バスフィッシングと出会って20年あまり。
すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、
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TEXT by Jun Sugawara

BEAT 29  河口湖でソフトベイトが禁止に その1(2007/1/15)

気づいたらもう2007年……なのに、
多忙にかまけて昨年はすっかりこのコラムの更新をサボっていた。
ということで、久しぶりの更新である。

外来生物法の施行以降、
ブラックバスをめぐる情勢は、なんとなく落ち着きを見せていたように思う。
この法律がブラックバスに関する問題をすべて解決したとは思っていないが、
やはり「移殖禁止」という明確なルールは必要だったのではないだろうか。

さて、すでにTOP NEWSでもお伝えしているが、
昨年11月18日付のYahoo! JAPAN NEWS(毎日新聞)に、
山梨県河口湖の釣りのルールに関する記事が掲載された。

(以下、引用)
河口湖漁協:疑似餌「ワーム」使用禁止を決議 環境への悪影響を懸念/山梨

 河口湖漁協(富士河口湖町、山中和栄組合長)は17日夜、町内で臨時総会を開き、ブラックバスの釣りで多く使われる軟性プラスチック製の疑似餌「ワーム」が湖底に放置され湖の環境に悪影響を及ぼす可能性があるとして、使用を来年5月から禁止する方針を決めた。「釣り人が激減し、生活ができなくなる」と反対意見が相次いだが、委任状と会場での起立採決で賛成多数で決まった。
 県内水面漁場管理委員会で認められれば、ブラックバスの漁業権が認められている四つの湖(河口湖、山中湖、西湖、芦ノ湖)では芦ノ湖(神奈川県箱根町)に続いて2例目になる。
 この日は理事含め組合員41人が出席。執行部から「ワームを禁止しなければ、水見の環境の現状維持もできなくなる」と提案された。
 県花き農水産課によると、総会の結果は県に報告され、学識経験者や漁業者の代表などで作る内水面漁場管理委員会で審議、妥当だと判断されれば河口湖の漁業規則を変更することになる。漁業規則には禁止事項として盛り込まれるが罰則は定められない。
 河口湖漁協などによると、ワームが湖底の岩や水草に引っかかって糸が切れ、放置されて堆積(たいせき)したり、餌と間違えて魚が食べ消化できずに死んでしまうなど、環境によくないとして7月の理事会で使用禁止の方針を決めていた。【藤野基文】 11月18日朝刊 (毎日新聞)
(以上、引用終わり)

昨年12月、記事中にある山梨県内水面漁場管理委員会で審議された結果、
今年の5月からこの漁業規則が施行されることが決定したそうだ。
これまで、ソフトベイトの使用を禁止したフィールドとしては神奈川県の芦ノ湖が有名だが、
芦ノ湖はトラウトやワカサギなど、バス以外の釣り場としても人気が高い。

一方の河口湖は日本におけるバスフィッシングのメッカとして知られ、
数多くのトーナメントが開催されているフィールドだ。
河口湖でもニジマスやワカサギの放流を行なっているものの、
バスアングラーの比率は、芦ノ湖のそれよりはるかに高い。
芦ノ湖でさえソフトベイト禁止後の釣り人が減少したことから考えると、
ソフトベイト禁止が河口湖に与える影響は小さくないことだろう。

現在、私は釣り業界から生活の糧を得ている。
あくまで個人的な立場からいえば、
今回のソフトベイト禁止が業界の経済に影響を与える可能性も小さくない。
自分自身の生活に関わるわけだから、諸手を挙げて賛成とはいえない。
この点はソフトベイトを製造しているメーカー各社やディストリビューター、
そして販売をしているショップなども同じ思いだろう。
ただし、環境に負荷を与える以上、釣りにルールが必要であることも事実だ。
本来、ゲームフィッシングというのは一定のルールに基づいてこそ成立するものだ。
その意味で、ソフトベイト禁止というルールそのものを全面否定する気はない。
湖畔を見れば釣り人が捨てたであろうソフトベイトを容易に見つけられるし、
これらが自然環境に悪影響を与えていることも否定できない。

今回の件に関して私が唯一残念に感じているのは、ルール制定に至るまでのプロセスだ。
ご存知の方も多いと思うが、河口湖で釣りをする場合には遊漁料のほか、
富士河口湖町の条例に基づく遊漁税が課せられる。
町の条例によると、この遊漁税は河口湖の環境保全や環境の美化、
および駐車場や公衆便所などの施設の整備費用に充てられると記されている。
さらに富士河口湖町のウェブサイトには「遊漁税導入までの経過」と題した項目において、
下記のように記されているのだ。

(以下、引用)
 ブラックバス釣りの人気が高まり、釣り人の増加とともに河口湖周辺の違法駐車(路上・河川敷)、排出行為による汚染、釣り糸、ワーム(擬似餌)の放置による環境面への悪影響は観光事業衰退につながるものである。
 これらの問題解決のため年次計画を立て、駐車場・公衆便所増設、湖畔清掃等の環境整備をし推進するため「遊漁税」を新設することとした。
(以上、引用終わり)

同サイトによると、平成17年度の遊漁税額は2047万4800円。
導入までの経過には、
「ワーム(疑似餌)の放置による環境面への悪影響」を解決するためと記されている。
2047万4800円の予算をもってしても、改善はできなかったということなのか。
今回のルール改正は富士河口湖町ではなく漁協が主導だったとはいえ、
遊漁税を払っている私たち一般のアングラーに対する説明不足の感は否めない。
「今まで金をとってきたのに、何やってたんだよ」と感じるアングラーも少なくないことだろう。
現実は遊漁税の徴収額では追いつかなかったのかもしれないし、
そもそも私たちアングラーのマナー違反が常軌を逸していたのかもしれない。
ただ、最終的に今回のような結果になっていたとしても、
遊漁料を払っているアングラーたちの意見を事前に聞いてほしかったと思うのだ。

……ということで、続きは次回。
次回はトーナメントアングラーであり、
実家が芦ノ湖湖畔でレンタルボート店を営んでいる山木一人さんの話も紹介する予定。

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山梨県河口湖は、日本のバスフィッシングにおけるキャピタルともいえるフィールドだ。トーナメントの開催も多く、ワームは必携ともいえる場所だった。それだけに、ワーム禁止というルールはさまざまな影響を与えることだろう。