バスフィッシングと出会って20年あまり。 すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、 これまでに出会ったさまざまなことを つれづれ〜っと書いていきます。 ご意見、ご感想、叱咤激励はこちらまでよろしくね。 TEXT by Jun Sugawara
BEAT 7 ルールの目的と効果(2003/4/29) 世の中には、さまざまなルールがある。 たとえば、バスを釣りにいくときにも、さまざまなルールを守らなくてはならない。 このルールを破るとどうなるか……アメリカの例を紹介しよう。 ずいぶん前のコトだが、私の知人がフロリダでバスフィッシングをしていて、 監視員と遭遇、結果的に罰金を払うことになってしまった。 彼はいったい、どんなルールに違反してしまったのだろうか……。 彼が釣りをしていたのは、レインボー・リバー。 ウォルト・ディズニー・ワールドのあるオーランドから北西へ、約50マイル。 レインボー・スプリングスという湧水を源とするこの川は、言葉を失うほど透明度が高い。 フロリダ州は日本のように標高差がないため、河川はゆったりとした流れが特徴だ。 蛇行する河川の周囲には鬱蒼としたサイプレスツリーなどの木々が茂り、 その流域には多くの野生動物たちが暮らしている。 釣り人にとっては珍しくないアリゲーター、アメリカの国鳥ハクトウワシ。 湖畔でアライグマを見かけることもある。 余談だが、アメリカで野生のアライグマを見かけた場合は充分気をつけていただきたい。 「キャァ〜ッ。ラスカルゥ〜ッ。可愛い〜ッ。」という気持ちはわかるのだが、実際はかなり獰猛。 エサを与えようとして、指を食いちぎられたという事故もあったというから……コワすぎる。 さて、このレインボーリバーにはバスがいる。 残念ながら平均サイズは小さめなのだが、ジャークベイトで数釣りができる楽しい場所だ。 トーナメント志向のアングラーは少ないが、泳いだり、浮き輪で川下りを楽しむことができるため、 ファミリーで遊ぶにはもってこいの場所なのだ。 しかし、このレインボー・リバーには厳しい規則が存在している。 ここではディスポーザブル(disposable)なもの、 すなわち使い捨ての容器などは一切持ち込むことができないのだ。 ペットボトルや紙コップ、ストローやビニール袋などはすべてアウト。 食べ物ならランチボックス、飲み物は水筒などに入れなくてはならないのである。 なにしろフロリダの夏は暑い。 知人はボート上で飲むための缶コーラを監視員に発見され、あえなく御用となったのだ。 もちろん、知人と同行者は、この規則を知らなかった。 しかし、ボートランプにはこの規則が示された看板がしっかりと立っており、 言い訳する間も与えてもらえなかったという。 なにしろ、監視員は腰にしっかりと拳銃をブラ下げている。 私がガキのころ、釣り禁止の公園で監視員に追いかけられたのとはワケが違うのだ。 ただし、知人は日本人ということで、ラッキーなことに罰金を1人分にマケてくれたらしい(笑)。 さてさて、この厳しい規則には理由がある。 このレインボー・リバーには、冬期になると海からマナティーが遡上してくるのだ。 ご存じだと思うが、マナティーというのは大型の哺乳類だ。 人魚伝説のモデルになった……などといわれているが、 人魚というより、ヒレの生えたカバみたいな動物である。 フィールドで出会うと牛のようなデカさにビビってしまうが、草食で性質もアライグマより温和だ。 このマナティーは絶滅が心配されており、フロリダでは厳重に保護されている。 そう、この規則はマナティーが誤ってビニール袋などを食べてしまうのを防ぐためのものなのだ。 バスアングラーにとっては少々面倒なルールではあるが、 マナティーを保護するというこのルールの目的と効果は、子供でも理解できるほどわかりやすい。 つまり、ルールというものは明解な目的があり、 さらにその効果が万人に認められて、はじめて成立するものなのだ。 琵琶湖における滋賀県の条例にならうように、 秋田県や長野県で外来魚のリリースを禁止するルールが定められた。 「在来種の保護」という目的は理解できる。 しかし、その効果に疑問を抱いているのは私だけだろうか。 平成11年、全国に先駆けて内水面漁場管理委員会指示でリリースを禁止した新潟県では、 はたしてこのルールがどれだけの効果を発揮したのか。 また、今後、琵琶湖をはじめとしたさまざまな場所で、このルールがどれだけの効果を発揮するのか。 ルールを決めた方々には、ぜひこの点をはっきりと示してほしい。 効果がないルールを守り続ける……これほど虚しいものはないのだから。