◇漁協側、水余りや生態系保全訴え
国土交通省が進める霞ケ浦導水事業を巡って、栃木・茨城両県の8漁協が那珂川取水口(水戸市)の建設工事差し止めを求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、水戸地裁(都築民枝裁判長)であり、国交省側は請求棄却を求める答弁書を提出した。昨年3月から水戸地裁で係争中の仮処分申し立て同様に、真っ向から対立する構図となった。【原田啓之】
漁協側は取水口にアユの稚魚が吸い込まれ漁獲量が減少する上、「かえって霞ケ浦の水質を悪化させる恐れがある。茨城県はすでに水余りの状態にある」と主張した。国交省側は取水時間を制限するなどの対策で、アユの稚魚はほとんど吸い込まれず、「(漁協側の主張は)客観的根拠がない」と指摘。双方とも仮処分申し立ての審尋と同様の主張を繰り返した。
証人台に立った那珂川漁業協同組合長の君島恭一さん(75)は「那珂川の天然アユの遡上(そじょう)量は全国一。首都圏では水が余っており、目的が消えた30年以上前の計画によって、自然生態系を壊さないよう訴えたい」と述べた。
漁協側は閉廷後、水戸市内で会見。君島組合長は「全国の湖沼、内水面の問題に影響してくるので、何とか勝利したい」と改めて訴訟の意義を強調した。遠藤〓郎・栃木県那珂川漁業協同組合連合会長(71)は「いよいよ本番が始まったと気が引き締まる思いだ」と述べた。
国交省は07年9月ごろから漁協に取水口の工事を行うと通告しており、昨年着工して09年度中に工事を終える予定だった。しかし、工事現場周辺で漁協関係者が船などの漁具を設置しているため、河川内では工事には入れない状況だ。
国交省霞ケ浦導水工事事務所は「勝手に工事を進めることもできないので、漁協を通じて撤去をお願いしている」というが、漁協側は応じない姿勢だ。
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■ことば
◇霞ケ浦導水事業
霞ケ浦と那珂川を那珂導水路(延長約42・9キロ)、霞ケ浦と利根川を利根導水路(同約2・6キロ)とそれぞれ地下トンネルで結ぶ事業。霞ケ浦の水質浄化と、利根川と那珂川の渇水対策を目的にする。総事業費は約1900億円、15年度完成予定。那珂川取水口からは毎秒15トンを取水する。
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◇霞ケ浦導水事業の経過◇
【76年 4月】調査に着手
【84年 4月】霞ケ浦導水工事事務所発足
【85年 7月】事業計画策定。10月に着工
【93年 8月】第1回計画変更(事業費が約1600億円から約1900億円に、工期が93年度から00年度に)
【96年 3月】利根導水路完成
【01年 9月】第2回計画変更(工期を10年度)
【02年10月】第3回計画変更(那珂導水路の取水量を削減)
【07年 9月】那珂川取水口の工事着工を漁協側に伝える
【同 年12月】国交省が、工期を15年度に延長すると発表
【08年 3月】7漁協が那珂川取水口の工事中止の仮処分を水戸地裁に申し立て
【09年 3月】8漁協が那珂川取水口差し止め訴訟を水戸地裁に提訴
6月11日朝刊
Posted by jun at 2009年06月21日 21:04 in 内水面行政関連