2006年01月10日

The Interviewave ゲイブ・ボリバー インタビュー

The Interviewave

ゲイブ・ボリバー  インタビュー 
Gabe Bolivar Interview

gabe065-2.jpg 2005年11月2-5日にかけてアラバマ州ピックウィック・レイクを舞台に開催されたエバースタート・シリーズ・チャンピオンシップ。この大会で2位に入賞したのが、カリフォルニア州出身のゲイブ・ボリバーである。彼は2003年度BASS CITGOバスマスターツアーに初参戦。しかしトップアングラーたちの壁は高く、わずかワンシーズンでツアー挑戦から撤退。再度、西海岸をベースに地盤を築くことになった。あれから2年。ボリバーは全米レベルで通用する実力を備え帰ってきた。そんな彼の釣りをチャンピオンシップで支えたのが、ジャパニーズ・ハンドメイド・クランクベイトだった事実はあまり知られていない。今回は、そのあたりを詳しく聞いてみた。

basswave:ゲイブさんはまだお若いですけど、いつごろからバストーナメントに出場されていますか?
ゲイブ・ボリバー(以下:ボリバー):そうだな、BASSに初参戦したのは1999年だけど、それと前後してWON Bassや地元のクラブトーナメントに出ていた。実はキャリアは10年くらいあるんだよ。

gabe066-2.jpg basswave:西海岸には西海岸エリアの大会だけでプロアングラーとして生計を立てている人が少なくありません。賞金は少ないですが、試合数は多いですよね。
ボリバー:そうだね。BASSやエバースタート(2006年からはストレーン・シリーズと改名)は敷居が高いという人は、WON BassやABA、BFL、フェデレーションに参戦するのもいい。トーナメントの雰囲気は味わえるし、プロを目指しているのでなければ、充分に楽しいと思うよ。

basswave:ゲイブさんはBASSウェスタンオープンを通してバスマスターツアーにクオリファイされましたが、ワンシーズンで……KOされた感じでしたね。
ボリバー:ハハハ、ホントにKOされたね(爆笑)。西海岸出身のアングラーにとってツアーは夢の世界さ。南部の人も夢に感じるだろうけど、彼らとは違った夢の持ち方をしている。「バストーナメントの本場に挑戦するんだ!」というような熱いものがあるけど、現実は甘くない。30日間のオフリミット制があるし、3日間の公式プラクティスでケビン・バンダムやラリー・ニクソンといった“すでにそのレイクを釣ったことのある有名選手”と競り合うのは難しい。実際には丸2日間と半日しかレイクには出られない。あとの半分は本戦に向けてタックルを整理したり、パターンを考え直したりするだろ。水質、気候、規模が異なるレイクへ初めて行くんだ。簡単には勝てないよ。

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.::ブリーフ・バイオグラフィー::.

ゲイブ・ボリバー
(GABRIEL BOLIVAR)
1975年10月30日生まれ。カリフォルニア州在住。幼少のころからバスフィッシングにいそしみ、Wal-Mart FLW TOURで活躍中のアート・ベリーから釣り、プロトーナメントのノウハウを習う。フィッシングショーなどに参加するため、2度の来日経験を持つ。2003年 BASS CITGOバスマスターツアー・クオリファイアー。2005年度エバースタート・シリーズ・チャンピオンシップ2位。

basswave:では、そういったルール的な部分がネックになって1年で撤退したのですか?
ボリバー:それが半分。あとの半分は資金的な部分だよ。ツアーが半分終わった時点で資金のほとんどを消費してしまった。2002年までは大工をしていたんだ(現在はレンジャーボートのセールス業)。日常生活をしながら、ツアー用に貯金していたけど、それを使い果たしてしまったんだ。ツアー終盤はモーテルにも泊まれず車中泊だし、栄養のある食事も取れないし、体調を崩したら戻らない。もう、ボロボロだったね(笑)。さらにお金がないからガソリンを気にしながらプラクティスをする。もう、日々の生活に精一杯でまともにトーナメントに臨める状態じゃなかったね。釣りの実力があっても、釣りを支える要素がしっかりしていないとツアーでは勝負にならない。いろんなことを教わったよ。gabe068-2.jpg

basswave:では、エバースタート・チャンピオンシップについて伺います。エバースタート(FLW系大会)にはオフリミットがありませんので、自由に、何日間でもプラクティスできます。ツアーでの教訓もあったでしょうが、何日くらいプラクティスしましたか?
ボリバー:4日間しかできなかった……。(ため息をついて)実は車上荒らしに遭ったんだ。当初は6日間プラクティスをする予定だった。30時間をかけてカリフォルニア州から乗り込んだ。僕は暗いうちにレイクに出て、暗くなってから帰ってくる。プラ初日、マリーナに帰ってきたら、クルマに積んでおいた着替え、タックルボックスを全部盗まれていた。で、その夜は警察に行って盗難の手続きをして、翌日は着替えとか、ルアーとかを買いに行った。そんなこんなで2日間を棒に振って、結局4日間しか練習できなかった。とにかく落ち込んだよ。

basswave:そうすると、その後のプラクティスにも影響しますね。
ボリバー:だけど、気持ちを切り替えてやるように努めた。バスフィッシングのベストシーズンではなかったし、情報によると普段より水質が悪いと聞いていた。ノーバイトが続いて、移動を繰り返して、とあるリップラップを発見した。クランクベイトで釣ってみたら、なんとなく反応がある。そこで、WON Bass U.S. OPENのときにbasswaveのスタッフからもらったジャパニーズのハンドメイド・クランクベイトを投げてみた。そうしたら、3Lb、2Lb、7Lb、5Lbとバッシバシ食ってきたんだ! 同じ場所というより、長いリップラップを流しながら、同系のストラクチャーを攻めた。試しにストライクキングやバンディットのクランクベイトを使ってみたが、釣れても2Lbクラスなんだ。それでまたハンドメイド・クランクにチェンジしてみたら、またビッグフィッシュが食ってみた。「(パターンは)これだ!」と思ったね。

basswave:そのジャパニーズ・ハンドメイド・クランクベイトですが、もう名前を出してもいいのでは?
ボリバー:エドモンの爆(バク)だよ。だけど、問題はこのルアーを2個しか持っていなかったことだった。しかもひとつはホワイト/ブルーバック、もうひとつがレッド系なんだよ。まったく違う系統のカラーだから、ひとつでも無くしたり、壊れたら釣りにならないのでヒヤヒヤだった(笑)。

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日本でも入手困難なエドモンは、関東在住のアングラーが趣味で作っているバルサ製クランクベイト。月産数十個なため、ボリバーさえも入手に困っているという。関東の某ショップ3店舗で密かに販売中

 

basswave:笑ってる場合じゃないですよ。それでも本戦でエドモンを用いたんですよね?
ボリバー:自信が持てるパターンはエドモンのクランキングだった。「他のクランクベイトではウエイトが上がらないけど、エドモンなら」とね。チャンピオンシップは予選2日間、決勝2日間の全4日間だろ。「エドモンは決勝に取っておこう」などと余裕を言ってるヒマはない。まず予選を通過するのが先決。

basswave:しかし初日は113位と相当出遅れましたね(苦笑)。
ボリバー:場所はよかったが、パターンが噛み合なかった。よく考えたらカレントがキーだったんだ。それで2日めは(ダムの放水による)カレントを待ったんだ。それが午前12時から午後2時くらいに起こる。これが起こるとバイトがはじまって、エドモンの爆でバクバクだよ。2日めは3番めのウエイトを持ち帰って110人抜きで3位になって、予選を通過した。

basswave:パターンさえわかれば、こっちのものですね。
ボリバー:でもさ、起こっちゃいけない事件が起こっちゃったんだ。釣れていたホワイト/ブルーバックがスタックして、なんとかネットをフックに引っ掛けて引き抜いたんだけど、フックアイとリップが壊れてしまった。

gabe067-2.jpgbasswave:釣れていた唯一のカラー、ルアーを無くした、と……。
ボリバー:諦められないから、地元のウォルマートに行って木工用のパテを買ってきて、なんとか補修した(笑)。残っていたレッド系のほうもホワイト/ブルーバックっぽく塗り替えてみた。あとは、友達のブレント・エーラーもU.S. OPENの時にbasswaveスタッフからエドモンを2つもらっていたから、ひとつ貸してくれと頼んだ。すぐに送ってくれて、最終日には間にあった。でも彼はホワイト/ブルーバックを持っていなくて、イエロー系タイガーを送ってくれた。

basswave:決勝初日は2位につけましたね。この日もカレントが出る時間帯にエドモンで攻めたわけですか?
ボリバー:それに賭けるしかない。直したホワイト/ブルーバック、塗り替えたやつ、ブレントから借りたやつの3つで勝負した。でも直したやつはやっぱりベストな泳ぎじゃなかった。塗り替えたやつは釣れたけど、爆発力に欠けた。なんとかイエロー系タイガーで5Lbを釣ったんだ。

basswave:最終日はそのイエロー系タイガーを中心にローテーションすればいいわけですし、勝てるぞ、と。
ボリバー:僕も勝てると思った。かなりドキドキしたよ。決勝初日は持っている3つのエドモンのうち、どれが効果的か半信半疑でやっていた。でもこの日、タイガーが一番だとわかった。もう迷いはないよ。でも……恐ろしいことに気がついた。最終日は競技時間が短い。帰着は午後1時半なんだ。しかもマイエリアからマリーナまでは1時間かかる。ということは、自分のプライムタイムに30分しか釣りができない。結局、午前12時過ぎに出発したんだ。だから、あと1時間あれば間違いなく優勝していた。たった1oz差で負けるなんて……。

basswave:でも、FLW Outdoors TV Showのプロデューサーには喜ばれたと聞きますよ。
ボリバー:そりゃそうだろう。1oz差なんだし、緊迫した雰囲気を伝えられるから。それと競技中にTVクルーが同船したときまた事件が起こった。エドモンで釣っていたら小さいバスが釣れて、ボート際に来たから引っこ抜いたら、バスが外れて、ルアーのフックが指に刺さったんだ。バーブも全部入っちゃって、「痛ててぇーっ」とやってたら、その一部始終を撮られてた。プロデューサーは「いい画が撮れた」と大喜びでさ、試合後、「私たちが欲しい以上の仕事をしてくれた。ありがとう」なんて言われた。エドモンが指からぶら下がってる映像が全国ネットで放送されたから、ルアーはみんなにバレた(笑)。

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basswave:バレたとはいえ日本でも入手困難なレアアイテムですから、いくらアメリカ人が血眼になって探しても、そう簡単に入手できませんね。来季はWal-Mart FLW Tourに参戦するようですね。
ボリバー:いいタイミングで聞いてくれた。そのプロデューサーが「来年はFLWで待ってるよ」と言ったんだ。出るかどうするか、まだ決めかねていたんだ。だから「挑戦しろよ」という意味で言ってくれたのかと思ったら、「スポンサーを紹介するよ。キミのようなポテンシャルのある選手を探しているスポンサーがいるんだ」と。ホントか!?と思っていたら、4日くらいしてジョンソン・アンド・ジョンソンから電話がかかってきた。サポートしたいとね。

basswave:ジョンソン・アンド・ジョンソンとは、医薬会社のですか?
ボリバー:そうさ。たぶんだけど、頭痛薬タイレノールのトーナメントジャージを着ると思う。あとは、ジョンソン・アンド・ジョンソンのロゴを施したラップボートで参戦する。

basswave:それはスゴイ!BASS CITGO Eliteシリーズ出場選手がラップボート契約を取れなくて四苦八苦しているときに、その権利を獲得するとは。
ボリバー:そこがFLWのいいところだと思う。FLWはアングラーがプロとして生計を立てられるように、企業と選手を結びつけてくれる。選手を第一に考えてくれている。僕らが勝てば、TVや雑誌にスポンサーの名前やロゴが出る。FLWには感謝しているよ。今回の契約があったから、FLW TOURに出る決心がついた。あとは、西海岸出身の僕にとって、オフリミットがなく好きなだけ練習できるのもいい。地元のショップで情報を収集したりもできる。情報を聞き出すのもプロアングラーの技量だし、「僕はこのルアーで釣れているよ」とそのショップに自分のスポンサーのルアーを教えてあげられる。将来BASSにはカムバックしたいけど、いまはFLWを中心にやっていきたい。

gabe062-2.jpgbasswave:ところで、いろんなクランクベイトがある中、どうしてエドモンがよかったのでしょうか?
ボリバー:まずスイミングバランスがいい。スローからミディアムスピードで他にはない強烈なバイブレーションを生む。コロラドブレードのスピナーベイトのようにね。普通、クランクベイトはスローリトリーブをするとノタノタと動く。それがいい時もあるが、エドモンはスローでも水を引っ掻き回す。タイトに見えて、ワイドムーブなんだ。

basswave:他にもワイドムーブ(ウォブリングの強い)クランクベイトがありますが……。
ボリバー:トータルバランスなんだろうね。ウッドが持つ浮力、水押し、ボディーの太さやサイズ、アイの位置、リップの厚さ、深度。このルアーがどこのレイクでも活躍するとは思わない。ただし、水質が濁っていて水深1.5mのストラクチャーを攻めるには最高だった。チャンピオンシップでは水深60cmを攻略したが、スローリトリーブでその水深をキープした。でも他のクランクベイトをスローリトリーブしても、ビッグフィッシュを引き寄せるバイブレーションは起こせない。それはプラクティスや本戦の釣果が証明しているよ。完全にエドモンのパターンがハマったんだ。日本のアングラーにもぜひ試してほしい……けど、日本でも入手が難しいとは僕も知らなかったよ(笑)。

Posted by DODGE at 2006年01月10日 18:50 in Interviewave

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