」に代わり、ケーブルでつないで船上から操作できる潜水ロボットを配備。水深100メートルの湖底の生物の様子や低酸素の影響を究明する。また94年の大渇水以降、原因不明の水草の大量繁茂が起きている南湖の管理ガイドラインの策定=1861万円=に取り組むほか、水質を悪化させている原因不明の難分解性有機物のメカニズム解明=3209万円=を目指す。【稲生陽】
◇隠れた仏教美術など発信
県内の国宝や重要文化財の数は全国4位(805件)に上るが、その多くは地域にひっそりと埋もれてきた。新年度予算ではこうした文化財に光を当てようと、隠れた仏教美術などの発信に予算を重点化する。
まず仏教美術の活用策やそれらを収蔵する琵琶湖文化館の機能継承のための検討委を設置=357万円。合わせて寺社と連携した仏像の修復作業の公開や学芸員同伴の見学会、旅行業者らと協力した探訪ツアーコースなども企画し=計1095万円、ファン定着に力を入れる。
また、これまで近代芸術がメーンだった近代美術館(大津市)も方針を転換、県内の博物館と連携した初の仏像展「祈りの国、近江の仏像」=200万円=を開催する。観光交流局では今年度実施の「歴女」事業を発展させた「近江路・仏女ブロガー旅紀行」=200万円=を新たに始め、幅広い世代の開拓を狙う。県教委文化財保護課は「京都や奈良とは違う滋賀独自の楽しみ方を発信したい」と意気込む。【前本麻有】
………………………………………………………………………………………………………
◇主な新規・重点事業
【育児】
一時預かり無料利用券配布(保育士増員補助含む) 7220万円
【就労支援】
高校生や大学生向けの伝統産業弟子入り体験 154万円
複数の障害者作業所の連携による「おこしやす」三方よし仕事おこし支援事業 2838万円
【地域医療】
12年度開設の草津看護学校への補助 3億544万円
産科のある県内13病院のうち、助産師外来のない6病院への同外来設置補助 334万円
【温暖化対策】
低炭素社会づくりへの計画書届出など企業評価方法の検討 1450万円
電動補助付き自転車の率先購入 286万円
【琵琶湖再生】
富栄養化防止条例施行を機に制定した「びわ湖の日」30周年関連事業 計3821万円
【産業支援】
首都圏に拠点がない中小企業にレンタルブースを提供する「県東京ビジネスオフィス」(仮称)の整備 208万円
10年度で廃止する水環境科学館(草津市)への、国の目指す「日本版ハブ」誘致など水環境ビジネス推進 計1394万円
【魅力発信】
アール・ブリュットの推進や発信 計3293万円
【防犯防災】
危機管理センター設置に向けた基本計画策定 計928万円 2月9日朝刊