◇専門家の遺伝子分析で判明 研究者、関係機関に原状回復求める
松本市安曇の北アルプス・上高地で近年、発生しているゲンジボタルは、外部から人為的に持ち込まれたとみられることが、専門家の遺伝子分析で分かった。安曇野市の植松晃岳・野生生物資料情報室代表が11日、長野市の信州大教育学部で開かれた信州生態研究会で発表した。植松代表は「上高地への外来種の移入は法律に触れる可能性があり、道義的・倫理的にも好ましくない」として、関係機関に原状回復を求めている。
植松代表によると、上高地の発生地は河童橋下流の梓川右岸にある池と小川。10年ほど前から見られるようになり、夏の発生期には観光客の観賞会も開かれている。ゲンジボタルは人里周辺の生き物で、標高が約1500メートルあり水温が低い上高地では本来は生息に適さないが、温泉水が流入して水温が高いため、発生しているという。
しかし、上高地にもともとホタルが生息していた記録はない。このため、植松代表は文化庁の許可を受けて成虫を採集し、ホタルの遺伝子に詳しい草桶秀夫・福井工大教授に遺伝子分析を依頼した。
ゲンジボタルは遺伝子レベルで東日本や西日本などのグループに大別される。両者の接点に位置する県内では、東西の2グループが混在することが知られている。
草桶教授は成虫6匹のミトコンドリアDNAを分析し、遺伝的類縁関係を調べた。その結果、いずれも西日本グループに属する県外の三つの型と一致し、県内の型とは異なることが分かった。
これらの型のホタルは京都や富山、東京、神奈川など複数の都府県に分布するため、草桶教授は「広い範囲の地域から移植(移入)された可能性が示唆される」と報告。「地域は特定できないが、外部から持ち込まれたとみられる」と話している。
上高地は文化財保護法による特別名勝・特別天然記念物、自然公園法による特別保護地区などに指定されている。文化財保護法では無許可の原状変更などが、自然公園法では特別保護地区での動植物の採集、放出などが禁じられている。
植松代表は「ホタルの持ち込みは、上高地の本来の自然を守ることに反する行為と言える。行政は法律に基づき、原状回復するための対策を取ってほしい」と訴えている。【武田博仁】12月12日朝刊