長野県内の河川で6月から7月にかけてアユ釣りが相次いで解禁されます。同県上田市から東御市(とうみし)までの千曲川、依田川などは6月16日に解禁。県内外からの釣り客でにぎわい始めました。上田・小県(ちいさがた)地方の上小(じょうしょう)漁協が4月以降に放流した稚アユは順調に育っています。一方で、長野県内では最近、放流したアユの多くが姿を消す問題が表面化、今シーズンの動向によっては原因究明を求める声が強まりそうです。
●「珍しい」釣果ゼロ
16日解禁となった上田市の千曲川支流・依田川では、釣り客がさっそく釣りざおを伸ばし、友釣りの妙味を味わっていました。
上小漁協によると、4月から6月にかけて県水産試験場などで飼育された稚アユ3350キログラムを放流。これまでの調査で依田川で小さいもので体長12〜13センチ、大きいのは18.5センチのアユを確認したとしています。
「きれいな水の増水があると古いコケが流れて新しいコケが育ち、コケを餌とするアユが順調に育つ。逆に泥流などの増水があるとまずいですね」と同漁協。放流したアユの多くが姿を消してしまう問題では、「カワウなどの大きな鳥がアユを食べてしまうのか、ほかに原因があるのかはっきりしていない」と話しています。
放流アユの行方不明問題では、県内の漁協が危機感を強めており、漁協によっては「放流しても解禁日に数匹しか釣れないこともあり、釣り客の減少も招いている」といった声が出ています。
この日も依田川では「半日挑戦したが釣果はゼロ」という釣り客も目立ちました。肌寒い天候だったこともあり「気温が低かったからだろう」という声も。
ただ、埼玉県から30年も依田川の解禁に合わせて通っているという男性(64)は「午前10時から川に入ったが釣果ゼロで、びっくりしている。こんなことは珍しい。以前より川が汚れている気もする」と感想。地元の釣り客らも「川の汚れは確かに感じる。本流の千曲川はもっと汚れている」と話しました。
●数十匹が「散らばらない」
また「アユは放流すると一斉に散らばって自分のテリトリーを主張し、外から入り込むアユを追い出そうとする。それがアユの『友釣り』の面白さにつながるのだが、最近のアユは放流しても数十匹が固まっていて散らばらない。アユの性格が変わったのか、病気なのかとても気になる」と話す人も。「川の汚れや大型の鳥の餌食になったり、さまざまな原因が重なっているのかもしれない。もうアユ釣りは駄目になるかも」とあきらめ顔の釣り客もいました。
依田川沿いでウグイを捕らえて塩焼きなどで提供する「つけば」の店を開いて40年になる「金井屋」の店主・金井洋一さん(75)は、「以前は上小地方で20店以上のつけばの店があったが、今は5店。魚がいなくなったのでやめる店が平成に入って増えた」と話しています。
魚の放流量の調整や病気の予防策を検討する長野県の内水面漁場管理委員会でも昨年、漁協などの委員から、「魚の減少で漁協の組合員も減り、赤字になるときもある」、「河川環境の悪化だとすれば原因は何か」と言った意見や質問が相次ぎ、問題が表面化しました。
関係者の間では、「カワウなどの大型の鳥がアユを大量に食べてしまうからではないか」、「外来のコクチバスの食害ではないか」、「農薬などの流入はないのか」といった懸念の声が出ているものの、実情調査が行われていないため原因不明の状態が続いています。
※【つけば】…ウグイの産卵場所を人工的に作って産卵するウグイを捕らえる漁で、千曲川沿いの特徴的な漁法。産卵場所を「たねつけば」と称したことから地元では漁の方法や料理を提供する店を「つけば」「つけば小屋」などと呼んでいる。
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■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説