国土交通省近畿地方整備局は、今後30年の具体的な川づくりの内容を示す淀川水系河川整備計画を先月末、策定した。大戸(だいど)川ダム(大津市)の扱いが注目を集めているが、県内ではほかにもさまざまな事業が位置づけられた。「環境保全」や「住民参加」を盛り込んだ新河川法を反映し、琵琶湖の生態系への配慮や住民力を生かす取り組みも目立つ。治水・防災面も含め、主な事業を紹介する。
■環境 水位操作を弾力的に
琵琶湖での主な取り組みとして、水位操作の改善▽陸域と水域の連続性確保▽南湖再生プロジェクト−が挙げられる。諮問機関・淀川水系流域委員会からの意見を受けてすでに実施されている事業が大半で、引き続き事業を進めながら効果を検証するという。
水位操作は、自然のリズムと異なる水位変動が在来魚の産卵や成育に悪影響を及ぼしていることなどから、弾力的な操作方法の確立を目指す。水辺の連続性確保では、水路や内湖が湖岸堤で分断されている状況を改善し、湖辺で繁殖する魚を保護する。南湖再生は湖底の穴の埋め戻しなどを進め、セタシジミの回復を目指す。
ほかに、野洲川で砂れき河原とヨシ帯を再生▽瀬田川に流れ込む川の段差の解消▽琵琶湖の水位低下の緩和−などを盛り込んだ。
琵琶湖環境科学研究センターの西野麻知子総合解析部門長は「個々の取り組みは評価できる」とするが、「どのような琵琶湖を目指すのかという目標が不明確だ。事業効果を検証し、次の取り組みに生かすためにも、総合的な視野からの目標設定が欠かせない」と指摘する。
■治水・防災 洗堰の全閉解消目指す
整備計画で最大の論点となったのが治水・防災の施策だ。
治水計画の根幹の1つ大戸川ダム(大津市)について、整備局の尾澤卓思河川部長は10日の県議会特別委員会で、「この計画では本体工事はできない。行う時は計画を変更する」と断言し、あらためて「凍結」を強調した。
丹生(にう)ダム(余呉町)は、天井川の姉川・高時川の浸水被害の軽減に有効とした。ただ、建設目的の一つである異常渇水時の下流への水供給については、(1)通常のダムとして建設し、ダムに水をためる方法(2)穴あきダムとして整備し、琵琶湖の水位を上げることで渇水に備える方法−の2つがあることから、「最適案を調査・検討する」とした。
県が悲願とする瀬田川洗堰の全閉解消は、「見直しを検討する」とした。だが整備局は前提条件として大戸川ダム整備や宇治川・瀬田川の改修が必要としていることから、整備計画期間内での実現は不可能とみられている。ただ、計画に位置づけられた瀬田川の河道掘削や天ケ瀬ダム再開発(宇治市)が行われれば、全閉されたとしてもその時間は現状より短縮される。
県河港課の中谷惠剛課長は「大戸川の治水はダムが『凍結』とされたことから、河道改修を県事業として優先的に進めていく。天ケ瀬ダム再開発などで瀬田川洗堰の全閉解消が近づくことは県としてありがたい」としている。
■住民参加 河川レンジャー充実
貴重な自然や地域の風土、文化をはぐくむ川を守り育てるため、「人と川のつながりの再構築」を掲げた。
具体的には、「住民参加推進プログラム」の作成▽行政と住民をつなぎ、住民の川への関心を高める「河川レンジャー」の充実▽住民団体との連携−などを挙げている。
県内では瀬田川のあり方を検討する「瀬田川水辺協議会」がすでに活動しており、散策路整備に意見を述べている。高島市などで魚の生息調査などに取り組む「お魚ふやし隊」への支援も計画に盛り込んだ。計画をよりよいものにするためにも、住民の積極的な参加が求められている。