2019年10月28日

外来種大国となった日本、ヒアリ「定着」の恐れ

 強い毒性を持つ南米原産の特定外来生物のヒアリが、東京湾・青海ふ頭で発見された。50匹以上の女王アリが確認され、「定着」の恐れがあるとして、政府は徹底した調査と確実な防除を強化する緊急の対応策をまとめた。海外からヒトやモノが運ばれるのが当たり前になった今、「外来種大国・日本」として、専門家だけでなく、国民も正確な知識や対応策を得る必要性が高まっている。

 「これまでと次元の異なる事態だ」。政府が10月21日に開いた関係閣僚会議で、菅官房長官が危機感をあらわにした。

 事の発端は、東京湾で大量に見つかった羽を持つ女王アリだ。環境省が9月に実施した全国港湾調査で、港で積み荷となるコンテナが行き交う「コンテナヤード」で女王アリ1匹などを確認。10月の調査で、巣と、働きアリ約750匹、女王アリ50匹以上を見つけたという。

 2017年6月に初めて国内でヒアリの確認が発表されて以来、10月10日までに45の事例が報告されている。これまでは地面の巣から見つかった女王アリは多くとも2匹にとどまっていたが、今回、50匹以上となったことで、「定着」の危険性が強く懸念されることとなった。

 女王アリの羽は交尾後に落ちる。今回は羽を持った女王アリが大量に見つかり、飛び立って別の地域に広がった可能性が高い。ある巣で育った女王アリが移動して巣を作り、その巣で新たな女王アリが生まれて巣を作ることで、アリは世代を重ねる。世代の更新をもって、「定着」したとみなされる。

 ヒアリは2.5〜8mmと小さな赤茶色の体を持つのが特徴だ。攻撃性が高く、刺されると熱いような激しい痛みが出てくる。ヒアリの毒にアレルギー体質を持った人の場合、じんましんが出たり、体調不良が起きたりする。アレルギーがひどい場合には、ハチに刺されたときと同様に「アナフィラキシーショック」で生命を落とす危険がある。

 原産地の南米から世界には既に広がっている。船や飛行機に積まれたコンテナや貨物に紛れて、米国や中国、台湾、オーストラリアなどに拡散。今まで定着を防いだのは、素早い駆除が奏功したニュージーランドしかないという。

 日本はどうか。国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長は、「ヒアリは日本の都市で『定着』が進む恐れがある」と指摘する。

 ヒアリは畑や公園、芝生など人の生活圏に住むことを好む。都会は温暖な時期が長く、天敵や競争相手が少ない。ごみが餌になる。今回もコンクリートの隙間などから見つかっており、ヒアリには住みやすい環境だといえそうだ。

 ヒアリの被害は、人の生命や身体にとどまらない。閣僚会議に提出された資料によると、米国では家や庭に入り込んで使えなくなったり、農作物を食べたりと被害が広がっている。被害額と対策費は年1兆円以上にのぼり、年間8万人が病院で治療を受けている。配電盤に巣を作って、電気設備や信号機が使えなくなる被害も出ているといい、電線がむき出しになっている日本でも定着すればインフラに危険が及びかねない。

 殺虫剤大手のアース製薬によると、「現在のところ、問い合わせが増えたり、殺虫剤や防虫剤の売れ行きが伸びたりということはない」という。17年に国内で初めてヒアリが見つかった際は、夏前でこれから虫が増えるシーズンだったこともあり、売れ行きが伸びたが、今回は虫がおとなしくなる10月ということもあり、大きな反響はないという。

 定着や被害の拡大を防ぐには、どうしたらよいか。島国の日本は海岸線に港が点在し、侵入経路が多い。近年はインバウンド(訪日外国人)が増え、輸入品を抑制することも現実的ではない。セアカゴケグモやアルゼンチンアリなど、アリや蚊、ハチ、クモといった外来種の発見例も増えている。五箇氏は、「水際対策はもちろん大事だが、今や日本は『外来種大国』となった。外来種が身近にやってくるリスクを織り込んで、国民レベルで注意することだ」と話す。

 ヒアリらしい虫を見つけた場合は、「環境省ヒアリ相談ダイアル」(0570-046-110)や地方自治体の環境担当部局まで。数が少ない場合は殺虫剤で駆除し、巣や集団を見つけた場合は、刺激せずに相談ダイアルまで連絡する。

 ヒアリは小型で専門家以外には判別が難しい。環境省は「むやみに全てのアリを駆除するとかえってヒアリが定着しやすい環境をつくってしまうので、困ったときは相談を」と呼びかけている。

鷲尾 龍一

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Posted by jun at 2019年10月28日 13:24 in 外来生物問題

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