環境省が絶滅危惧(きぐ)種に指定している淡水魚「イチモンジタナゴ」を、捕獲が禁止されている滋賀県の琵琶湖産と偽って、ネットで販売したとして不正競争防止法違反(原産地の虚偽表示)の疑いで埼玉県伊奈町の会社員、中根弘倫容疑者(40)が滋賀県警に逮捕された。中根容疑者は自宅で、国が捕獲を禁じている絶滅危惧種で天然記念物の淡水魚「アユモドキ」や「ミヤコタナゴ」も無許可飼育しており、文化財保護法違反容疑も持たれている。中根容疑者は会社員生活のかたわら“副業”で観賞用淡水魚の卸売業を営んでいたという。
■まるで観賞魚ショップ
捜査関係者によると、中根容疑者の自宅には飼育設備の整った多くの水槽が並び、さながら観賞魚ショップのようだったという。水槽ではアユモドキやミヤコタナゴが無許可で飼育され、特にミヤコタナゴは約400匹が水槽で飼われていた。小さな稚魚もいたといい、繁殖させていた可能性があるという。
捜査関係者は「ほかにもさまざまな魚がいた。自分で繁殖させて、闇ルートに流していたのでは」とみている。
環境省によると、絶滅危惧種に指定されている淡水魚類などは約140種類。このうち国の「種の保存法」により捕獲などが禁止されている種類は、アユモドキやミヤコタナゴなど4種類だけだ。
こうした魚は、闇市場で売られ、高額に取引されている。県警によると、アユモドキの密売価格は1匹2〜3万円、ミヤコタナゴの密売価格は1匹3〜4万円にもなるという。
■DNA鑑定が決め手に
「琵琶湖産のイチモンジタナゴがネットで販売されている」
滋賀県警にこんな通報が寄せられたのは今年6月のことだった。
イチモンジタナゴは、かつては琵琶湖でも広くみられたが、現在は北部の数カ所にしか生息しておらず、滋賀県は条例で捕獲を禁止している。岐阜や岡山、九州などにも生息しているが、琵琶湖産は希少価値が高く、マニアの間で人気という。
通報を受けた県警は捜査に着手。イチモンジタナゴは生息地によってDNA型も違うといい、押収した魚のDNA鑑定を専門家に依頼。滋賀県産ではないことを確認し、原産地の虚偽表示の疑いがあると判断した。
中根容疑者の逮捕容疑は、同月、滋賀県産ではないイチモンジタナゴ20匹をネットオークションで販売する際、「天然採取、産地直送 琵琶湖産」「琵琶湖にて採取」などと産地を偽装して表示したとしている。 「希少価値のある琵琶湖産と表示することで、マニア受けをねらったのは間違いない」と捜査関係者は指摘する。
■活気づくネット市場
今回の事件の背景には、ネットと宅配の急速な普及があるとみる関係者も多い。
観賞魚飼育情報誌の編集担当者は「わざわざ都会のペット販売店に出向かなくても、地方にいながら希少価値のある魚が、店で販売されるより安い値段で手に入る。今や膨大な数の海水魚や淡水魚がネットで売買されている」と話す。宅配技術も向上し、魚を輸送する際に、袋に酸素や水を入れて、2〜3日間は持つという。
売買が容易になると、マニアの心理につけこんで一儲けしようという者が出てくるのが世の常。
「『めずらしい』というだけで飛びつくマニアもいる。絶滅の恐れがあるほど、プレミア感がついてくる」とある専門家は説明する。「『とりこ』といわれる密漁グループの存在もある」と指摘する。
「しかし、いくら好きだからといって、行き過ぎた不法な販売は許されない」と語気を強めた。
県警は中根容疑者が、希少価値のある魚を不法に販売していた可能性があるとみて詳しい実態について調べを進めている。
Posted by jun at 2009年11月02日 13:37 in 魚&水棲生物