2004年11月24日

古沢勝利インタビュー その1

PART 1

古沢勝利インタビュー その1
Interview with Katsutoshi Furusawa #1
 今シーズンは、日本人アングラーがアメリカで大活躍した1年だった。深江真一さんがWal-Mart FLW TOURでルーキーイヤーながらアングラー・オブ・ザ・イヤーを獲得し、大森貴洋さんはCITGO バスマスター・クラシックで優勝。まさに私たち日本人にとって忘れることができないシーズンとなった。そんな2人の活躍に隠れてしまっている感は否めないが、今シーズンは古沢勝利さんにとってもビッグイヤーとなった。
 古沢さんは2002年度からFLWツアーのコ・アングラー部門(アマチュア部門)に参戦し、今シーズンで3年めを終えた。参戦初年度から輝かしい成績を残し、2002年度総合10位、2003年度総合8位、2004年度は総合8位でフィニッシュ。3年連続でチャンピオンシップにクオリファイされていることは見事のひと言に尽きる。しかも2002年度のチャンピオンシップでは4位に入賞、今シーズンは第3戦のオールドヒッコリー戦で優勝を成し遂げるなど、その活躍には目を見張るものがある。
 ご存じのとおり、彼はJBワールドシリーズを経由してFLWツアーへと辿り着いたわけだが、JB時代にはできなかったことをアメリカで経験しているという。そこで今回は、私たちのような日本人でも比較的参戦しやすいように思われるコ・アングラー部門について、そしてアメリカでの体験についてロングインタビューを行なった。

basswave:古沢さんはトーナメントに出場する前はバイクのレースをやっていたそうですね。
古沢勝利 (以下:古沢):そうなんですよ。でも、20年以上前からバス釣りはやってたんです。ただ、釣りはいつでもできるからいいかなと考えて、バイクに入れ込んでたんです。バイクのレースもまずますのとこまでいって、次に何をやろうかなと考えたときに「じゃぁ、(バスの)トーナメントに出るか」と。

basswave:突然バイクを止めてバストーナメントですか!?
古沢:当時務めてた会社の同僚の間で、ちょうどバス釣りが盛り上がってまして。「じゃぁ、道具持ってるから行くよ」って。そうしたら、道具が進化してた(笑)。そのあと、NBCに出て、JBイースタン戦に出て、マスターズやって、ワールドシリーズに至ったんです。この時点ではアメリカに行くかどうか決めてはいなかったんですけど、「いずれやりたいな」とは思ってました。JBは5年間しかやってないんですけど、3年めくらいで行きたいという気持ちが強くなりました。当時(1999年ごろ)は「(アメリカに)行きたいんだ」なんて話すと、「馬鹿じゃないの?」と思われる時代だったから、誰もに言いませんでしたけどね。

basswave:それでも何かのきっかけとか区切りがあって、JBからアメリカにシフトするわけですよね。
古沢:JBワールドシリーズに昇格して1年めで優勝して(河口湖戦)、これも影響したのかもしれないけど、一番は資金的な部分ですよ。その当時並木(敏成)さんがアメリカに行ってて、同じ八王子に住んでるので、何回か会って話をしたんです。そうしたら、年間800万円かかるっていうんです。それでウチのカミさんと相談して、「とりあえず800万貯めようよ。貯まったらゴーだね」と。でも実際にはそこまで貯まらずに行っちゃうんですけどね(笑)。

basswave:5年でJBワールドシリーズまで昇格して、初年度に優勝。これはすごいことだと思います。JBへの、日本のトーナメントへの未練はありませんでしたか?
古沢:優勝しちゃって、雑誌の取材なんかも増えて、スポンサーさんもついてくれて……だんだん自分でもJBにいるのが楽しくなってきたんですが、一方でこれはヤバいって思ったんです。なんとなくチヤホヤされはじめて、「このままJBにいたら、居心地がよくてアメリカを諦めてしまうかも」と思ったら、アメリカが遠くなりそうで怖かった。だから、スッと行ってしまうことになるんですよ。

basswave:そうすると、1年分の資金が調達できないまま渡米するわけですよね。資金的な面など、不安はありませんでしたか?
古沢:当時は完全に(アメリカに挑戦することを)ナメてた。「スポンサーさんもいるし、なんとかしてくれるなか」と思ってたんです。ただ、いろいろ考えましてね。何も結果が出せていないのに「お願いします」というのも……。僕がスポンサーさんの立場だったら「ふざけるな」と思うだろうと。当時は日本のバス事情もまだ景気がよかったんで、「アメリカなんかより、日本でのプロモーションをしっかりやってくれ」と思うのが当然ですよ。自分だけ好きな方向へ行っちゃうわけですから、全部ゼロにもどしたほうが迷惑がかからないと思ったんです。そこでスポンサーさんに理由を話して、(スポンサーが)ゼロになった状態でアメリカに行ったんです。

basswave:JBには2000年度まで出場していました。2001年度は出場してませんので、2001年からアメリカということになりますが、公式記録としては2002年からFLWツアーのコ・アングラー部門にエントリーされてます。この空白の時間は……。
古沢:もう、この当時はホントにナメてて、エントリーフォームを送れば出られると思ってたんですよ。そうしたら、全部がウェイティングになっちゃって、結局2001年は出られなかったんです(苦笑)。そんなとき、Basser誌でライターをやってらっしゃる雨貝(健太郎)さんに「FLWにはアマチュア部門があるから、それに出て、勉強しながらウェイティングを待つのもいいんじゃない」とアドバイスをもらって、それもいいかなと思ったんです。

basswave:ということは、今ではFLWツアーのアマチュア部門に集中して出場していますが、当時はBASSにエントリーフォームを出していたんですね。
古沢:そうなんです。イースタンオープンとセントラルオープンにエントリーしました。ボートはないんですけど、ボーターとしてエントリーフィーを支払って出場しようと。結局2001年には出られなくて、年を越して2戦だけ出られたんです。だから2001年は(日本で)ブラブラしてました。2002年はFLWのエントリーができて、それに出場して。そうしたらBASSのイースタン戦のウェイティングから呼ばれて試合に出られたんです。

basswave:BASSとFLWでは雰囲気が違いましたか?
古沢:僕は英語が話せないから、「ボートに乗せてくれ」とか「プラを一緒にさせてくれ」とプレートに書いて、マリーナをウロウロしてたんですけど、BASSの大会では僕もボーター枠で出てますから、ライバルだし、乗せてくれないんですよ。

basswave:プレートを持ってお願いするのは、度胸を決めてやらないとできないと思いますが。
古沢:すっごく緊張しますよ(笑)。最初なんか、怒鳴られたらどうしようと思って、近づくことさえできなかった。だんだん慣れてくると、セリフも決めておいてボートに近づいてそれを話して。釣りをしてる間はわかる範囲で多少しゃべりましたけど、ほとんど話さなかったですね。

basswave:最初に乗せてくれたのは、誰でしたか?
古沢:テリー・シーグレイブスって知ってますか?

basswave:知ってますよ。フロリダのキシミーのアングラーですよね。ガン撲滅運動とかやってますよね。
古沢:最初彼は、クルマの中で電話してたんですよ。それでダメだなと思ってたら「来いよ」と合図してくれた。で、次の日たまたまマリーナで会ったら、「今日も捜してるのか?」って。それでまた乗せてくれた。それ以来、彼とは友達関係っていうか、つき合いで彼が主催するトーナメント(レイク・トホで開催されているガン撲滅のチャリティー・トーナメント)にも出てます。あれ以後も別のレイクで乗せてくれましたね。

basswave:プラクティスの同行をお願いする場合、誰が大会に出場しているアングラーだと判断するんですか?
古沢:それも難しいところで。ボートに団体のパッチを張ってたりするとわかるんですけどね。マリーナで「来い来い」って手招きしているオジサンがいて、乗せてもらったことがあるんです。でも、その人はスゴい酒臭くて絶対選手じゃないという雰囲気だった(笑)。プラだと思ってたのに、プラとは思えないくらい適当な釣りをするんですよ。ボートでガーッと走り廻ったり、僕が釣ると「おまえは釣りが上手いな」なんて笑ってる。絶対、選手じゃないと確信しました。たまたま釣りに来てた人だったんでしょうね。それ以降は、かなり人を見る目が肥えてきたと思います。

basswave:いまはもう、ある程度決まったパートナーがいるそうですね。
古沢:去年からパートナーがひとりいて、その人とずっとやってる感じです。乗せてもらう選手にも役立たないといけないと思いはじめてたんです。せっかく乗せてもらってるのに、その人にプラスにならないとお荷物になる気がして。僕が釣ったバスが決め手になって、その人のプラクティスがいいものになれば最高ですよね。朝一番乗りでマリーナに来る選手は絶対に本気のアングラーだろうと思って、朝一番にパートナー探しをすることにしたんです。そこでクラーク・ウェンドラントと会って、それ以来彼とずっとプラクティスをしています。

basswave:クラーク・ウェンドラントはFLWツアーではビッグネームですよね。レッドマン時代から強い選手で、オールアメリカンで優勝したこともあるアングラーじゃないですか。
古沢:そうなんですよ。僕も彼の活躍を知っていたんで、一度は同船させてもらいたいと思ってたんです。でもスゴい形相でスロープに入ってきたんですよ。声もかけづらい雰囲気でしたが、意を決して声をかけたんです。最初は「ノー」って言われそうな雰囲気だったんですけど、「俺はプラクティスのパートナーを持たない」なんて言うんです。「コ・アングラーは(他のボーターにプラの内容を)喋っちゃうから」と。僕なりに誠意を伝えたところ「日本人選手にも喋るなよ」と言われて、やっと同船するオッケーが出た。ボートに乗ってからもブツブツはじまって、「コ・アングラーは役に立たない」とか「一緒に乗っても俺にはメリットがない」ということを言うんです。「なんか、イヤな雰囲気になってきたな」なんて思って釣りしてたんですよ。でも、釣りが終わってマリーナに帰ったとき、僕のことを認めてくれたのかわからないですけど、「明日はどうするんだ? 明日も捜すのか?」と言うんです。僕がイエスと答えたら「だったら、明日も同じ時間にここに来い」と言われまして。

basswave:感動的な出会いですね。ドラマの世界のような。
古沢:いま思えば、そんな感じですね。でもあのときは、ずっとドキドキしてましたよ。とにかく「役にたたなきゃならない」って思ってましたから。それで試合がはじまって会場で会うと、「今はこういう状況になってるから、このルアー使ったほうがいいぞ」ってルアーをくれたり。で、「次の試合は出るのか? また捜すのか? 俺はこのモーテルに泊まってるから、(次の会場に着いたら)電話してこい」と言われて……それが彼とのパートナーシップのはじまりだったのかなぁ。

basswave:選手は自分の釣りで精一杯だと思いますが、声をかけてくれて、ルアーやパターンの変化のヒントもくれて……いい人ですね。
古沢:ただね、彼とのプラは大変なんですよ。日の出から日没まで釣りっぱなしなんです。レイクによっては、日照時間の関係で最低12時間、最高16時間とか湖上に浮いていたり、プラで1週間でしょ。本戦が3日間(コ・アングラーは3日間の日程で開催される)あって。倒れますよ(笑)。ホントにね、本戦がはじまるとボロボロです。仮病でも使いたいくらいです (笑)。

basswave:勝つためには、それだけの労働力が必要なんだと。これがプロの世界なんだということですね。
古沢:“仕事”なんですよ。「職業、バスプロ」なんです。徹底的にプラをするのも仕事で、勝って賞金を稼ぐのが仕事なんです。だから、日本でやっていたころとは意識的な部分でまったく違いますね。クラークは毎年総合5位くらいにはつけてますし、スゴい選手だと思います。

basswave:では、ぶっちゃけてお聞きしますが、ノンボーターはルール上、大会中にボーターにどこに行きたいと意見できません。そうすると、ノンボーターがプラに参加する意味はどれくらいあるのだろうかと。
古沢:実は、これが結構意味深いことが多い。今は別として、最初は全部が新鮮ですよね。自分でボートを走らせてるわけじゃないので、レイクの形状くらいしかわからない。でも、水質、ストラクチャーの種類、水草の種類などを知っておくと、本戦で持っていくルアーが決まりますから。ただゲストとして出場するんじゃなくて、あくまでも選手として、でもノンボーターで出てますってことですよね。練習するに越したことはない。タフなときほど練習しておいたほうが、本戦でショートバイトに慣れていたりするし。アメリカ人が普通にやってることを、航行にしても、キャスティングの距離とかも、そんなのを試合前に経験しておく意味で、1年めのプラは重要だったと思います。もちろん2年め以降もプラから勉強になることは多いです。

basswave:ボーター選手は約30万円のエントリーフィーを支払って参戦しています。ボートの操船やエリアの選定もすべてボーター側にあります。となると、ノンボーター選手は「移動するから、すぐにタックルを片付けろ」と言われれば従わなければならないし、「あと10キャストだけさせてくれ」とは言える立場にはないと思います。ボーターは自分が撃ちたい方向に船首を向けますし、ノンボーターはオフショアの広い景色を見て釣りをすることも多い。そうなると古沢さんは、日本でボーターをやっていたころとは異なる戦略を考えているのでしょうか?
古沢:基本的にはそういうことです。日本にいて何もしてなかった2001年は、ずっと利根川に行ってアメリカを想定した練習を積んでました。ただ、アメリカに行ってさらに思ったんですけど、使ってる道具は違っても、(バス釣りに対する)考え方は一緒なんですよね。ボーターがすでに撃ったスポットは撃たないとか、ボーターが使ってるものとは違ったルアーを使うとか。バックシートからでも有効なルアーを選択したり、それはノンボーターとして勝つための方法論です。「レッツ・ムーブ!」といきなり言われたとき、いつでも動けるようにライジャケはずっと着たままだったり。ロッドも散らかさないで、ある程度整頓しておいて、移動の際に邪魔にならないようにセットしておいたり。ノンボーターとしてあるべき態勢でやってます。

basswave:ノンボーターの鉄則はありますか?
古沢:当然あります。ペアトーナメントなら相談してエリアを決めますけど、FLWはプロアマ戦なのでボーターが全部決定します。だから、彼らは何も言わずに自分のエリアにボートを走らせます。それで到着したら、まず「何でこのボーターはこのエリアに来たのか」を素早く理解するようにしてます。プラでよかったからなのか、何なのか。とにかくボーターがなぜ「ここでやりたい」と思ったのかを考える。それからボーターがやろうとしていること、やりたいこと、どんなバスをねらっているのかを見て、想像して、1秒でも早く理解して自分の釣りに反映させないといけない。第二に、ボーターと同じ魚、同じ状態の魚を釣るのか。また別の魚をねらうのかを決定しないといけないんです。

第2回へ続く……。

(古沢さんは現在東京都八王子市にあるプロショップ「Flutter八王子本店」の支店長でもある。お店の詳細は:〒192-0015 東京都八王子市中野町2680-7 Tel/fax:0426-27-4130。古沢勝利オフィシャルサイト

Posted by jun at 2004年11月24日 08:17 in Interviewave

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