「クマの生息地を壊し続けてきた人間側としては、クマに食料を提供しなければならない」。自然保護団体・日本熊森協会(兵庫、会長・森山まり子)はこう訴え続けている。
クマが人里に大量出没した平成22年。環境省によると、同年4月から11月末までに捕殺されたクマは実に3419頭。餌となるドングリの不作が、出没の大きな原因といわれている。
同年11月24日。1機のヘリコプターが富山県上市町の奥山の空を舞った。つるされたバケツの中身は全国から集まったドングリとクリ。凶作の年に同会が行う「ドングリ運び」の光景だ。投下先は協会が所有する同町内の森林。計1トンを投下した。クマが人里に出てこないようにするのが目的で、森山は「出てきたクマを殺すのは生態系への人為攪乱(かくらん)」と指摘した上で次のように強調した。「クマは森の生態系の頂点。自然界のバランスを壊した人間と動物とのすみ分けを復活させたい」
しかし、ドングリ運びには批判も多い。環境省は野生動物が人里へ出没する理由の一つとして餌付けを挙げて中止を呼びかける。人間が与えた餌や放置したゴミに野生動物が依存している−というのだ。
だが、協会は「餌付けの目的は人間のところに引っ張り出してくること。ドングリ運びは奥山からクマが出てこないようにすることだから餌付けではない」と否定する。
動物との境界に、人間はどこまで介入すべきか−。9年の設立以来、協会は20府県に支部を開設、会員は2万5千人を超えた。
◆イルカ漁
古式捕鯨発祥の地である和歌山県太地町。人口約3500人の町は、イルカ漁の始まる昨年9月上旬から外国人の姿が目立つ。環境保護を標榜(ひょうぼう)する反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」が滞在し、監視活動を続けているからだ。SS幹部は「イルカやクジラを殺すことは悪い。長い間続けられてきているとか、文化であると考えられているとかは関係ない」と主張する。
地域の伝統漁としてイルカ漁を続けてきた太地町漁協の担当者は「400年前から地域に根付いて続いてきたこと。地域の事情があって生活の糧としている漁なのに、『かわいそう』という感情論の押しつけには憤りを感じる」と話す。
昨年3月には、同町のイルカ漁を批判した映画「ザ・コーヴ」が米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した。イルカ漁の監視を目的に町を訪れる外国人は確実に増えている。
◆タマゾン
「魚の飼育もインテリア感覚なんでしょう。生き物なのに…」。首都圏を流れる多摩川で外来種の放流行為を防ごうと、飼育放棄された魚を引き取る水槽「おさかなポスト」を管理している山崎充哲(51)はため息をつく。
熱帯魚のグッピーやエンゼルフィッシュ、外国産のナマズ−。多摩川でみつかった外来魚は200種類以上。その多様さから、アマゾン川になぞらえ「タマゾン」と呼ばれるほどだ。
ポストに届く魚は年間平均1万匹。届けられる魚の7割はヒレが割れていたり病気や奇形などの魚だ。
山崎はいう。
「日本中どこの川でも起こっていることだと思う」
◆漂流ゴミ
日本から約3500キロの北太平洋に浮かぶミッドウェー環礁。アメリカの海洋保護区に指定されている自然豊かな島だ。
平成14年、海洋ゴミの改善に取り組む団体「JEAN」(東京都)に、アメリカの海鳥研究者から大型の封筒が届いた。中身は、ミッドウェー環礁で死んでいたコアホウドリのヒナ3羽の腹から出てきたものだ。
事務局長の小島あずさ(53)が開封すると、ポリ袋に包まれた大量のゴミが出てきた。歯ブラシ、洗剤のキャップ…。入っていたゴミは約80点。メーカー名などから日本製だとすぐに分かるゴミが15点もあった。
ミッドウェー環礁周辺を流れる強い海流は、稚魚をはぐくむ海藻を運ぶ。餌が豊富なことから海鳥や魚などが数多く生息する。一方で、豊かな生態系をもたらす海流は今も、大量のゴミを運んでいるのだ。
一方、日本は“被害者”でもある。日本海や東シナ海の離島には、ロシアや韓国、中国からゴミが流れ着く。小島は訴える。
「海のゴミは海流や風に乗り、流れていく。自分たちの足元から離れていくからなかなか認識が進まないけれど、海はつながっているんです」
=敬称略、第1部おわり
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Posted by jun at 2011年01月11日 12:39 in 外来生物問題, 自然環境関連