<うのめ・たかのめ>
◇市はNPOに委託し再生、企業が住民と農業交流 「一石三鳥」で注目
牛久市は昨年7月から、国の補助を受けた緊急雇用創出事業を活用し、霞ケ浦・北浦の水質浄化などに取り組むNPO法人「アサザ基金」(同市)に委託して、谷あいの耕作放棄地を水田に戻す事業に取り組んでいる。県によると、同事業のNPOへの委託は県内では珍しいという。市は再生した水田を隣接する企業に貸し、地域住民も協力する無農薬米を栽培する水田となる計画で、雇用創出と水田再生、企業の社会貢献活動が連動した「一石三鳥」の事業として注目されている。【山崎理絵】
事業は、同市奥野地区の工業団地脇にある1万2000平方メートルの耕作放棄地を地主から借り上げて3年がかりで手入れし、水田に戻すというもの。耕作放棄地と隣接した敷地に工場を持つ医療用品製造販売会社「ホギメディカル」(本社・東京都港区)が、従業員の福利厚生と地域住民との交流のため無農薬米の栽培をしたいと、市側に働きかけ、企業と連携した環境保全活動の実績を持つアサザ基金を巻き込んだ3者協働の「谷津田再生プロジェクト」に発展した。
計画では、ホギメディカルの従業員や家族が再生された水田でコシヒカリや酒米を無農薬栽培し、とれた酒米でオリジナルの日本酒を製造。アサザ基金は、さらに日本酒を販売し、売り上げを環境保全活動に回すという。
昨年夏までこの耕作放棄地は、ヨシが一面に伸び、だれかが廃棄した木材が横たわるなど荒れた状態だった。市企業誘致課の担当者は、「土地が(企業側に)すぐに渡せないほど荒れた部分は、緊急雇用制度を活用して整備していくことになった。タイミングがうまく合った」と説明する。現在ハローワークなどで紹介を受けた20〜60代の男性8人が携わっている。
雇用創出事業の現場責任者として作業員の環境調査や作業の指導を行っている同基金の山崎崇さん(34)によると、現在、ヨシは刈り終わり、くわで地中深くまで張った根を掘り起こす作業が進められている。耕作放棄地は霞ケ浦の水源にあたり、放棄したままでは水が流れないが、無農薬栽培の水田として活用することで水質浄化につながり、ホタルなど動植物のすみかを作り出せるという。
長年働いていた運送業の仕事がなくなり、昨年から現場で働く竜ケ崎市の須賀尾張之さん(48)は「不法投棄もあったようで荒れ果てていたが、自分で直していくうちに面白くなってきた」と手応えを語る。
県労働政策課によると、国の基金を活用した緊急雇用創出事業は11年度末まで実施される予定。県内では09年度に県と市町村合わせて約48億円の予算を計上し、176事業、約4000人分の雇用を生み出した。県内の事業の中身は、小中高校への非常勤講師配置▽文化財発掘出土品の整理▽施設の維持管理や除草▽外来魚の漁獲回収など、農林水産や土木、教育、観光、清掃など多分野にわたる。大多数が自治体の直接事業か事業者への委託で、NPOへの委託はまだ少ないという。2月11日朝刊