2005年02月20日

The Interviewave ブレント・エーラー インタビュー 

The Interviewave

ブレント・エーラー インタビュー 
Brent Ehrler Interview

かつて、アメリカン・バスフィッシング・トーナメントの登竜門として、日本人アングラーが最初に扉を叩くのがBASSのオープン戦(旧インビテーショナル)だった。現在バスマスターツアーで活躍する日本人たちもオープン戦を足掛かりとして、ツアーへの切符を手中にしたのだ。しかし今やアメリカは2大団体時代。CITGOバスマスターツアーだけが唯一のアメリカン・サーキットではない。Wal-Mart FLW TOURも大手民放局FOX Sportsとタッグを結成。全米にトーナメントが放送され、一般視聴者からも大きな注目を浴びている。そんなFLW TOURへの登竜門として全米を5地区に分けて開催されているトレイルがエバースタート・シリーズである。各地区で全4戦が開催され、総合成績からトップ40がエバースタート・シリーズ・チャンピオンシップへクオリファイされる。全米から勝ち残った200名で競われた2004年度チャンピオンシップの頂点に輝き、現在FLW TOURで全米を転戦しているのが、ブレント・エーラーである。そんな旬なイケメン・アングラーが、国際フィッシングショーにやってきた。エバースタート・チャンピオンになって、彼の人生観は変わったのだろうか。

basswave:こんにちは。ブレントさんは、これが2度めの来日ですよね。
ブレント・エーラー(以下エーラー):そうだよ。っていうか、よく2度めと知ってたね。プロモーション(ラッキークラフトの招聘)で来日したのは初めてだけど、実は数年前に個人的に来たことがあるんだ。私の家族と彼女の家族といっしょにね。プロショップを数軒見て歩いたり、少しだけ釣りもした。5日間くらい滞在したのかな。スゴく楽しくて、絶対に戻ってきたいと思ってたんだ。I love Japan!

basswave:悪い国ではないと思いますが、アメリカに比べて物価が高いと思います。
エーラー:それは感じたよ。観光と無駄遣いはイコールだろ?  旅行は好きなんだ。そのためにも頑張ってトーナメントで稼がないとね。でも、僕が住んでいるカリフォルニアの物価も意外と高いんだよね〜。

basswave:ブレントさんは、昨年エバースタート・チャンピオンシップで優勝されましたので、かなりの賞金(2万5 000ドル)を獲得しました。
エーラー:そうだね(笑)。やっと優勝できたという感じだよ。それまでエバースタートでは2位が最高位だったんだ。エバースタートとはいえ、チャンピオンシップは全米から優れた選手が集まっている大会だし、勝てて本当に嬉しかったよ。そんな大会で優勝できるとは思わなかったから。タイトルとしては、2002年にエバースタート・ウェスタン戦で年間総合優勝を獲得したけどね。

basswave:2003年ですよね? 2002年はまだウェスタン戦が開幕していませんでしたから。
エーラー:そうだった(笑)。2002年はまだBASSのウェスタンオープン戦に出場していた。BASSが「西海岸は参戦者が少ない」ということで、2002年でオープンサーキットを打ち切ってしまった。それでFLWが手を挙げてくれて、2003年からエバースタートのウェスタン戦がはじまったんだ。ちょうど行き場をなくしかけてたから、私もこれに便乗した。そうしたら、年間優勝しちゃったんだよね。

basswave:エバースタートとはいえ、出場しているメンツは、BASSのウェスタンオープン戦とほぼ同じでしたから、ここで年間優勝するのは容易ではありません。
エーラー:たしかあの年は、得意なレイクが半分を占めていた。だからそれらのレイクでいい結果を残して、あとは踏ん張るというプランだった。そうしたら、全4戦中3戦を全部3位でフィニッシュできたんだ。

basswave:ということは、3戦めが終了した時点ですでに年間トップだったと。
エーラー:いや、2戦めが終わった時点でトップだったと思う。3戦めをトップで折り返して、最終戦がカリフォルニア・デルタだった。この大会は40位くらいで終わって(厳密には41位)、でも年間優勝を獲れた。その年もチャンピオンシップにクオリファイされたけど、31位だった。オールドヒッコリー・レイク(テネシー州)で開催されたんだけど、上位入賞はできなかったんだ。

basswave:2004年度は、エバースタート・ウェスタン戦で年間3位に入りました。
エーラー:昨年は、年間1位がマイク・フォークスタッドで、2位がアート・ベリーだった。2人とも素晴らしいアングラーなんだ。アートは私の友達で、現在、FLW TOURでは一緒にトーナメントを回っている。マイクは西海岸ではつねに優勝候補に挙げられる有名選手だし。そんな彼らに続いて3位に入れただけで光栄だったよ。

basswave:エバースタート・チャンピオンシップ2004が開催されたケンタッキー州レイク・カンバーランドは、東海岸のフィールドとしては非常に特殊なレイクだったと思います。地形的に複雑なロッキーレイクだったので、西海岸のフィールドに似ている印象があります。私は個人的に、西海岸の選手が優勝するのではと思っていました。
エーラー:そうだね、私を含めた西海岸の選手は、カンバーランドのようなレイクに普段から親しんでいる。剥きだしの岩盤があって、その岩盤が何10ftと垂直に水中に落ち込んでいて、シャローバンクが少なくて、クリア・ウォーターで、ドロップショットやジグのフォーリング、トップウォータープラグ……そうだ、あのときはラッキークラフトのサミーでよく釣れた。特にプラクティスでサミーは最強だった。西海岸でいえば、レイク・シャスタ、レイク・ミードやレイク・オロビルのようにクリア・ウォーターなレイクでは、いつもサミーを多用している。バスは岩盤に張りついてサスペンドしているし、スクールしているバスもねらえる。それで反応がなければ、ダウンサイズしたジグやドロップショットで丁寧に拾っていくんだ。だから、チャンピオンシップでは西海岸での日頃の釣りが通用したと思う。

basswave:チャンピオンになって、何か変わったことはありますか?
エーラー:FLW TOURにクオリファイされたくらいで、あとは特に思い当たらないな(笑)。エバースタートが中核レベルの大会とはいえ、優勝すると人が変わったように天狗になる選手がいるけど、私はそうでもないよ。ただ、FLW TOURでは「エバースタートから勝ち上がってきたんだ」という自負を持って試合に出ている。長年トップレベルで活躍している選手は自分たちが永久にトップでいられると思っているかもしれないけど、下のレベルから毎年優れた選手が上がってくるんだ。僕らの突き上げは、彼らにも伝わってると思う。


basswave:エバースタートから勝ち上がってきたことを誇りに思っているわけですね。
エーラー:勝ち上がるのは簡単じゃないよ。たとえそれが慣れ親しんだ西海岸のレイクからだとしてもね。地理的に、サウスイースタン戦やセントラル戦からFLW TOURに昇格した選手のほうが有利なのはわかってる。私は、今年はじめてレイク・オキチョビーで釣りをしたけど、「これは不利だ」と直感したよ。あんな釣り方は西海岸では見たことがない。


basswave:一体、どんな釣りを目の当たりにしたんですか?
エーラー:まずウイードマットが10cm以上あるんだ。1ozのシンカーではマットを突き抜けない場所も多い。ロッドティップを水中に刺して、水深を調べるだろ? オキチョビーでこれをやったら、「ロッドが抜けなくなるんじゃないのか!?」と思った(笑)。カリフォルニア・デルタでもマットが広範囲にある。でも、オキチョビーのマットは見渡す限り“マット”なんだよ。規模が違った。ショアラインから1マイルはマットで埋まっているんだからね。そこをボートで無理矢理入っていって、ボート上をグルッと1、2周する感じで釣る。で、船外機でまたガガガッと10mくらい進んで、また同じことを繰り返す。唖然としたね。トーナメントはまだ5戦残っているけど、10cm、20cmの水深が見えないような透明度の低いマッディ・レイク、巨大なスモールマウスが釣れるレイクに行くのかと思うと、西海岸の選手は確かに不利だと思う。

basswave:水質もそうですが、西海岸とではルアーのチョイスや戦術面でも多少異なると思います。
エーラー:バスフィッシングは奥が深いよ。トーナメントはさらに奥が深い。だからこそ、エバースタートやBASSのオープン戦を勝ち抜くことが重要なんだよ。ここで勝てないようでは、全米レベルのトレイルに出てビッグボーイズ(有名選手)と肩を並べるのは一生不可能かもしれない。

basswave:BASSのオープン戦とエバースタートの違いはなんでしょうか?
エーラー:基本的には同じだと思う。オープンはバスマスターツアーへ昇格するためのトレイルで、エバースタートはFLW TOURへ昇格するためのトレイル。ただ、フォーマットが違う。オープン戦は3日間で開催されている。最初の2日間が予選で、決勝ラウンドは1日だけ。決勝へはトップ50が進出する。エバースタートは4日間の日程で競技されて、最初の2日間が予選。残りの2日間が決勝。決勝へはトップ10が進む。FLW TOURへ進む練習として同じフォーマットだから慣れやすい。あと、エバースタートは全4戦だけど、オープンは全3戦。3戦は少ない気がする。

basswave:エバースタートは現在5地区で開催されていますが、ウェスタン戦ではなく、先ほどおっしゃっていたようにセントラル戦にエントリーしようと思ったことはありませんか?
エーラー:考えたことはあるけど、距離的、経済的に負担が大きい。私はフルタイムプロじゃないから、プラクティスも含めて2週間も休みを取るのは難しい。それに、ウェスタン戦であれば、勝ち進める自信があった。FLW TOURにはオキチョビーのように不利なレイクはあるけど、チャンピオンシップが開催されたレイクのように、自分の培ったテクニックを駆使できるレイクもある。だから、オキチョビーではいい成績を残せなかったけど、別のレイクで本領を発揮したい。


basswave:たとえば今シーズン、どのレイクで本領発揮できそうですか?
エーラー:ビーバー・レイク(アーカンソー州)かな。このレイクは地形を見て釣りができそうだし、西海岸のリザーバーにもっとも近いイメージのフィールドだと思う。これからアメリカのトーナメントにトライする日本人アングラーにもいえることだけど、早くトップレベルの大会に出たいのであれば、勝ち上がれそうなディビジョン(地区戦)を選ぶのは大切だよ。いつまでもオープンやエバースタートレベルで停滞していたくないだろうからね。でも、レイクに慣れるという点では、最初からセントラル戦やサウスイースタン戦にエントリーするのも悪くない。これはアングラーの考え方によって違うと思うけどね。

basswave:先ほど、サミーの話が出ましたが、ブレントさんはトップウォーターベイトをよく使うほうですか?
エーラー:モーニングバイトはサミーに限る。魚の反応が悪いときは、ポインターを使う。オキチョビーや次戦のレイク・トホでは、そんなに出番はないと思うけど、この時期、オープンウォーターの多いレイクなら、ベビーシャッドやステイシーをよく使うよ。

basswave:プリスポーン期にステイシーを使用するのは日本でも定番です。この時期のステイシーの場合、日本ではポンプリトリーブがポピュラーですが、アメリカではジャーキングのほうが多用されると聞きます。
エーラー:ジャーキング、いわゆるトゥイッチングというテクニックだね。ポインターのジャーキングとほとんど同じで、「ジャッ、ジャッ、ジャッ、ポーズ。ジャッ、ジャッ、ポーズ」と多少リズムを変えながら、ジャークするといい。

basswave:個人的な意見ですけど、ポインターはリップが短いのでジャージングは問題ありませんが、ステイシーはロングリップですのでジャージングだと抵抗が大きくて手が疲れます。ルアーが移動する距離も短いし、手返しが悪い気がしますが……。
エーラー:だから、ジャパニーズ・アングラーはポンピングをやるのか?

basswave:それだけが理由ではないと思いますが……。
エーラー:それは、まだロングリップのジャークベイトを使い切れてないからだよ。ステイシーをクランクベイトのようにステディーリトリーブするテクニックは知ってるか? ステディーといっても、クランクベイトと同じような「ストップ&ゴー」だけどね。とりあえず「巻いて止めて、巻いて止めて」というイメージで引いてくる。 それでストライクゾーンに入ったら、アクセントをつけるためにジャーキングするんだよ。で、ストライクゾーンを過ぎたら、また巻く。ただし、ひとつのルアーをトレースしただけで、そのエリアが終わったワケじゃない。ルアーをローテーションさせるのも重要だと思う。ポインターにチェンジしたり、ベビーシャッドにしたり。

basswave:そうですよね。「なんのためにたくさんルアー買って、ロッドも揃えたんだ」ってことですよね(苦笑)。
エーラー:ザッツ・イット!(そのとうり!)。でも、1カ所でネバるのもよくない。朝イチのようにバスがサーフェイスを意識している時間帯は、サミーで流してドンドン進んでいく。でも「この岬では以前も釣れてるし、プラクティスでもよかった」というスポットでは、サミー、ポインター、LV、ワームとネバって確実に獲りたい。ねぇ、アメリカではリップレスクランクを“トラップ”と呼ぶのを知ってるか?

basswave:知ってますが、知らない人のために説明してください。
エーラー:ビルルイス社のラトルトラップ(Rat-L-Trap)から来てるんだけど、アメリカではみんなリップレスクランクを“トラップ”と呼ぶんだよ。ほかのメーカーのルアーも“トラップ”と呼ぶくらいだ。

basswave:リップレスクランクの代名詞として、“トラップ”と言うワケですよね。ペンシルベイトが“スプーク”と呼ばれるように。
エーラー:ガハハハハ、そうなんだよ(爆笑)。オキチョビーの大会(FLW第1戦)のとき、プラクティスが終わってボートランプで片付けをしていたら、他の選手が寄ってきて、「俺は全然ダメだった。お前は釣れたか?」と聞くからLVでいいのを数尾釣ったと言ったんだ。そうしたら、「LVって何だ?」と聞いてきて、これだよと見せたら、「なんだ、トラップじゃねぇか。それなら俺も持ってるぜ」と言うんだよ。で、「トラップだけど、LVっていうんだよ……」と教えようとしたら、一人で納得して帰っていった。LVの認知度はまだ低いってことだね。

basswave:じゃぁ、ブレントさんがLVで優勝してポインターくらい有名なルアーにするしかないですね。
エーラー:頑張ってみるよ(笑)。


 ブレント・エーラーといえば、西海岸から全米レベルのサーキットに参戦するヤング・ジェネレーションのひとりである。奇しくも、昨シーズンのFLWチャンピオンシップで優勝したルーク・クラウセンも西海岸出身のアングラーで、エーラーと同じ世代の選手だ。彼らのように若い世代のアングラーが続々とトップレベルのトレイルに進出している。


 エーラーはいまやFLW TOURに参戦する全米レベルのアングラーとへ成長したが、西海岸で凌ぎを削っていた時代にはその強さに定評がありながら“優勝できないアングラー”というレッテルが貼られていた。2002年BASSウェスタン・オープン第2戦(レイク・ミード大会)では2位、2003年には3試合連続で3位になり、昨シーズンはWON Bass U.S. OPENで2位、エバースタート・ウェスタン第2戦でも2位に甘んじていたのだ。3戦連続3位は偉業であり、年間総合優勝も素晴らしい成績であったが、当人には優勝の二文字しか頭になかったはずだ。
 そんなストレスの貯まる数年間を過ごした集大成として、彼はエバースタート・チャンピオンシップというビッグイベントを制覇した。彼にとって、これほど嬉しいことはなかっただろう。「エバースタートとはいえ、チャンピオンシップは全米から優れた選手が集まっている大会だし、勝てて本当に嬉しかったよ」と語っていたが、いま振り返れば、エバースタートはFLW TOURに昇格するための通過点。“ビッグボーイズ”と肩を並べて闘うための箔を付けたに過ぎない。現在彼はFLW TOUR 2005で2戦を消化。第1戦を125位、第2戦を53位で通過し、暫定年間ランキングの80位につけている。東海岸を中心にトレイルされるFLW TOURの開催地は、エーラーにとって初体験のレイクばかりだろう。これからが試練のはじまりである。彼のフィッシングセンスは多くのアングラーが認めるところで、まだまだ大きな可能性を秘めている。ぜひとも同じ西海岸出身の同胞、ルーク・クラウセンに負けない成績を残してほしい。
 
 余談だが、このインタビューは国際フィッシングショーの初日(1月29日・土曜日)にラッキークラフトのブースで行なった。インタビューは10分程度で終わったのだが、その10分間に2度も女性が顔を赤らめながら彼に握手を求めてきた。インタビュー後、他のブースを見学していると、握手を交わしたひとりに出くわしたので聞いてみた。すると、彼女は「えっ、誰かわからないですけど〜、カッコよかったので握手しました」と言っていた……。ブレント・エーラーは、いわゆるイケメン・アングラーである。アメリカのバスフィッシング界の中でも、たぶんトップ5には入るイケメンだ。彼が活躍すれば、FOX Sportsも黙っちゃいないだろう。第2のバイロン・ヴェルヴィックを発掘すべく、彼らも動き出すかもしれない。今後のブレント・エーラーの活躍に要注目!

Posted by DODGE at 2005年02月20日 12:24 in Interviewave

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